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【読書日記】タコの心身問題 頭足類から考える意識の起源

著:ピーター・ゴドフリー=スミス
訳:夏目 大
みすず書房

<概要>

著者は哲学者。
意識がどこから発生したのか、進化の過程をたどりながら考える。
進化の系統樹で色んな動物が枝分かれして、その先でタコはタコなりの、人間は人間なりの心を手に入れたらしい。
収斂進化のひとつってことか。

原題:OTHER MINDS: The Octopus, The sea, The Deep Origins of Consciousness
タイトルはタコだし、原題にもオクトパスって入ってるけど、コウイカとかヒヒの話もしている。
ぶっちゃけタコの割合少ない。
最初の方はずっと進化の話してて、タコまだー? ってなる。
タコの勉強したく買ったんだけど。
面白かったからいいんだけど。

<感想>

コウイカの臨終の描写泣きそうになった。
ああ、動物ってこうやって死ぬんだ……。

コウイカはタコと同じく色盲なんだけど、驚くほど色んな色を出せるらしい。
求愛にも威嚇にも使えて、体の半分は威嚇用の色、もう半分は求愛用の色を同時に出せるんだって。
すごいな。
でも、誰もいないときにも色が変わることがあって、著者はそれをつぶやきみたいなものだと考えているらしい。
人間で言えば独り言?
私もすぐ「どうしよっかなー」とか言うし、そうやって何か表現しながら物を考えている可能性は否定できない。

タコの寿命はだいたい2年らしい。(ミズダコは4年と言われている)
これは脳の大きさからして異常な短命らしい。
タコは脳の他に腕を動かしてる神経節があって、その維持には膨大なコストがかかる。
学習能力も応用力も高いから、長く生きた方が明らかにコスパがいいのに、2年しか生きない。
それはなんでかわかってないらしい。
深海性の16年以上生きる種類もいるらしいけど……なんだか切ない。
一応その理由も説明がつけられていて、タコは進化の過程で殻を捨てたことにより、死亡リスクがめちゃくちゃ上がった。
死亡リスクが高いから、種の存続のために早く成長して早く子孫を残せるようになった。
結果として寿命が短くなった……らしい。
同時に、殻を捨てたことで身体を自由に動かせるようになり、その制御のための複雑な神経網が必要になった。
なので、タコは脳も大きいし神経節も持ってる。
殻を捨てるというひとつの出来事が、ふたつの結果をもたらして、脳が大きいのに短命という、他の動物にはあまり見られないタコの特性になっている。
自然ってすごい。


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