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『グロースハッカー佚』(第4話)【サイトの改修】

現在Webメディア『マーキャリメディア』内にて執筆掲載している大好評の連載小説『グロースハッカー佚』をnoteにて第三話に続いて第四話も配信致します。

BtoBマーケティング会社に中途入社した八月一日 佚(ほずみ てつ)。前職ではプロモーターとして勤務していた小さな音楽レーベルを1人でメジャーレーベルにまで成長させたキャリアを持つ26歳彼女の誰も思いつかないような独創的な発想は果たしてBtoBマーケティング会社でも通用するのか。会社のブレーンとして様々な企業課題に立ち向かう彼女と会社の成長を追ったオリジナルのストーリー小説です。

サイトの改修

柿島温子「八月一日(ほずみ)さん、はじめまして、柿島です。今サイトの改修プランを私中心で進めてるので先ずはサービス自体の説明をしますね」

佚「宜しくお願いします」

柿島「私たちは今アプリ開発チームと連動して大規模なプラットフォームサービスのリリース準備を進めています。一言でいうとスタートアップ企業にオンラインでマーケティングチームを提供するサービスです。まずユーザーは我々が今開発しているマーケティングスキル診断アプリを使い、得意な分野やスキルレベルを洗い出します。その結果を元に私たちがクライアント企業に合わせて、ユーザーを組み合わせてチームを作りその企業に提供します。彼らは決まった時間にチャットやWeb会議などで企業の新規事業立ち上げに努めます。私たち仲介を挟んだ状態で企業と月契約を結ぶので月給のような形で彼らには報酬が支払われます。つまり企業側は、実際に人を複数雇ってチームを作るよりも効率的に、そして低コストでスキルのある人を集めて運用を行えるというサービスになります」

佚「ありがとうございます。ユーザーに対しては副業支援ということでしょうか?」

柿島「そうですね。本業をやりつつ、週数回、業後の数時間、リモートでもう一つの会社に勤めるようなイメージですね。例えば本業が9時から19時までだとして毎週火曜と木曜日だけ夜21時から一時間だけ、別会社のマーケティングチームのメンバーとして参加して副業するみたいな感じです」

佚「毎週決まった時間にチーム一同がオンラインで集まるのは面白いですね」

柿島「副業って空いた時間にするのが多いけど、私たちのサービスはリアルタイムに案を出し合ってチームで課題に取り組むのがコンセプトだから企業側が最初に指定した時間に参加できるかどうかもマッチング要素に含んでいます」

佚「ユーザーを組み合わせてチームを作りって仰ってましたが、企業側が選んでチームを作ったりは出来ないのですか?」

柿島「今のところは考えてません。利用するスタートアップ企業の多くは、マーケティングの必要性を感じてはいるものの、どんな人材が自社のサービスにマッチしているか判断できないと思います。なので私たちが培ってきた経験を元に選んでチームを作った状態で提案します」

佚「それはスタートアップ企業限定のサービスですか?」

柿島「そうです。だからチーム提供なんです。なんでか分かりますか?」

佚「マーケターとしての豊富な経験がある優秀な人材であっても、マーケティング基盤のないスタートアップ企業に一人で入ったところで、会社の理解が得られずリソース不足などの問題を抱えることになり本来のマーケティングスキルを活かすことは出来ません。コンサルタントのような立場であれば、また少し変わりますが、スタートアップ企業となるとまだ市場も立ち上がっていなかったり、会社としての知名度も無い状態がほとんどなので通常のマーケティングスキルでは中々通用しません。だから当然マーケターがノウハウ共有した程度では上手くいく可能性は低いので組織として作る必要がある....からですか?」

柿島「すごいわね、よくわかってる!その通りです。スタートアップ企業に限らないけど、中小企業でありがちな1人経験豊富なマーケターを入れたのに上手くいかないなんてケースの殆どは、マネージメント層がマーケティングをそもそも知らなかったり感心がなかったり、だからその1人に全て責任を押し付けたりしている。広告施策やサイト管理、SEO対策など到底1人で回せるはずもなく結果的に崩壊する」

佚「プレッシャーを一人で抱えることになりますね」

柿島「そう、だからマーケティングチームとして組織を作る必要があるんです」

佚「でも、オンライン上でチームを持った時に、企業としての知識的な成長はどこにありますか?」

柿島「ん...そうですね、オンライン上でチームメンバーとやり取りする中でノウハウを学べるとかですかね」

佚「離れたところに仮想の部署を持つイメージですよね。 実際に雇う場合、人員は会社にとって資産になります。ですが仮想の場合は彼らの成長がイコール会社の成長とはなりません。複数の業務委託メンバーでチームを作って戦略を練るようなもの。彼らが出した戦略を誰が実行できるでしょうか。そもそもその企業に何もノウハウが無ければ実行も彼らに任せることになります。その彼らは仮想のチームで時間も限られています」

柿島「....」

佚「すみません、勝手に意見を言ってしまって。ただ、スタートアップ企業に特に重要なのは実行力です。会社として組織を作り上げていかなければなりません。
だから、そもそものコンセプトに共感されにくいかなと思います。このサービスで行くのであれば改善が必要かなと」

柿島「そうね、わかった。(上司の)横さんとのミーティングの場を別途設けます。そこで再度意見交換しましょう」

佚「ありがとうございます」

柿島「取り合えずサービスサイトについて続けますね」

-----続く

『グロースハッカー佚』はマーキャリメディアにて絶賛連載中です。最新号も無料で読めます。もし気に入っていただけましたら是非チェックしてみてください。宜しければnoteのフォローもよろしくお願いします。

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