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もしも一億総テレワーク時代になったら

テレワーク(telework)あるいはテレコミューティング(telecommuting)とは、勤労形態の一種で、情報通信技術(Information and Communication Technology)を活用し時間や場所の制約を受けずに、柔軟に働く形態をいう。「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語。また、テレワークで働く人をテレワーカーと呼ぶ。
                      ーウィキペディアより引用

 ここ数年、テレワークをする人の数が増加してきました。さらに、ここ1か月で、新型コロナウイルスの影響から、在宅勤務の人がますます増えました。もちろん、この感染症の騒動が終息すれば、今まで通りオフィスに出勤し、朝から晩まで働く人も多いと思います。しかし、その一方で、テレワークのメリットを働き手だけでなく雇用者も気づき、テレワーキングが働き方のひとつの選択肢として当たり前になる可能性も十分あります。IT技術によるインフラ整備の拡充に押し支えられ、テレワーキングがますます一般的になり、オフィスに物理的に出社するという働き方が時代遅れになる日もやってくるかもしれません。

 そこで、「もし今後、一億総テレワーク時代になったら」という仮定の下、その時に起きるであろう社会的変革について自分なりに考えてみたいと思います。あくまでも思いつきなので論理破綻してたらごめんなさい。

インフラと不動産

 一億総テレワーク時代が訪れると、通勤という概念が薄れると同時に、企業の都市部への一極集中が薄まります。働き手も、ネットインフラさえ整備されている場所であればどこにいても同じなので、わざわざ地価の高い都市部に住む必要もなくなります。そうなると当然、交通インフラが再整備され、それに伴って不動産価格のリシャッフルが起きるでしょう。

 つまり、「職場に出勤する」という概念がなくなると、「交通の利便性」の価値も薄まり、これまで高騰していた都市部の不動産価格も軒並み下落し、逆に自然環境に恵まれていたり、災害リスクの低かったりする土地の価格が相対的に上がり、全国の不動産価格が均等化していくと思います。

 人が都市部に集中するのではなく、全国に分散することで、混雑が緩和され交通の流れもスムーズになるでしょう。さらには、テレワークと同時にテレエデュケーションも普及すれば、都市部と地方での教育格差も是正され、子供の教育環境も改善されるかもしれません。


オン・オフの線引き

テレワークが可能になると、9:00~17:00という一般的な労働時間帯に縛られる必要がなくなります。どの時間帯に働いても良いわけです。通勤時間も無くなるので、例えば、7:00~15:00でも良いし、13:00~21:00でも良いのです。なんなら、22:00~6:00でも良いのです。なんなら「労働時間」という概念も不必要です。与えられた仕事さえ終わればあとは自由です。さらなる仕事を引き受けるのも、スキルアップに励むのも、趣味に生きるのも良いでしょう。つまり、タイムマネージメント次第で、ワークライフバランスが個人に最適化と思います。

しかし一方で、仕事とそれ以外の時間、つまりオンオフの切り替えが難しくなるでしょう。どこまでが仕事か、どこからが自分の時間かの線引きが難しくなります。正確に言えば、オンとオフがシームレスにつながってしまうのです。例えば、編集の仕事をしている人が、noteで情報を収集することはどうでしょう?個人的に興味をそそる記事を探すことが最終的に仕事につながるかもしれません。それが少しずつ仕事につなげるために情報を収集するようになるかもしれません。はたしてその時間はオンでしょうかオフでしょうか?

また、逆にネットサーフィンをしているだけなのに「仕事のため」という言い訳をする人も出て来ると思います。同僚とオンラインチャットで雑談をしているだけで「会議」と言い張ることもあるかもしれません。これを労働として自己申告してしまえば、給与が発生してしまうケースもあるかもしれません。


管理者の管理

一億総テレワーク時代になるということは、企業側の管理職に就いている人たちも在宅勤務をすることもなります。では、管理職の管理は誰がするのでしょうか?おそらくお互いに監視しあう仕組みか各自のPCに接続されたマザーコンピューターによって監視されてしまうのではないでしょうか?在宅勤務という比較的自由なイメージがありますが、全員そうなってしまったら、場合によってはお互いがお互いを縛る息苦しいものにもなりかねません。


スキル=資産

通勤時間が実質上無くなり、各自の自由な時間に働けるとなると、本職以外のことに割ける時間も増えます。昨今、副業をする人も増えてきましたが、その流れがもっと加速し、副業するのが当たり前、なんなら本職・副業の線引きもなく、複数の仕事を序列なく並列的に兼業する人が大多数になるかもしれません。となると、より多くのスキルや知識を有していればいるほど、より多様な分野で活躍できることになります。

もちろん、一つの専門分野において突出したスキルがあればそれを生かして、その分野での高い地位や富を得ることもできるでしょう。しかし、ある専門分野の高度なスキルがなくても、幅広いスキルを身に付けていれば、それらを最大限に発揮することが可能になるかもしれません。

今までは、ある職業に本職として就いていれば、それ以外にスキルがあっても趣味の範囲でしか生かせなかったものが、それを別の仕事で生かすことが可能になるかもしれません。そういったメリットに気づいた人は、自分を生かす地平線が広がる感覚を味わうことになるでしょう。例えば、「イラストレーター兼税理士」とか「ミュージシャン兼建築家」とかも可能かもしれません。

一昔前であれば、新卒の23歳の若者が定年の65歳まで働くとしたら、約42年分の労働時間を潜在的に保有している人材として企業から評価され、労働者もその潜在労働時間を自己資産として見なすことができましたが、労働時間よりも、幅広いスキルを保有する方がそれらを自己資産として見なすことが可能になります。正確には、潜在労働時間を最大限に生かすためのマルチスキルにより価値が置かれるということだと思います。つまり、これまで以上に「スキル=資産」がより明確になるのではないでしょうか?



頭脳流出と二極化

仕事時間に縛られなくなると、「仕事の量」より「仕事の質」が問われることになります。そうなると、たくさん働ける人よりも良い仕事ができる人が企業側に好まれる傾向が今以上に強くなり、高スペックな人材は今まで以上に重宝され、高い成果報酬が与えられるでしょう。つまり、年功序列システムはもはや時代遅れのものになり、成果報酬システムが当たり前のものになります。もちろん、経験がものをいうフィールドでは、経験に裏打ちされた成果が評価されるので、必ずしもベテラン不遇の時代になるわけではありませんが。

「仕事の質」が求められるようになれば、当然、高い報酬を与えられるだけの資本力のある企業に高スペックな人材が集まり、そして業績も上げることになるでしょう。スキルの高い人にとっても、より高い報酬をもらえる雇い主を探すのは当然です。いわゆる「頭脳流出(Brain Drain)」が起きます。一方で、成果報酬システムを敷くも、それほど高い能力給を与えられない企業は、スキルの低い人材しか残らない、または集められないことになります。

もちろん、こういった傾向は現在でも当てはまりますが、一億総テレワーク時代になったら、上述したように、「仕事の質>仕事の量」がはっきりすればするほど、このような企業の二極化がよりシャープになり、今以上に格差が広がると思います。


恩恵を受ける産業と斜陽する産業

一億総テレワーク時代になれば、自宅兼仕事場で仕事をする人や近所のカフェや図書館で仕事をする人が増えるでしょう。そうなると、多くの人は食事を自宅で取る(自炊or出前)か近所の店で取ることになると思います。結果として、今までいわゆるオフィス街にあった外食産業はお客さんが来なくなり、大きなダメージを受け、もちろんなかには生き残る店もあるでしょうが、その多くが淘汰されてしまうかもしれません。

また、通勤という概念がなくなってくると、都市部の交通インフラ関連は混雑緩和と引き換えに収益が減るでしょう。特に電車、バス、タクシーを利用するのは、買い物や個人的な用事(遊びに行く・通院・帰省など)くらいで日常的に利用するものではなくなるかもしれません。また、乗用車に関しても、公共交通インフラの不十分な地方は別として、特に都市部ではレンタカーやカーシェアリングが主流になるかもしれません。

一方、家の中にこもりがちなテレワーカーのストレス発散の手段となりそうな産業は恩恵を受けると思います。例えば、スポーツジムカラオケ店、また総合アミューズメント施設映画館などは、テレワーカーのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上には不可欠でしょう。また、外出が減った分、自宅で楽しめる娯楽にシフトする人も増えるでしょう。そのため、音楽や映画やゲームのサブスクリクション・サービスは今まで以上に盛り上がり、ついでにオーディオ機器もより良いものにする人も増えるかもしれません。

また、自宅兼仕事場にこもって仕事をしていると食事のために外に出るのが億劫になることがあります。また、労働時間帯にも個人差が生まれるので、外食をしようにも、その時間に店が開いていないというケースもあるでしょう。となると、Uber EATのような出前サービス冷凍食品・レトルト食品などを利用する人が増えてくると思います。さらに、カトラリーや調理器などの自炊グッズも購入する人が増えるでしょう。

オフィスラブや合コンが減る

物理的な出社がなくなると、会社への帰属意識が薄まります。多くの人が「会社に雇われている」という感覚から「会社と取引している」という意識にシフトすると、社員同士の横のつながりも希薄になっていき、飲み会に誘い誘われという頻度も減ると思います。それどころか、同僚と顔を直接合わせる機会は年に数回、顔を見るのはほぼネットを介してのオンライン会議や業務上でのチャットくらいしかないのも珍しくはないでしょう。当然、社員同士がプライベート上で親密になるまで親交が深くなることもなくなり、男女の間であればオフィスラブのような出会いのケースはなくなり、同僚同士で合コンに誘ったり誘われたりするケースも激減するかもしれません。


というわけで、もし一億総テレワーク時代が訪れたらどんな社会的変化が起きるのかを勢いに任せて自分なりに考えてみました。論文ではなくエッセイなので、エビデンスがあるわけでも実証例があるわけでもありません。本当に思いくまま書いただけです。もちろん、テレワークに完全シフトするのは難しい業種もあるので、実際には一億総テレワークということは実現しないとは思いますが、もし実現したとしたら、今度はその反動で物理的出社に価値を見出す人が増えるのではないでしょうか?





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