入院したら未来の病院が見えた!? 現場観察から考えた医療現場の移動
みなさん、こんにちは。トヨタコネクティッド エクスペリエンスデザイン部のビジネスデザイン室で室長を務めているNakanoです。ふだんはサービスデザイナーやリサーチャー、PMや事業企画等が所属するチームをマネジメントしつつ、グループ会社と一緒に次世代のモビリティサービスを構想し、どうビジネスに落とし込むかをBizDevという立場から進めています。
先日、思いもよらぬ出来事が起こりました。なんと緊急入院することになってしまったんです。
突然の入院、そして気づきの始まり
夏の終わりに腰と足が猛烈に痛くなり、立ち上がろうとすると足がガクガクして一歩も動けないという状況に。脳神経系の病院に救急搬送された結果、ヘルニアで即刻手術が必要と診断され、数日間の入院が決定しました。
ふだん体験できない“患者”という立場に身を置くうちに、日ごろのクセがムズムズと……。ベッドから診察室に移動する行動一つでも、そこには多くの移動体験が詰まっています。自分たちが日々検討しているモビリティや関連技術を、この医療現場に適用したらどうなるだろう? そんな妄想が次々と湧いてきたんです。
病院の「狭さ」が示す課題
まず気づいたのは、入院した病院の「狭さ」。単に空間が狭いって意味じゃないんです。
廊下はストレッチャーが2台はすれ違えるくらい、おそらく2mは通路幅が確保されていたと思います。でも、常に人やモノが行き交っていて、障害物が多く、看護師さんたちはその間を縫うように動き回っている。まるで渋滞が起こりやすい道路のようです。
この状況を見て、院内搬送モビリティの実現がいかに難しいかを実感しました。昨今は自動運転車椅子や、医療スタッフに追従して必要な道具を運ぶロボットも登場しています。しかし、これらを導入できるのは、あらかじめロボットが走ることを想定して設計された病院だけです。昔ながらの病院では、満足に動くこともできないかもしれません。
患者の安全を守るためには数センチ単位の精密な動きが要求されるでしょうし、さらに緊急時には、迅速に退避する機能も必要です。こういった課題を考えると、使用していない時は壁際に寄せて自動的に折りたたまれるような、モビリティ自体を折りたためる要素も重要になってきそうです。
スマートデバイスで医療現場の負担を減らす
病院内で印象的だったのは、常に移動し続ける先生と看護師さんが、お互いを懸命に探し合っている姿です。
驚いたのは、連絡手段としていまだにPHSを使っていること。「規模の小さい病院だったのでは?」と思われるかもしれません。しかし私が入院したのは、名医がいると評判で、遠方からも人が訪れるような病院でした。
この状況から感じたのは、「病院運営の複雑さ」です。セルフレジや最新の医療機器への投資は進んでいても、スタッフの日常的な負担軽減への予算が後回しになっているのかもしれない。限られた予算内での優先順位付けは確かに難しい課題ですが、改善の余地はありそうです。
そこで、比較的低コストで実現可能な解決策として、GPSやビーコン技術を使った位置情報システムの導入を提案したいと思いました。「どこにいますか?」というやり取りがなくなるだけで、医療スタッフの方々の時間的負担は確実に減ると思います。
さらに、看護師さんは器具など常に何かを持って移動しているため、スマートウォッチや骨伝導ヘッドセットの活用も効果的かもしれません。
MVPをベースに小さな改善から始める
もちろん、これらの課題を一度に解決するのは難しいでしょう。でも、小さな改善から始めることはできる。それが「MVP(Minimum Viable Product:必要最低限の価値を提供できるプロダクト)」の考え方です。
MVPの開発は、まず「お客さん(この場合は患者と医療スタッフの両方)が本当に必要としているものは何か」を考えることから始まります。そして、その核心的な部分から実装を進めます。
例えば、まずは医師の位置情報を共有するシステムから始めてみる。これだけでも看護師さんの業務効率は大きく向上するでしょう。
あるいは、ナースコールに緊急度を示す機能を追加する。ナースコール用のボタンを2つ作り、患者自身が緊急を要するナースコールと、そうでないもの(自分の予定の確認など)を区別できるようにしてもいいかもしれません。単純なことですが、こうした一つ一つの積み重ねが、病院環境全体の改善につながるはずです。
我々の仕事で重要なのは、常にユーザーの声に耳を傾け、本当に必要とされているものを提供し続けること。つい「医療機関向けの包括的なプラットフォームを作ろう」などと思いがちですが、こうした大きな構想から始めると、かえって失敗しやすいと思っています。
むしろ、最初は小さくてもいいから、具体的に価値を提供していく。ビジネスはボランティアではありませんが、ユーザーに価値を提供できなければスタートラインにも立てません。この入院経験を通じて、改めて顧客視点の重要性を実感しました。
おわりに:入院体験から見えてきたこと
今回の入院体験では、思わぬ発見もありました。それは、「暇」の大切さ。いつもは「ここをこうしたらいいのに」って思うこと(例えば、回転寿司店のアプリのインターフェースがイマイチだとか)があっても忘れてしまうわけですが、今回はその引っ掛かりを捨てずにいられた。だから、こうしてこの場で伝えることができたわけです。
きっと多くの人が、日常で似たような気づきを得ていると思います。でも多くの場合、それを言葉にしたり、行動に移したりすることはありません。大切なのは、気づきを捨てないこと。それを誰かに話してみること。共感を得られたら、実際に試すこと。そういうプロセスを積み重ねることで、新しいアイデアが生まれてくると思います。
私たちモビリティサービスの開発者にとっては、これらの気づきを具体的な移動に関連するサービスに繋げられるかがチャレンジになります。もし「こんな風に考えるの、楽しそうだな」「自分も新しいモビリティサービスの創造に関わってみたい」と思われたなら、ぜひトヨタコネクティッドに参画する、という選択肢も検討してみてください。
最後に、入院中お世話になった医療スタッフの皆さん、本当にありがとうございました。この経験を今後のビジネス開発に活かしていきたいと思います。
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