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インボイスから事業を守る フリーランスの防衛策!


「フリーランスのあなた!インボイスで仕事がピンチです」でお話しした通り、インボイス制度導入で消費税免税フリーランスは得意先から契約を終了される恐れも出てきます。

そこで本稿では免税フリーランスの方は、どうしたら生き残っていけるのか?そこを徹底的に掘り下げて考えてみました。


(注)下記2ワードは繰り返し出てくるため略称で表記させていただきます

「免税フリーランス」・・・消費税の課税売上が1,000万円未満の事業者を指します。今後免税であることを理由に課税得意先から排除される恐れがあることが課題。

「課税得意先」・・・免税フリーランスの得意先で消費税の課税事業者となる事業者を指します。今後免税フリーランスへの報酬の支払いの一部が仕入税額控除できなくなるため消費税の負担増が課題。取引先の選定も検討する必要が出てくる。

あなたのビジネス インボイス発行は必要ですか?


まずはインボイス発行事業者の登録が必要なのかどうか、検討してみましょう。


 前提としてインボイス発行事業者の登録を受けるかどうかは事業者ごとの任意になります。たとえ売上1,000万円に達していなくても自ら選択してインボイス発行事業者になる(=消費税の課税事業者になり、申告納税もする)ことの可能です。

 ★まずは得意先がインボイスを必要とするか検討しましょう


(1)得意先が消費者や免税事業者である場合は、インボイスを必要としません。

想定される事業として、例えばクリニックや美容室、ネイルサロンなど事業上の経費にしにくい業種は得意先から比較的インボイスを要求されづらい職業になります。
こういった業種はあまり心配せず今後も免税のままで経営を続けて行くことができるでしょう。 


(2)得意先が消費税の課税事業者であるものの簡易課税を選択している場合も、得意先はインボイスを必要としません。

このケースは得意先の売上規模に依存する話(課税売上5,000万円以下の場合のみ適用できるため)なので業種的傾向などはあまりなく、また、先方に確認しない限りわからないことなので、得意先に交渉する段階で関係してくる要素となります。

(3)得意先が消費税の課税事業者で原則課税の場合は、仕入税額控除するためにあなたが交付するインボイスが必要です。

このケースはSEやホステス、フリーランスなど所属先(得意先)の売上規模が大きい業種が該当しやすくなります。
こういった得意先と取引する場合には、あなたがインボイスを発行できないと、得意先の税負担が増加してしまうので取引そのものに影響が出てくる可能性があります。

このように、同じ免税フリーランスあっても得意先の状況により今後の対策の緊急具合も変わってきます。

(1)のように得意先がインボイスを必要としないケースはあまり心配せず事業を続けていけますが、(3)のようなインボイスを要求されるケースでは対策が不可欠なものになってきます。

次章では、主に(3)のようなインボイスを要求されるケースについて、どのようなことを考える必要があるか検討していきたいと思います。

あなた自身の事業を見極めろ!


ここでの話は免税フリーランスや開業して2年間の消費税免税のスタートアップの方などに非常に重要な話になってきます。

「フリーランスのあなた!インボイスで仕事がピンチです」でも説明した通り、インボイス制度最大の目的は免税フリーランスの「消費税もらい得」を防止することにあります。


またその負担増の影響を免税フリーランス本人ではなく、課税得意先に追わせることにより、国税庁は効率的にもらい得を排除できる制度構築にしたわけです。
これこそがインボイス制度最大の目的といえます。

詳しくはこちらをご覧ください。

今後あなたが免税フリーランスである限り、あなたがもらい得したその消費税は、課税得意先の負担増(仕入税額控除させてもらえない)という形で目に見えるものになってきます。

だとすれば「その負担増は誰が引き受けるべきか」ということを真剣に考えていくことが肝要になってくるでしょう。


ここであなたに質問です。

あなたは「その負担増は誰が引き受けるべき」だと思いますか?

・得意先の負担が増えても国税庁が決めたことなんだから仕方ないじゃないか。うちは今まで通り免税でやるよ。

・そうは言っても得意先がそれで気を悪くしたらこの先の付き合いに響きかねないので心配。わざわざ選択してでもインボイス事業者にならないとまずいかな・・・

・正直得意先がそのあたりをどう考えるのかわからない


こんな感じの意見に分かれてくるのかなと想像します。

実際に弊社のお客様からも多くこの問題については相談を受けますが、多くの免税フリーランスの方は売上先がどんなアクションを取ってくるかわからず漠然と不安を抱く方もいらっしゃいます。


一方で、弊社のお客様でいえば、水商売の経営者や営業会社経営者など給与ではなく、報酬(請負や委託契約)で人を抱える会社も多くいらっしゃいますので、得意先の立場から相談を受けることも非常に多くあります。


そういった方の話を聞いていると消費税の納税が大幅に増加する話であり、死活問題だと相談を受けます。


例えば、売上1.8億円、ホステスさんへの支払報酬が年額1億円の規模のナイトクラブで試算しましたが、ホステスさんがみんな免税フリーランスのままであれば消費税の負担増は、インボイス導入後、猶予措置の前半3年は200万円、後半3年は500万円、その後猶予措置がなくなると何と1,000万円もの負担増になります。

「ホステスさんへの支払報酬が1億円もある会社ならそのくらい大丈夫でしょう」と思う方もいるかもしれませんが、年額1億のホステス報酬ということは月額に直すと800万円、毎日営業ならホステスさんへの報酬が日額26万円、こう見るとそんなに大それた事業って感じもしなくなってきますよね。


実際そういった事業で役員報酬などある程度取れば、最終利益は数百万円、ちょっと悪くすれば赤字の法人なんていうところもザラにあります。

そんな会社に、負担増がそれだけのしかかれば経営の危機にもなりかねないのです。このように得意先の側にも色々懐事情や思惑も多々あります。

そんな課税得意先の立場から出る声としては・・

①免税フリーランスのせいで負担増になるのは困るけど、この業務内容を委託できるのは〇〇さんしかいないからそのくらいの犠牲は仕方ないかな。人手不足で下請けを選んでいる余裕はない(委託先として他に目ぼしい選択肢がない、人数を抱える必要があるのでそんな簡単に下請けを手放せない)


②うちは下請けさんがいなければ業務は成り立たないから、多少負担増えたって〇〇さんに不義理をするわけにいかないよ(仕事内容や信頼感でグリップがしっかりできている)


③なんで免税フリーランスのせいでうちが負担増にならなきゃいけないのか?それだったらもっと規模もあるしっかりした企業、又はもっと安い委託先に頼むよ。(委託先としての選択肢は結構ある)

大別すると、おおむねこんな感じの意見が出てきました。

察しの良い方であればもうお気づきかと思います。

この章のタイトル「あなたの事業を見極めろ!」というのはこういった声の中であなたの事業は課税得意先からどういう位置付けをされているのか、この見極めが非常に肝心になってくるということなんです。

①②のように課税得意先の事情を見たときにあまり免税フリーランスであるあなたを容易に切り替えられないような信頼や人材確保の背景があるようなケースでは、そこまで悲観的にならず、今後も取引を今まで通り継続していけばいいと考えられます。

ですが③のようなケースで、競合が存在し、免税フリーランス自身が契約の切り替えの恐れがある場合には状況が変わってきます。この場合には流れに身を任せて受け身でいると課税得意先からある日突然、契約の終了を言い渡されるなんてことが起きるかもしれません。

そうならないためにあなたから能動的にアクションを起こし、生き残って道を模索していきましょう。

免税フリーランスの生き残りの道


前章③のように契約打ち切りの恐れがあるなと思った方、心配になってくると思います。契約打ち切りが嫌ならばやっぱり自分は免税フリーランスのままではダメで、インボイス事業者になり消費税を払わなくてはいけないのか・・・その負担に耐えなくてはいけないのか・・・。

ですが、すぐに諦めてインボイス事業者(=消費税の課税事業者)になる選択をする必要はありません。

課税得意先の言い分は

③なんで免税フリーランスのせいでうちが負担増にならなきゃいけないのか?それだったらもっと規模もあるしっかりした企業、又はもっと安い委託先に頼むよ。(委託先としての選択肢は結構ある)

こうなんです。

課税得意先が不満なのは「負担増になること」なのです。

それを防止してあげればいいわけです。その方法は実は2つあります。

(A)あなたがインボイス事業になり、インボイス発行をして相手が仕入税額控除できるようにしてあげる。

(B)あなたは免税フリーランスのまま、インボイスの発行はできずとも、課税得意先の負担増部分の本体価格を先手を打って値引き提案する
※つまりシンプルに言えば価格交渉です

一見同じことのように見えますが、実は負担額が結構違います。

例えば年間売上880万円のサービス業を営む免税フーランスで考えてみましょう。

(A)のケース
880万円の預かり消費税 80万円
簡易課税であれば預り消費税の50%相当を納付 

→あなたの負担額① 40万円

(B)のケース
880万円の預かり消費税 80万円
得意先の負担増 猶予期間前半3年 80万円×20%=16万円が控除制限される。
なのであなたが免税フリーランスのまま本体価格を16万円を値引きしてあげる
(通常の値引きとあやふやにならぬよう、「仕入税額控除制限相当分 値引」など内容を明示しておく)

→あなたの負担額② 16万円

(B)の金額は全得意先に値引き対応したケースですが、インボイスを必要な得意先のみにこういった対策をして、インボイスを必要としない得意先(免税事業者や簡易課税を選択している得意先)や消費者相手には今まで通りの対応を取れる可能性もあるので負担額は16万円よりさらに減らすことができるかもしれません。


この結果(A)のケース・(B)のケースでは少なくとも24万円も差が出てくる結果となります。


(B)のような方法も、国税庁HP内に掲載の資料の中でも紹介されているため、容認されるルールの範囲内で負担の軽減が可能となります。

(引用)添付資料 P.32/33 に該当箇所があり

□ 必要に応じて価格の見直しも検討しましょう
〇 それまで免税事業者だった方は、商品やサービスの価格について消費税を加味して見直しましょう。

どうでしょう?課税得意先にとっては今までと同様で、負担を増加させない結果と取りながら

・自らの負担はインボイス事業者となる場合なら支払うべき40万円ではなく最低限の16万円で済む

・得意先に対して、こちらから先方負担を増やさない配慮を見せることができ、今後の関係性を構築していく上で誠意をアピールできる(私はビジネスには何より信頼が大切だと考えますので、これがすごく大切なことだと思います)

・この方法であれば免税フリーランスのままでいることができるため、消費税の申告をする必要が出てこない

これだけメリットを取れます。

それでも、もちろん今までと比べれば16万円は負担が増えて厳しいなと感じる方も少なくないかと思います。

ですが本来は年商880万円であれば、預かる消費税は80万円、簡易課税で申告すればその半分の40万円を納める必要があります。

それに比べると非常に軽い税負担で済ませることができますが、将来に向けてビジネスを真剣に考えるのであれば、やはり本来もらっている報酬は本体価格部分であって、消費税部分はあくまで「預り金」なんだという意識は今後もっていく必要があるのだと思います。

現状で免税フリーランスの方は「預り金」部分である消費税も併せて利益率としてカウントしていますが、今後インボイス制度が導入され、猶予措置も縮小されていくと6年後には現在利益率として考えているうち10%は全てなくなってしまいます。


このような厳しい制度の中で生き残っていくには、免税フリーランスの方自身が本体価格部分のみで収支構造を築いていくことが大切だと思います。


もちろんそれは容易なことではありませんが、そのために猶予措置期間(免税からの仕入でも前半3年80%、後半3年は50%控除OK)が6年設けられています。


ビジネスにとっての6年という期間は、十分に収支構造を変化させられることができる期間だと思います。

スキルを向上させ利益率の高い仕事をしていく、同じことを継続するにしてももっと良い価格で案件受注できる得意先を探す、人材増強し販路拡大、新規営業、金融機関営業など販売チャネルを増やす努力etc…本気になればどれだって可能な範囲かと思います。

前半3年では課税得意先の負担増20%部分を、後半3年は50%部分を本来税負担すべき免税フリーランスが引き受けることで、今後も継続的に課税得意先との取引を継続していくことができるでしょう。

その6年間のという猶予期間を活かし、本体価格のみでも必要な利益率を生み出せるビジネスの収支構造を目指して行っていっていただければと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

まだまだインボイス制度も運用開始されておらず、なかなかイメージが湧きにくい部分もあるかと思いますが、受け身になってしまうと思わぬところで契約終了などを申し渡されるリスクもあるため早め早めに対策を取っていくことが1番重要になると考えます。

私の発信で、皆様がインボイス制度のイメージを湧かせるための一助になれば嬉しく思います。今後も新しい情報が入ったら定期的に発信させていただきたいと思います!

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