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緊迫続く北朝鮮情勢、米トランプ“豹変”の可能性に日本は

TBSテレビ報道局 政治部 久保雄一

1) 北朝鮮への対応が焦点の中、トランプ大統領は「まず何より貿易」
2) 外務省は「日米は北の政策変更まで圧力」と強調
3) “米の豹変の可能性”注視、“核武装したままの北”の最悪シナリオ回避を

“Primarily focused on trade, North Korea, other subjects”

これは、11月13日のASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議に合わせた日米豪首脳会談の際の、アメリカのトランプ大統領の冒頭発言。「まず何より貿易」、続いて「北朝鮮」を挙げている。

11月はベトナムでAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議、フィリピンではASEAN関連首脳会議が相次いで開催された。地域の経済発展や南シナ海問題などが主要議題だったが、外務省が一連の会議で最も重視していたのは「何はともあれ北朝鮮」(外務省担当者)だった。

トランプ大統領自身、厳しい姿勢で北朝鮮に臨んでいたはずだが、この会談で真っ先に口をついたのは貿易だった。この後に発言したオーストラリアのターンブル首相は「北朝鮮に無謀な挑発を止めさせる」と意気込んでみせ、安倍首相も「北朝鮮の問題は喫緊の課題だ」と続けた。その様子は「まずは北朝鮮でしょ」と、トランプに方向修正を促すようにも映る。

その北朝鮮は9月15日の弾道ミサイル発射以降、挑発を控えている(11月27日時点)。意図は分からないが、ある外務省幹部は「制裁が効き始めている兆候が出ているとの情報が中国・ロシアから寄せられている」と明かす。

一方、北朝鮮国営メディアは金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、工場視察を繰り返す様子を報道。「制裁の影響」との見方を払拭するため、活発な経済活動をアピールする意図があるのか。

事態が膠着したようにも見える中、北朝鮮との対話を重視する中国・ロシアは米韓合同軍事演習を中断する代わりに、北朝鮮が核ミサイル開発をストップする、いわゆる「ダブルフリーズ」を提案、支持しているとされる。これに対し、別の外務省幹部は「アメリカがそれを受け入れることはあり得ない」と強調。また「来年2月の韓国・平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックを契機に、情勢が変化するのでは」という見方があることには「日米は北朝鮮の政策変更を追求している。そのため圧力を強めることがあったとしても、オリンピックを理由に緩めることは全く考えていない」とまで言う。

だがアメリカの急な方針転換の可能性が無いとは言えない。外務省内にも、「アメリカが変化するか、注視しなくてはならない」という意見も当然ある。それもそうだろう。北朝鮮問題を「国難」と位置づけて衆議院を解散した“盟友”安倍首相を前に「まず話し合うのは貿易だ」と言ってのけたトランプだ。メリットがあると判断すれば豹変しうると考えるのが普通だ。その時、日本が向き合うのが、核とミサイルで武装したままの北朝鮮だったならば。最悪のシナリオに導かせないための日本外交の正念場が、これから続く。