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2021年4月4日放送「風をよむ~二極化する世界」

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エジプトのスエズ運河で座礁していた大型貨物船。

動き出す大型貨物船

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29日、岸から離れることに成功、6日ぶりに運河の通航が再開されました。

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エジプト・シシ大統領 「スエズ運河は完全に正常に戻りました」

早期復活を宣言したエジプトのシシ大統領。しかし、この事故による国際物流への影響は、損害額の合計が、10億ドル=およそ1100億円を超えるとの試算もあり、アジアとヨーロッパを結ぶ海運の国際的なリスクが、露呈した形です。

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そんな中、この混乱をチャンスと捉えた国が、ロシアです。この機に乗じて、ロシアがアピールしたのが、地球温暖化による氷の減少を背景にした、『北極海航路』の計画。

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北極海を渡って、東アジアとヨーロッパを結ぶこの航路。スエズ運河経由に比べ、距離をおよそ6割に短縮できるとされます。

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カムチャツカ地方ウラジーミル・ソロドフ知事「非常に安価に運ぶことができます。これまでの伝統的な輸送ルートと比べてもとてもメリットがあります」

アジア側の入口となる日本には、大きなメリットがありそうですが・・・

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原子力潜水艦が氷を割って浮上

先月下旬、そのロシアは、原子力潜水艦が北極海の厚い氷を割り、浮上する訓練の様子を公開。アメリカなども関心を寄せる北極圏は、軍事的な意味も大きくなっています。
  
そのロシアでは今、不穏な空気が漂っています。

ナワリヌイ氏「私は何も恐れていない。入国手続きをして家に帰ります」

1月、療養先のドイツから帰国した野党勢力指導者、ナワリヌイ氏。しかし、その直後、逮捕、収監されてしまいました。

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ところが、最近、本人に面会した弁護人によると、ナワリヌイ氏は、背中や右足に激しい痛みを感じ、事実上、動かせない状態に。

夜間には、1時間おきに刑務所の職員が来て、所在を確認するなど睡眠を妨害する「違法な拷問」が行われている、として抗議しましたが、当局はその事実はないと、否定しました。

こうした人権の問題で、欧米から批判される中、ロシアは、暴力的なデモ鎮圧が伝えられるミャンマーを巡っても、国軍を後押しするような動きを見せています。

ミャンマー国軍式典

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27日、国軍記念日に行われた軍事パレード。欧米各国や日本が、ボイコットする中、出席したロシア。

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ロシアのフォミン国防次官は、ミャンマー軍のミン・アン・フライン総司令官と会談。ミャンマーは、戦略的パートナーだとして、軍事協力を強める方針を確認しました。

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一方、国連の安全保障理事会は、ミャンマー国軍への制裁について話し合ってきましたが、反対の声があがり、実現していません。反対したのは、ロシアと、もう一つの大国・中国でした。

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中国もまた、香港問題や、新疆ウイグル自治区での住民への弾圧で、国際世論から厳しい批判を浴びている、という背景があります。

先頃、アラスカ州で行われた、米中の外交トップによる会談では、異例ともいえる、非難の応酬が展開。中でも、鋭い論調が目立ったのが、アメリカのブリンケン国務長官です。

ブリンケン国務長官「新疆ウイグル自治区や香港、台湾の問題、アメリカへのサイバー攻撃、同盟国への経済的な強要など、中国に対する深い懸念を議論する」

ブリンケン氏の義理の父は、ヒトラー政権下のアウシュビッツに、収容されていた事もあるユダヤ人差別の体験者。そうした背景からも、人権問題への強い姿勢を生んでいると、見られています。

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この会議の直後、中国の王毅外相が、ロシアのラブロフ外相と会談。「人権問題を口実に他国の内政に干渉するべきではない」などとする共同声明を発表、中・ロ関係の強さを誇示しました。

こうした中、アメリカのバイデン大統領の演説が、注目されました。

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バイデン大統領「21世紀における民主主義と専制主義の闘いだ。
民主主義が機能すると証明しなければならない」

人権問題をテコに、中国・ロシアなどのライバル国の動きを、封じ込めようという、バイデン政権の強い姿勢。

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しかし、アメリカ自身にも、移民政策や黒人差別など、人権が絡む課題を抱え、逆に人権がアキレス腱にもなりかねません。

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こうした中、アメリカは、日本・オーストラリア・インドとの枠組み、いわゆる「クアッド」で、対中国を念頭に、関係国との連携を強化。

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これに対抗するかのように、中国は、核開発を巡ってアメリカと対立する、イランに接近、経済や安全保障などで、協力する協定を結ぶなど、中東での存在感を高める動きを見せています。

「民主国家」と「専制国家」。その対立・競合が、大国だけにとどまらず、
互いに他の国々を巻き込みながら、その溝を深め、世界を切り裂いていくのでしょうか?
 


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