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真説佐山サトルノート round 22 誰も詳細を覚えていない不思議な「会議」


【この原稿は二〇一六年八月から二〇一八年四月まで水道橋博士主宰「メルマ旬報」での連載を修正、加筆したものです。秘蔵写真も入っている全話購入がお得です】


 一九九六年の夏頃、修斗の主たる選手、スポンサーだった「龍車グループ」の人間たちが集まり、佐山さんを追い出す「会議」が開かれた。
 この会議で何が話し合われたのかを真説佐山サトルでは、きちんと書かねばならなかった。そしてぼくは主な参加者を一人づつ訪ねていくことにした。
 最初に会った〝出席者〟は桜田直樹さんだった。
 桜田さんは一九八六年六月にスーパータイガージムに入門。第三代ミドル級チャンピオンになった初期シューターの一人だ。
 桜田さんには、京王線の明大前駅を降りてすぐの、彼が主宰する『ガッツマン』道場で話を聞くことになった。扉を開けると、青色のマットが敷き詰められており、くたびれたサンドバックが吊されていた。少しくすんだ壁には〈挨拶〉と書かれた紙が貼られていた。使い込んだグローブのような味わいのあるジムだった。
「ここでいいですか?」
 桜田さんはマットの上にぺたりと座り込んだ。太い足、分厚い躯をした男だった。『KAMINOGE』という雑誌で佐山さんの評伝を始めていることから始め、イギリスにも取材に行ったと説明した。佐山さんは謎のある人だと思いましたとぼくが言うと、彼は「謎がありすぎですよ。超変わっていますから」と笑った。

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