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千里眼の男

 以前、大学時代の恩師と呑み屋で久しぶりに再会した時のこと。「最近なにか変ったことあったか?」と尋ねられた。その時、私の頭を悩ませていた同僚2人がつい先日退職したことを話した。お酒に酔っていたこともあり、「ストレス源になっていた同僚が最近退職しました」と私は少し乱暴な表現で告げた。

 恩師は間髪入れずに「それはお前が悪いな……」と断言した。

 正直「?」と思った。まだ事の仔細については何も話していないのである。ムッとなってそれ以上、この話題を続けるのを止めた。私は「あなたは千里眼でも使えるのか?」と内心腹を立てていた。

 千里眼――それは遥か遠くの物事さえも見通せる神通力である。

 そんな『翔べ!必殺うらごろし』の先生か、京極夏彦氏の小説に登場する榎津礼次郎じゃあるまいし……。しかし改めて振り返ると、これは我ながら随分と餓鬼っぽい行動と感情だったと思う。何故なら「同僚たちから見た場合、私がストレス源だったかもしれない」と最近になって思ったからだ。

 恩師は同僚を“ストレス源”だと断言する私に、驕りを見たのではないのだろうか。こちらの心根を見透かしていたのだろう。最初は揶揄で用いたが、これこそ千里眼ではないのか……。

※ 余談だが道教の女神・媽祖(まそ)が使役する鬼に千里眼と呼ばれるモノがいる。その眼は遠くを見ることが出来、見た物事を媽祖に報告するのだという。

 また千里眼と一対となって媽祖に仕える鬼に、順風耳(じゅんぷうじ)がいる。簡単に言ってしまえば千里眼の耳バージョンだ。

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有り難うございます
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休日ライター(主に特撮、映画)。ダジャレが好きです。人生哲学は「哲学より雑学」。 映画レビューサイト・Cinemarche、情報サイト・マグミクスなどに寄稿しています。
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