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挫折は人生のスパイスだ

【神撃沈】

長女の帰りが遅かった。いつも帰ってくる時間になっても帰ってこずどうしたのかなと思っていた。先日大学の面接があり、いけると思ったが結果落ちてしまった長女。

いつも自信満々の彼女が泣きはらした目で

落ちたぁー

と言い帰ってきた。私は何も言えずただ抱きしめた。抱きしめた腕がキツかったようで

お母さん、苦しいー!

と言われハッとした。長女より前に彼女の不合格を知った私は自分ごとのようにオロオロしていた。どう接していいのかわからなかった。そんな思いがキツく抱きしめていたんだと思う。

めちゃくちゃ頑張っていた長女。コツコツ頑張る姿はさすがだと思ったし尊敬した。そんな彼女がまさか落ちるとは思わなかった。

受験当日の面接。事前に考えていた事と聞かれた事が外れたこととそもそもアタマの中を整理して言語化することは苦手であることが今回の結果の要因だったのではないかと私は思っている。

いつもはスーパーポジティブで神レベルの精神力と家族の誰もが思っていた長女が目を真っ赤にして泣いている姿をみるといたたまれなかった。そして私からは何も声をかけず受験のことについては触れなかった。

長女は次の日から一気に切り替えたように思った。気晴らしいこー!と買い物に行ったり、またいつものように机に向かい勉強したりしていた。流石の切り替えとポジティブな長女だ。そう思っていた。

そんな彼女が昨夜遅く帰ってきた。目を見ると真っ赤になり腫れていた。また泣きはらしていたのだろう。予備校に行き勉強していたようだが、何だか一気に気が抜けたらしい。

「もー私、勉強あきた!もー私大学行きたない!もー私大学いかんとコンビニで働く!今までやってきた時間全部無駄やん。どんだけ時間かけてきてん。だいたいな、私の事何で落とすん?
面接っていうけど、その人の事見てへんやろ!だって聞いてきたのって時事問題だけやで。私について質問しろよ!時事問題聞いてどんな人となりがわかるっちゅうねん!何でそんな事聞くねん。私落とすなんて後で後悔するで!」

最後はいつもの強気モードでそう言った。

「ええんちゃう?勉強めっちゃしとったもんな、お母さんと一緒にゾンビごっこしよ!死体みたいにふて寝しよー!それか沖縄でも行く?気分転換しよ!コンビニで働くんもオモロイやん、それもええと思うで!そー言えば○○ちゃんコンビニの正社員やで。給料も多いし色んな人来て面白い言うとったで。なんでもええやんどんな仕事もあなたが行く場所は楽しい場所になるで。いいようにしたらええ、まぁ、ここは気晴らししよー!」

私があまりにも脳天気に言うと、逆に危機感を覚えたらしい。

「沖縄まずいやろ。学校あるしなぁ、勉強せなあかん。」

「ええやん、勉強したやん、ええんちゃーう?一緒に旅行でもしよー」

【スタディノート】

そんなやりとりをしていると彼女が頼んだものが宅配便で届いた。何を頼んだかと思ったらスタディノート。どうやらこれから勉強しようと思い、計画立てるために注文したらしい。スタディノートという名前には似合わず、ピンクと紫、水色のグラデーションがかかったユニコーン色。長女好みの可愛い色合いのノートである。

「お母さん、みて!!めっちゃ可愛い!」

「ほんまや!ええやんー!めっちゃ可愛い色合いのノートやなぁー!」

「でもなーこれ、スタディノートやねん。勉強の計画立てるやつやねん。私もう勉強したない」

「そーか勉強したないんやー、そんな可愛い色やったら見たら勉強の計画立てたなるかもしれんなぁ!めっちゃいい色やんー!」

「そやけどもー勉強したないー、疲れたしあきたぁー」そう言ってまた泣き出す長女。

彼女の人生初の挫折だと思う。いつも強く堂々としている彼女がこんなにハラハラと泣いてる姿は見る事がなかった。気にしていないように見えたけど、やっぱりショックだったんだ、我慢してたんだ、辛かったんだ。何だか心臓がキュッと縮んだ、そんな感覚を覚えた。

【立ち直り】

そして迎えた朝、今日も早朝から自習する為に学校にいく長女を見送り、私は仕事に出かけた。

電車に乗っていると長女からLINEメッセージが送られてきた。
志望大学の偏差値一覧の写真だった。元々志望している学部はその大学の中でもすこぶる難しく一般枠の受験では合格は難しいと思った。偏差値は83という見たことない偏差値だった。だからこれは無理だと思っていたのだ。そして今回英語が特にできる長女は英語の推薦枠で行こうと思い、推薦枠での入試にのぞんだ。

長女から送られて来た偏差値の表をみると83という驚異的な偏差値ではなく、まだ見込みあるくらいの偏差値だった。

"83ちゃうやん!これやったら一般枠でも行けるんちゃう?"

そう返信すると

キャラクターがドヤ顔で親指立てるポーズをしているスタンプが送られてきた。どうやら落ち込みは持ち直したように感じた。

ショックな事があるとそこにフォーカスし、周りが見えなくなる。もう全部終わりだって思ってしまうことがある。

でも周り見渡して現実を見てみると案外そんなに悩むことでもないことに気づく。これって色んな場面で同じようなことが起こっているのではないだろうか。

今の彼女には言わないけど、早いうちに挫折をし、ショックを受けた事は彼女にとってよかったと私は思っている。大人になってからの挫折は苦しい。若いうちから色んなうまくいかないとことを経験し、乗り越えて行くことでさらに強くなる。柔軟性も高まっていく。今回の出来事は今の彼女にとっては残念な出来事だが人生全体から見れば、あの時落ちたから素敵な今がある。そう思える日がくるのではなかろうか。そんな気がしている。

今の私は彼女が何か話をしたら、その話の聞き役になる。それを役割として行こう。この経験が人生のよき肥やしになるように。そんなことを思った今朝であった。

今日も長女にとって充実した日になることを祈って。


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