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親心はせつないものです

数年前に、NHKニュースの特集である消防士のことを取り扱ったものがありました。

細部の記憶はありませんが、強烈に印象に残っていることがあります。

その消防士は、災害なのか救急なのかは記憶にないのですが、現場で幼い子どもの死を目の当たりにしました。そのことがかなりショックで、トラウマになったようです。

自分の子どもが、突然死んでしまうんではないかという強迫観念を持ってしまい、夜中に目覚めると、子どもが呼吸しているかどうか心配になり、何度も何度も起こして確かめてしまうことをくり返していたそうです。

そんなことが毎日つづくので、妻も子どもも眠れなくなり、けっきょく離婚してしまったそうです。かすかな記憶では、仕事も辞めてしまったようです。


子どもに対する愛情は疑いもなく強いのに、不安から精神的に病んでしまったんですね。

確かに、家族はつらいでしょうが、お父さんの親心がせつないですね。
心療内科の治療もうまくいかなかったのでしょう。

消防職員のメンタルヘルスに関する調査でも、ストレス度の高いのは、
1番は「同僚の死」で、
2番めに「幼い子どもの死」があげられています。

年齢で差別するわけではないんですが、救急隊員として、また消防隊員としても、幼い子どもが負傷したり、亡くなるとかなりあとまで精神的ダメージが残ります。とくに、子どもを持つ親である場合はなおさらのようです。

もちろん、消防隊員や警察官よりも、子どもを亡くされた親は、比較にならないくらいの衝撃を受けるわけですが。


幸い、私が消防士のときには、職務中の「同僚の死」はなかったのですが、全国ニュースを見ますと、毎年消防士が亡くなる悲しいニュースが流れます。

訓練中に目の前で同僚が亡くなったり、一緒に現場活動をしていた仲間が亡くなれば、トラウマになるんだろうなぁ、と思います。


子どもが亡くなる事故でも、昨日わたしが投稿した記事のようなケースもあります。

30年たった今でも、現場の風景や、田んぼの中に落ちていた車両の状態などが鮮明に記憶に残っています。

ほかの事故でも、生命に別状はなかったケースでも、目を覆いたくなるほど損傷がひどい場合でも、それが子どもだと胸が締めつけられるような感覚を覚えます。


冒頭の消防士さんは、真面目にいっしょうけんめい職務に従事して、子どもを愛する素晴らしい人だったのではないか、と勝手に想像しました。

子どもに対する愛情が強ければ強いほど、現場で受けた心のダメージも強かったのではないかと推察します。

私がいたころの消防では、心身ともに強いのが当たり前だ、と言われてきました。
どんな現場であろうとショックを受けたり、動揺したりすることがそもそもおかしいのだ、などと言われ、消防士としての適性を欠いているくらいの言われようでした。

今では、各消防局でメンタルケアに取り組むのが当たり前の時代になったのですが、それでもフォローできない部分もあったのかなぁ、と思いながらニュースを見ていました。


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