タクシー運転手の屈辱

屈辱を受けた日があった。

タクシー運転手としての屈辱といわれれば、何をを想像するだろうか。
乗り逃げはそのひとつだが、経験はない。ちなみに、乗り逃げは報道されないだけで意外とある。

ある日、20代後半の女性をお乗せしたときのこと。
とある駅まで初乗り料金420円で悠々到着する距離だった。

お送りするのも数分で、まもなく到着というとき、
お客様は何度も乗り慣れていて、料金が分かっているからか、財布からジャラジャラ音を立てながら小銭を一枚、二枚と料金台に置いていく。

こちらは走行中のため、わざわざそれらを確認することはせず、お客様の言う目的地までお送りした。

到着寸前、
「おつりと領収書要らないんで大丈夫です~」
そう言ってすぐに降りたいかのような意思を示してきた。
おつりが要らないということは表示運賃以上は払っていることになる。
領収書が要らないということも合わせるとお客様は受けと取るモノが無いことになる。

そのようなことは何度もあり、その場合はお客様が早く降りたいからそうしていることは理解していた。

駅前でありながらバス停の前ということもあり、駐停車禁止場所なのでこちらも早く降ろし移動したかった。

到着後、即扉を開ける。
「ありがとうございました~」

女性はそそくさと降りていき、駅の人混みの中へと入っていった。

その後、料金台に置かれた小銭を確認すると、、、
枚数は当たっているが10円玉と、100円玉の枚数が違っていた。
780円のところ、500円玉一枚、100円玉一枚、50円玉一枚、10円玉4枚。

690円。

記憶が曖昧だが、たしかこのような数合わせになっていた。
しかも、500円玉と10円玉が上にあり、100円玉が一番下にある状態。

「あれ?」とは思いつつも間違いなのか、わざとなのか、すぐには判断できず少し考えてみた。
女性は枚数があるようにゆっくり小銭を置いていた。
こちらは運転中で後ろを振り返る余裕はない。
「おつりも領収書も要りません」と言い、
あたかも料金におつりがあるかのような伝え方をしてきた。
そして、着いたらすぐに降りていく。
小銭を数えると100円玉は一番下に来るようになっていた。

500円玉が財布の中にある場合、100円玉が最初に2つ出ることはあるだろうか?
小銭を探すような音も聞こえてきたが、500円玉の方が一番見つかりやすいはず。

これは怪しいな。
そう思いながらもう何も出来ない状態にいる。
しかも、今回の場合はもしこちらが小銭の数を確認していても、「間違えてた」と言い逃れも出来る。
もしわざとやっていたのなら疑いの部分を無くし、用意周到になされている。

少し悔しく、何も対処できずに屈辱的だった。

その事を頭に置きつつ数ヵ月が経った。

またあるとき、20代後ほどの女性をお乗せした。
お送りし、小銭を数枚置いていく。
今回は信号待ちなどもあり、確認する時間があった。
すると、また一番下に100円玉があり、少なく置かれていた。

お釣りは要らないとは言われなかったが、前回と同じ手口。
「やってんな、コイツ」と思いながら支払ってもらい、降りていった。

もしかしたらだが、数百円安く料金を払って降りる方法のようなモノが存在しているかもしれない。

そう思った出来事だった。


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