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真説佐山サトルノート round 10 良き兄貴分——小林邦昭


【この原稿は二〇一六年八月から二〇一八年四月まで水道橋博士主宰「メルマ旬報」での連載を修正、加筆したものです。秘蔵写真も入っている全話購入がお得です】


 取材では、大きな網を海に投げて、それをたぐり寄せながら、締め上げていくような作業が必要なときがある。周囲の証言を検証し、資料を徹底的に読み込み、質問を練りに練ってから臨む。その上で答えの矛盾を突いていく。もしかして藤原喜明さんに会ったのは早すぎたかもしれない。
 しかし、こうも思った。
 プロレスラーとは秘密結社のようなもので、例え当人同士の仲が悪くとも、外部に対しては結束する。話してはならないと判断すれば、墓場まで持って行く。藤原さんが簡単にこちらの質問に屈することはないだろう。
 ぼくは『週刊ポスト』編集部員時代の九八年に脚本家の倉本聰さんに取材した。ドラマ『北の国から 98 時代』の放映前のことだった。倉本さんは勝新太郎さんとも付き合いがあった。晩年、勝さんは倉本さんが脚本を書いてくれているのだという嬉しそうに話したことがあった。しかし、倉本さんは勝さんを当てて脚本を書いたのは事実だが、彼が役柄を〝平凡な男〟から〝刑事〟に替えてくれというので頓挫したと教えてくれた。勝さんのことで話が広がる、楽しい時間だった。
 そのとき倉本さんが口にした言葉が印象に残っている。
「ドラマに必要なのは、陽と陰の人物を組み合わせることだ」

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