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4年ぶりに民主党が政権を奪還したアメリカ。“多様性”を前面に打ち出すバイデン大統領と女性初・ハリス副大統領のコンビは、共和党・トランプ政権で対立と分断がかつてないほど深まった大国… もっと読む
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#萩原豊

それでも残る〝別の世界〟~トランプ氏とSNSが深めた分断~

■〝最後の集会〟でトランプ氏が語ったこと「ソーシャルメディアを我々が使えなかったら、声を上げられなかった。我々は、ここにいなかっただろう」 振り返ると、いまの混迷をも予見したような言葉だった。 米大統領選の投票日前夜、〝最後の集会〟に立ち会った。中西部ミシガン州の空港に集まった約2万人の支持者。コロナ禍にもかかわらず、多くがマスクもせずに、会場を埋め尽くした。トランプ氏が現れたのは、予定時刻から大幅に遅れて午後11時45分頃。最低気温2度の屋外で、日付を跨いで投票日当日の1

〝二者択一と脅迫〟~巻き返し狙うトランプ氏の戦略とは?

■何が争点なのか? 2つのデモから見えるもの 「Four more years! Four more years! =あと4年!あと4年!」 ニューヨーク州でも期日前投票が始まった週末、マンハッタンの目抜き通り、五番街にあるトランプタワー前で支持者が〝カー・パレード〟を行った。「トランプ2020」と記された旗をなびかせた数十台の車列。窓を開けて、大声で叫ぶ人々。歩道にも多くの支持者が集まり、歓声を上げた。ちなみに、ほとんどの人はマスクをしていない。 タワー前の路上には、「

〝史上最悪〟のTV討論会~本当の問題点とは?

■「史上最悪」「混沌」・・・トランプVSバイデン 第1回TV討論会1960年9月26日。シカゴのテレビスタジオで、米大統領選史上、初のテレビ討論が行われた。候補者は、共和党のリチャード・ニクソン副大統領と民主党のジョン・F・ケネディ上院議員だった。 当時のスタジオは、司会者と候補者のみのシンプルな演出だった。よく知られている通り、この討論会は、〝最初のテレビ大統領〟と呼ばれるケネディ大統領を生むこととなった。ケネディ氏は、議論では負けたと見られたが、視聴者から「好感度」を得

〝ネガティブ・キャンペーン〟激化 ~逆転を狙うトランプ大統領

〝静寂の行進〟が問いかけること 日が暮れて、イースト・リバーの対岸で、マンハッタンの高層ビルのネオンが輝きだす頃だった。夕闇のなか、ブルックリン・ブリッジを数百人が歩く。新型コロナウイルスの死者を悼むデモ。人種差別問題などの抗議デモでは、憤りが込められた大きな掛け声があがる行進がいまも繰り返されているが、その日は、静寂の行進だった。 「17万5千人の死者」(※当時の数字。現在20万人を超えた) 「この死は、防ぐことができた」 手には小さなキャンドル。声を全く上げず、ボー

2つの党大会で問われたもの ~ウソと誇張とレッテル貼り~

異例ずくめだった2つの党大会 大統領選の今後を予見するような言葉だった。ミシェル・オバマ氏のスピーチである。 「この4年間、多くの人に聞かれました。『相手のレベルが、とても低俗なとき、まだ”高潔”に向き合うのが本当に有効か?』と。私の答えはこうです、高潔に向き合うことが、有効な唯一の方法です。なぜなら、もし私たちも低俗になり、相手を貶め、非人間的に扱う同じ戦略を取れば、私たちも他の全てのものを消し去る、醜い騒音の一部になってしまうから」 (ミシェル・オバマ氏) 異例ずく

2つの危機が深める〝分断〟 ~どうなる?トランプ再選〜

激しい怒鳴り合いが起きていた。 場所は、ニューヨーク・マンハッタンの五番街。56と57ストリートの間にある、あのトランプタワーの前だ。その路上には、全長75メートルという巨大な文字、「Black Lives Matter」が黄色でペイントされている。トランプ氏は、計画を知った時点で、「トランプタワー/ティファニーのすぐ前にある名高く美しい五番街に…」と不快感を示していた。 ここに2つのグループが集まっていた。 「TRUMP2020」「Keep America Grea

ウォール街が最も嫌った女性~ウォーレン氏失速

一時は、「ウォーレン大統領」が現実味を持って語られていた。 だが、アイオワ州の党員集会では暫定3位、ニューハンプシャー州では4位に沈み、「代議員(デレゲーツ)」を一人も獲得できないという惨敗だった。ウォーレン上院議員は、全米の世論調査でも、サンダース氏、バイデン氏、ブルームバーグ氏に続く4位と低迷している。彼女の失速から読み取れるのは、民主党が抱える党内対立の深刻さ。それは、“ポピュリズム”の荒波に飲まれる米国の危機にも見える。 あの夜が、「女性初の大統領」に最も近づいた日

大富豪ブルームバーグ氏の"シナリオ"?

                          セレブが集うパーティーと見紛うような、派手な雰囲気だった。 今年1月、ニューヨーク・マンハッタンの中心部に位置する、高級ホテル「シェラトン」のボールルーム。大統領選の民主党候補の指名争いに名乗りを挙げた、マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長(77)の集会だ。会場に足を踏み入れると、紫と青のネオンが光っている。無料でワインを配布するカウンターやビュッフェスタイルの食事まで提供されていた。会場に流れる音楽も騒々しい。

"頑固爺さん"サンダース氏 躍進のワケ

去年の秋頃は、もう終わった候補だと考えていた。 78歳のバーニー・サンダース上院議員。去年10月に心筋梗塞で倒れて入院。回復したとしても、その老体では、広大な国土を駆け回る、激しい選挙戦には耐えられないと有権者も考えるだろうと。 ところが、1月の米CNNの世論調査で、サンダース氏は、先頭を走ってきたバイデン前副大統領を初めて抜き、首位に躍り出たのだ。サンダース氏の支持率は、去年10月より11ポイント増えて27%となった。明らかに勢いを増している。 何がこの躍進を作り出し