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台風15号から1年 復活するのは"屋根が吹き飛んだ"宿泊施設だけじゃない!

2019年9月、関東を直撃した台風15号は東京・伊豆大島にも大きな被害をもたらしました。

島の中でも被害が大きかった波浮港地区に住む吉本浩二(38)さんは、2019年の4月に小さな商店だった建物を改装し、ゲストハウス「青とサイダー」をオープン。しかし、9月の台風でゲストハウスの屋根がすべて吹き飛ぶなど、大きな被害を受けました。

台風15号から1年を迎えるにあたり、吉本さんに話をききました。

よしもとさんかお

ゲストハウス「青とサイダー」オーナー 吉本浩二さん

屋根が吹き飛んだゲストハウスを見て

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屋根や天井がすべて飛び、骨組みだけが残っているような状態でした。2階はびしょびしょで使い物にならない・・・最初は何も考えられませんでした。

でも、すぐに手伝いに来てくれる友達がいたし、奥さんが「屋根が無い」と大爆笑している様子を見て、どうにかなるような気がしました。

吉本さんは当時の様子をこう振り返りました。

大工さんを待たずに自分で修理

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大工さんの数は限られています。吉本さんはすぐに大工さんに連絡し、見積もりを取ったそうですが、「いつになるか分からない」「かなりお金がかかり現実的ではない」という理由から、自分で修理することを決意。

クラウドファンディングでお金を集めて、銀行のローンを借りてなおしはじめました。大工さんには週に1回ほど来てもらって、教えてもらいながら、ボランティアさんと一緒に、できることから自分で始めました。

修理をするにあたって対策もしたといいます。

プロのように、技術的にきれいに仕上げることができないので、大工さんの通常のやり方を習って、それに加えて金具を増やしました。

かなぐ

台風以前は"とたん屋根"でしたが、大工さんからのアドバイスもあって、台風に強く、構造を覚えれば修理もしやすい"アスファルトシングル"という素材に変えました。

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7月に営業を再開して・・・

2020年4月に営業を再開する予定でしたが、コロナの影響で自粛。再開できたのは7月でした。

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台風の被害を受ける前に来てくれていたお客さんは「前よりよくなったね!」、クラウドファンディングで協力してくれたお客さんは「良くここまでなおしたね」と言ってくれました。

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前の年と比べると少ないですが、コロナの自粛期間中に「オンライン宿泊」という形で利用してくれたお客さんとも7月、8月はリアルでつながることができました。


「青とサイダー」だけではなく

「青とサイダー」の建物はもともと吉本さんが子どもの頃にお菓子を買いに通っていた思い出の駄菓子屋さんだったといいます。空き家が増え、だんだんと寂しくなっていく波浮港地区を盛り上げたいとの思いからゲストハウスの経営を思い立ったそうです。

実は、台風を受けて吉本さんが"復活"させた思い出の場所はここだけではありません。

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青とサイダーの隣にある「高林商店」も小さい頃から通っていたお店でした。私だけではなく、波浮港地区に住む人にとっては日用品や食べ物、飲み物を買う便利で大切な場所でした。「高林商店」は屋根だけではなく、壁も半分くらい壊れてしまったんです。

「高林商店」のオーナーから「明治から続く思い出の場所だから引き継いでくれないか?」という依頼があって・・・

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「高林商店」までも任された吉本さん。どんな思いがあるのでしょうか。

建物の状況を見て厳しいのはわかっていましたが、この場所を復活できたら波浮(はぶ)港地区のHUB(中心)のような場所になるのではないか、そうなったら自分のためだけではなく、波浮港地区の人たちのためになるんじゃないか。

小さい頃からの思い出もつまっているので、そこを無くしたくないという気持ちがあり、決断しました。

たかばやししょうてん

自らの手で直し、新たな形で2020年9月末ごろに再スタート予定の「高林商店」。これまでのように飲み物やお菓子などの販売からはじめ、トイレットペーパーやティッシュなど、お客さんの要望を聞いて必要なものを取りそろえる予定だということです。

吉本さんにとっては、"台風被害からの復興"だけではなく、ふるさとを守るという意味もあるのかもしれません。

灯りがともってほしいんです。笑い声がそこから聞こえてくればそれが一番幸せです。

地元の人同士の会話、観光客と地元のたちの繋がりが生まれることで、「青とサイダー」や「高林商店」が、だれかの新たな思い出の場所になりそうです。

「青とサイダー」のHPはこちら



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デジタル編集部 増山 智子

高校卒業までの18年間、伊豆大島で育ちました。以前「離島とコロナ」についてのnoteを書くにあたりお話を伺った吉本さんのお店が、2019年の台風被害から1年ということで、再び取材をお願いしました。

吉本さんが子どもの頃の思い出のお店であり、同じく台風の被害を受けた「高林商店」の復活まで担うことになったと聞いて、とても感動しました。私の実家の近所にも小さな商店があり、友達同士でお小遣いを持って買い物に出かけた思い出や、近所で家族と外食した帰りに寄り道した思い出があり、大切なお店だったなと懐かしい気持ちになりました。新しい「高林商店」も波浮の人たちにとって大事な場所になるんだろうと思います。