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2020年6月28日「風をよむ ~コロナと温暖化~」

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ユーラシア大陸北東部に広がる、ロシアの凍土地帯、シベリア。

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かつて帝政ロシアの時代には、思想犯らの流刑地とされ、第二次世界大戦では、多くの日本兵が抑留され、強制労働と飢えの中で命を落とした、極寒の地です。

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ところが、そのシベリアが今・・・

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住民「蒸し暑くて、耐えられないくらい」

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今月20日、シベリアにある、人口約1300人の街・ベルホヤンスクで、摂氏38度という、観測史上最高気温を記録したのです。

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過去に、マイナス67.8度という、最低気温を記録しているこの街が、今まさに“危険な暑さ”に襲われているのです。

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ロシア・ベルホヤンスクの測候所所長「この地域にとっては異常な気温です」

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この猛暑の原因は、シベリア上空で偏西風が大きく北に蛇行し、南からの暖かい空気が流れ込んでいるためと見られますが、その背景には地球温暖化の影響があると思われます。シベリアを襲った温暖化による異常気象は、思わぬ事故も引き起こしました。

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シベリアを流れるアンバルナヤ川。なぜか赤く染まっています。その不気味な色の原因は、ディーゼル燃料です。

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撮影者「ひどい悪臭で川に近づけない」

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先月北極圏の都市ノリリスク郊外の火力発電所で、突然、燃料タンクが倒壊。これにより、約2万トンものディーゼル燃料が流れだし、川を真っ赤に染めてしまったのです。

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燃料タンクを支える永久凍土が、熱波で融けたことが原因でした。これほどの事故にもかかわらず、当局者の報告が遅れたことで、激怒したのが、この人です。画像15

プーチン大統領「二日遅れで報告するとは、正気か。ネットで騒ぎになってから知らせるのか」

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永久に続くと思われていた凍った土壌が、温暖化の影響で融け出し、思わぬ被害をもたらす、想定外の現実。

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その可能性は、シベリアにとどまりません。アラスカ・カナダ・ロシアなど、永久凍土は、地球の陸地のおよそ14%を占めているのです。

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長期間にわたり、植物や動物の死骸などが積もり重なって造られた、永久凍土の地層。そこからは、すでに絶滅した、大昔の生物の遺骸が発掘され、話題になることもあれば、一方で、貴重な鉱物資源が眠る、宝庫としても注目されています。

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ところが、この永久凍土には、意外な別名が、付けられています。“地球温暖化の時限爆弾”。なぜ?こんな物騒な名前が付けられたのでしょう。

記者「こちらが1万5千年以上前にできた永久凍土です。氷の部分にはたくさんの気泡が見えます。ここに二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが含まれています」

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温暖化で永久凍土が融けると、動物の死骸などの有機物が分解され、二酸化炭素やメタンガスが、大気中に放出、今度は地球を暖めることに。

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温暖化が凍土を融かし、溶けた氷から出たガスが、さらに温暖化を加速する悪循環。そんな危険性を、永久凍土は秘めているのです。永久凍土がとける事による危険性は、それだけではありません。今、世界を混乱させている新型コロナウイルスの危機にも通じる、危険性を、永久凍土は、はらんでいるのです。

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永久凍土がはらむ、もう一つの危険性。それは凍土の中に潜んでいた未知の細菌やウイルスが、凍土の融解で、地上に解き放たれ、さまざまな感染症を、引き起こす可能性です。

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4年前、シベリアで炭疽菌による集団感染が発生し、子ども1人が死亡。感染源として浮上したのが、トナカイの死骸。

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永久凍土の融解により、70年前に埋められた、炭疽菌に感染したトナカイの死骸が、露出。そこから、閉じ込められていた菌が拡散したとみられています。また2015年には、チベットの氷河の中から、未知のウイルスが28種も発見されたという報告もされました。

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国連の気候変動に関する政府間パネル=IPCCは報告書で、温室効果ガス排出量が大幅な増加を続ければ、地表付近の永久凍土のおよそ70%が失われる恐れもあると警告しています。

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そして今、新型コロナという未知のウイルスに、世界が振り回される中、日本学術会議会長で、霊長類学者の山極寿一さんは・・・
 
「近年のウイルス性の感染症は、自然破壊によって野生動物との接触を加速したことが原因である。更に自然資源の開発が続けば、深海や氷河の下に眠っている未知の微生物やウイルスを、引きずり出してしまうかもしれない」「今私たちに必要なのは、グローバルな地球と国の動きと、私たち自身の身近な暮らしの双方で、人間にとって大切なことは何か、ということをじっくり考えることである。コロナ後に、それが決定的な効果を生むだろうと思う」

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