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ノンフィクション作家の日常「米子でPCR検査」

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電車で鎌倉。予定よりも早く着いたので、軽く散歩。いつもは人でごったがえしている駅前が静かだ。マスクをつけたまま歩くと汗ばんでくる。

二十数年ぶりに会った大先輩と話が弾む。ぼくは週刊ポストのいい時代に育てられたのだと思う。店が開いているという大船に行き、酒を飲んで帰る。

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一昨日、小雨の中、効かないクーラーをつけて走っていると、キーキーとベルトが鳴きだした。昨日、鎌倉に行く前に修理をしようとしたが、時間切れ。この日、LINEでやり方を教えてもらいながら、ベルトを張ることに。エンジンルームが詰まっているので、工具(と手)が入らない。いつもZ1に積んでいる車載工具まで取り出してなんとかオルタネーターを動かす。オートバイよりも細かな作業が要求される。それもまた楽し。

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Z1で、中井駅に近い伊野尾書店へ。「スポーツアイデンティティ」のサイン本作り。本の発売の後、伊野尾書店に行くのはセット。店主の伊野尾さんと次の連載、次回作について話をする。いつもながら本の好きな人と話すのは、楽しい。外に出ると柳澤健さんの「2000年の桜庭和志」ポスターが張ってあった。
次の光文社の「本がすき」の書評でこの本を取り上げている。偶然完全——。

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雨が降り続いている。車で羽田空港へ。車の数が少ないのだろう、駐車場の上部は閉鎖されていた。
チェックインしようとするとカウンターに来てくれという知らせが出る。昨晩、ポイントを使ってアップグレードを申し込んでいた。プレミアムクラスの食事が用意できないので、現金で二〇〇〇円を渡された。
先週から再開したというラウンジでトマトジュースを飲んでから、搭乗口へ。いつもと違う搭乗口。メジャーではない行き先の飛行機の乗り場はいつも遠い。早足で歩いていると売店の弁当の棚に何も置かれていないのが目に付く。
飛行機の中で原稿を書きながら、白ワインの小瓶を二本。米子は曇り空。蒸し暑い。タクシーでホテルへ。PCR検査で陰性判定を受けるまで人に会うことはできないので、散歩。
カニジル編集長就任以来、何度も米子には来ているが、常に忙しく散歩する時間もなかった。シャッターの下りた商店街、米子城跡の野球場など。ゆっくり歩くことで見えてくるものがある。

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ミネアポリスの黒人暴行事件からアメリカが揺れている。嫌な気分だ。

1990年夏、大学生だったぼくは二ヵ月弱、友人と二人でオートバイ(Z1R)でアメリカを横断した。
友人のオートバイ(SS750)の調子がおかしくなり、ミシシッピー州のオートバイ屋に行くと、店主らしき白人はぞんざいな態度でそこで待っておけと顎を動かした。ぼくたちの番が来ると、もう店はおしまいだと吐き捨てるように言った。

フロリダ州のコンビニエンスストアでビールを買おうとすると、IDを要求された。日本のパスポートを一瞥すると、店主の白人はこんなものは見たことがないから売れないと冷たく言い放った。
旅の途中で、長いフロントフォークのハーレーに小さな荷物をくくりつけた、ヘルスエンジェルスのメンバーとも知り合いになった。彼らはみんな白人だった。ハーレーダビッドソンは(アウトローであっても)白人の乗り物で、カワサキやスズキは黒人など〝それ以外〟が乗ることを知った。それからぼくはハーレーには乗らないことに決めた。名誉白人になりたくない(人が乗るのは構わない。あくまでも自分に関して、だ)。
自宅に招待し食事をご馳走してくれた白人もいたし、ビールを買えないで怒っているとポンと瓶ビールを投げてくれたコンボイの運転手も白人だった。アメリカは、ゆるやかな縛りでまとまっている国だ。高い理想を掲げていないと脆い。そんな風に感じたことを思い出した。

11時、とり大病院に行き、外のテントでPCR検査。鼻にこよりのような白い糸状の検査薬を入れられる。一瞬、吐き気。検査はすぐに終わる。少し散歩をしてホテルに戻る。
夕方、陰性だったという連絡が入る。万が一陽性ならば、米子に足止め。今後の予定を全てキャンセルしなければならなかった。ようやく打合せが出来る。

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0603
朝から次号のカニジル用に二本取材。いつもながら医療関係者の取材は面白く、勉強になる。昼すぎに打合せ。

羽田からの米子便が一日一便に減らされている。昨日PCR検査を受けるために前日入りを余儀なくされた。結果、判定後に予定が詰め込まれることになる。頭を使い、酸欠状態。ふらふらだ。昼は上代でそば。旨い。

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空港まで送ってもらい、飛行機に乗る。風が強く激しく揺れる。メルマ旬報とweb連載の国境なきフットボールの直しに集中。羽田空港は人気がない。

夜は、エル・カブキのライブ配信。エル・カブキの二人と一緒だと、口が滑りすぎる。

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