2020年3月の音楽(とか)のこと

COVID-19禍に心がまいってしまっている。楽しみにしていたライブ・公演の相次ぐ中止、ここ数週間は都内まで出向いて誰かと飲み歩いたり、レコ屋や映画館、古着屋に足を運ぶのも憚れる状況、そしてここまで挙げた事業者が困窮していくのにただただ心を痛めることしかできない。「自粛」という日本語はもう一生聞きたくないなと思う。もちろん今の状況で明らかに感染が進むような環境を作ってはいけないのは当たり前なのだけど。「自粛」と「要請」という言葉でもって、私たち側に責任の大部分が擦り付けられているように思う。これは気持ちよくない。ベターを探ろうとしてすらいないような、弱いものに全うに手を差し伸べる気のさらさらないような政策に悲しくなるばかり。(声を挙げるのはめちゃくちゃ大事なことなのだけど、僕にとっては大事な息抜きの場であったTwitterがその場にならざるを得ないのも弊害としてある。ツラい。)

せめてこれを機に今後は歓迎できる方向に進んでほしいなと思う。と同時に「このままではあかん。急速な改革を!!」みたいな雰囲気が醸成されすぎると今度は鮮烈な指導者が過剰に求められたりしないか、全体主義的な、独裁的な方向に進んでいかないかということもちょっと思ったりして心配になったりする。知識がないので全く的外れ、杞憂なのかもしれませんが。白黒ではなく、グレーというか何かを切り捨てたりしない方向に多くの人の足を向けるにはどうすればいいのか。

私の働く会社の現状にも残念ながら「私たち側に責任の大部分が擦り付けられている」面を見出さざるを得ない。オフィス内で感染者が出たときは2週間のオフィス閉鎖が決まっている。所在こそ茨城県ではあるが、千葉や東京から多くが電車で通勤してくる弊社が自ら止まる気配は一向に見られない(さすがに東京本社は1週間閉鎖)。あるのはポーズのようなマスク着用義務だけ。私の業務内容からして、試作品、製品と多数の測定機器がないと現状成り立たないわけで、しょうがないよなと思う面もあるけど。在宅で、PCだけで業務を進められる人、そんなに多いわけないんだよな。

そうして毎日フルタイムで仕事をして、それなりに残業までして、でも普段ならまあ仕事は大変だけど、しっかり休みはあるし、リフレッシュできるコンテンツは溢れているしでハッピーエンドとなるはずなんだけど。今はなかなかそうはいかない。今できていないこと、今と違ったことがどれだけ自分のご機嫌を取ってくれていたかを身をもって感じる。お家は大好きだけど、それ以外の有力な選択肢無しにただ引き籠るのは僕には違うんだよな。なんだろうか。あえて引き籠っている背徳感というかそういうものがよかったんだろうか。

ある程度書き落としたのでそれでも楽しませてくれたあれこれを今月も紹介します。例えば音楽を聴くのも、本を読むのも今月はあまり没頭して楽しむことはできなかったんですが、それでも心を動かされるものはありましたという記録。


いいディスクガイドを2冊入手してぼちぼち眺めている。

どちらも読み物としてとても面白いです。「Obscure Sound」の方はまだあまりピンと来るものには出会っていなくて、やはり慣れ親しんだというか、得意ジャンルの後者に今はついつい手が伸びる。2017年に出たやつで(ちょうどFleet Foxesの3rd発売のタイミングで彼らが大々的にフィーチャーされている)いまさらと言えばいまさらなんですが、期待以上に年代や国を越えたバランスよく、意思を感じる選盤に共感をもつ。今の時代の一定層(頑固なフォーク、SSW好き)にはこれ以上ない、入門的なガイドなのではないでしょうか。

なぜかこれまで聴いていなかったFather John MistyがFather John Mistyを名乗り始めるまでのソロ作をこの1ヶ月は聴き倒した。Father John Mistyよりこっちの無骨な、ネイキッドな方が断然好きですね。Father John MistyはFather John Mistyを相当演じることでFather John Mistyとなっていたんだなーと実感する。Father John Misty。

J. Tillmanの作品にも時折参加しているこちらもなんとも地味なフォークロック作品で素晴らしいです。

実はJ. Tillman作品を今月初めて聴いたきっかけはタッチの差でディスクガイドではなくこっちなんですがね。

岡田拓郎自宅会。あまりに楽しそうすぎてたまらなかった。

あてはあるのですが、4月中にできるのだろうか??

BIZARRE TV、これの次は広ーいTowerVinyl新宿での2019年のベスト回と目下え!?それ僕もやりたい……案件が続く。 


タッチの差でディスクガイドきっかけにはならなかったのがもう一つ。

グリズリー・ベアのメンバー ダニエル・ロッセンの作品、どれも面白いです。

ディスクガイドから離れると、けっこう有名と思われるこの人とか。このアルバムから入るのは邪道なのかもしれないと思いながら、オーケストラアレンジの素晴らしさに心惹かれる。


新作をつぶさに追うモチベーションはすっかりなくなってしまった。発表されたスーパーソニックのラインナップが全く分からなくてこの世界のスピード感に恐々としています。

直近の折坂悠太のレコーディングにおける過剰アレンジは何なんでしょうかね。butajiとの(二人きり)ver.の方が断然好き。そして驚くことにbutajiの歌うパートの方が好きです。声質にぴったりの歌だ。

一昨日「THIS IS US」のS2がプライムで配信されているのを知ったのがここ1ヶ月で有数の楽しい出来事だった。さっそく2エピソード見ましたが、S1からまるでスローダウンする様子もなく相変わらずびっくりするくらい、直球で面白くて大いに救われています。

S2のE1中盤ではBon Iver「_45_」が流れます。S1はSufjan Stevens祭りでしたが、S2はBon Iverなのか!?と期待を膨らませる。

NHKドラマ「心の傷を癒すということ」も完走。こちらも素晴らしかった。主人公の妻 終子(尾野真知子)が第一話でバスの車中で読んでいて、最終話でも常に手元に持っていることが確認できるのが、ミヒャエル・エンデ「モモ」なのがいい。


今夜は彼女とリモート飲みをしてみようと思う。明日はTHIS IS USの続きをたくさん見て、夕方辺りにはランニングしようと思う。皆さんがそれぞれのやり方で健やかにこの春を乗り越えられますように。

どうぞお気軽にコメント等くださいね。