-A-

ある日、唐突に現れたモノでも。

時とともに馴染むモノがある。

この世界においてAというものは最初を意味するらしいが、

ワタシたちにはそもそも名前というモノがなかったので、

人に似せた時点で識別ができるようにしなければいけないらしかった。

ということでエーさんと呼ばれていたワタシ、

【人類側黒虹体0号】という名称から、

ワタシには正式にARIS-アリスという名前が付いた。

rainbowから変異した最初の、Aタイプということらしい。

そんな訳で、前回の開戦通知から二年後の今、

ワタシはワタシによって、変異の起きた純粋な人間たちと、

連絡を取りつつ穏やかな日々を過ごしている。

彼ら、彼女たちの記憶はほとんど元に戻ったと言ってもいいけれど、

この世界における人間というモノを、

誤った見方で侵食してしまおうナドと、

考えていた責任は取らねばならないとワタシは思っている。

今日はいつもの健康診断の日だ。

元よりワタシを掬い上げた研究者は、

何を思ってかワタシを女性扱いするので仕方なくというか、

認識された段階で女性としての形成をしてしまっているので、

少し、というか中々に恥ずかしいのだが、

彼らはよくやってくれている。

人間という小さなカタチになってしまった以上、

出来うる限りの協力はせねば、

穏やかな日々などやってこないのだから。

おっ……あそこにいるのは、

研究者君じゃないか、

まだ健康診断まで時間があるから、

ちょっとワッフルコーンの三段アイスでも食べに行かないかと、

颯爽と誘ってみるとしよう。


暑くジメジメしている日々でも、

何故だか心はウキウキとしている。

これは雨期であることも、もしや関係しているのかな。


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