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アドテック東京で8人・100分というセッションをモデレートするためにやった準備 #adtechtokyo

2019年11月27日(水) 11:40 at 東京国際フォーラム

アドテック東京というアジア最大級のマーケティングカンファレンスで、公式セッションのモデレータをやらせてもらいました。

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タイトル「代理店へ丸投げはダメ絶対。チームワークでパフォーマンスを向上する」なかなか刺激的です。丸投げしてる広告主がdisられるのか、はたまた代理店が反撃されるのか。
(※どちらの展開もありませんでした)

登壇者は広告代理店、広告主を含む8人。多い!こんなに多いセッションやったことないし、見たことない。なにこれすげー こんなのはじめて。

(登壇者は、広告主サイドからサッポロビール福吉さん、ネスレ小堺さん。代理店サイドから電通デジタル杉本さん、IREP 丸山さん、Zo Digital Japanのジェフさん。支援企業サイドからデジタルインテリジェンス冨田さん、Repro 平田さん。モデレータが僕 Smartly.io 坂本です)

時間は100分。長い!アナ雪2が103分なので、だいたいそれと同じぐらいです。ちゃんとやらないと、途中で飽きてスマホいじられちゃいます。未知の旅や〜

結論から言うとセッションはとても上手くいきました!

聴いてた方がどう思ったかは分からないけど、最後まで「気まずい沈黙」が起こることなく、全員がバランスよく発言し、建設的に議論が盛り上がり、途中で退席される方も殆んどおらず (11:40-13:20というお昼時だったにも関わらず)。

さすがにこんな人数と時間になることは多くないと思いますが、セッションを成功させるためにモデレータとしてどんな準備をしたのか、これからやられる方のために記録として残しておきます。

(モデレータをよくやられる方は是非「自分はこんな準備をしているよ!」といったノウハウを添えてTwitter等で記事シェアいただけると嬉しいです。集合知最高。)

全員と1on1ミーティング

登壇者の基本情報をインプット
他の7人全員とそれぞれ1時間ずつ1on1をして、現在何をやってるか、過去の経験、キャリアなどヒアリングしました。
(もちろん会う前にはオンラインでいくつかその方についての記事を読みます)

パネルで話すトピックを抽出
どういうトピックに興味があるか、他の登壇者にどういう話を聞いてみたいか、など聞きました。
1人だけだと分からないけど、何人かから同じようなトピックが挙がると「これはパネルのお題として良さそうだな、みんな意見あるみたいだし」って判断ができます。

登壇者の心理的安全性
登壇者は、よっぽど常連じゃない限り、必ず少なからず緊張しています。
こんなこと言うと失礼じゃないかな、自分だけ浮いちゃわないかな、反対意見言うとムッとされないかな、etc...

ちなみに今回、一部を除いて登壇者同士は事前の面識なく、僕も5人とは初対面でした。

なので、まずモデレータである僕と、お互いのこと知って打ち解ける。
こうすることで「壇上で困った時は僕を見てね、ちゃんと拾うから大丈夫」っていう、心理的安全性のようなものを築くことが出来ます。困ったときはいつでもバックパス戻していいからね、的な。

セッションの戦術を理解してもらう
「議論を活発にしたいから積極的に発言してね」「他の人にかぶせたり質問したりしてもOK」「1人が長く話しすぎないでね」「可能な限り実体験やぶっちゃけ話をしてね」などといった、そのセッションにおける共通ルールや方針について理解してもらうことも大事です。

サッカーでいうと、実際の試合中には局面局面で選手が自分で判断しなければいけないとはいえ、全員攻撃全員守備なのか、守って3人でカウンターなのか、などチームとしての戦術が決まっていないと、連携のとれた試合運びは絶対にできません。

テーマは決めるけどシナリオは決めない

7人全員と話して、今回は「代理店・広告主それぞれのあるべき役割分担」「フィー体系」「人材・スキル」あたりのトピックが皆さん共通して意見を持ってそうだということがわかったので、このへんを軸にしようと決めました。

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でも細かい内容、例えば「このトピックを誰が何分話して、そのあとこれ話して」ってのは決めませんでした。

何故なら「役割」「人材」「フィー体系」などは相互に関連していて、個別に切り出して議論するのに適していないから。
なので本番でも、議論はそれぞれのトピックの間を行ったり来たりしました。

あとは、あんまりカチッとやり過ぎると、みんな「準備してきた回答を読むだけ」になっちゃうので。就活かと。

唯一決めてたのは、一番最初に代理店のお2人に「丸投げされたことありますか?」って聞くということ。お2人にもそれを伝えていました。

僕が本番でいきなり「最初どうしよう、誰にふろう...」って戸惑ったり、「誰か話したい人?」って7人に振って、お互いに顔を見合わせてシーンとなると、最悪の立ち上がりになるからです。笑

最初だけ誰に何を振るか決めておく、ってのは割とよくやるテクニックです。オススメ。

事前顔合わせ (飲み会) やりました

人数多いし、全員の予定合わせるの大変だな...ということで、最初はやらないつもりでした (僕の怠慢)。でも希望者が複数名いたので、やることになりました。

登壇者の方 (電通デジタル杉本さん、IREP 丸山さん) が自ら進み出て幹事をやってくれました。さすが代理店だなと思いましたw

結論として、事前顔合わせは、やってよかったです。
前述の通り、お互い初めましての人が多かったので、これのおかげで「安心して話せる、議論できる」関係性が醸成できました。

事前に盛り上がりすぎると本番で話すことがなくなる、って危惧もありましたが (アドテック事務局からも「そうならないでね」って注意喚起がくるぐらいw「あるある」です) 幸いそうはなりませんでした。
たぶん、今回のセッションが「結論が出る」ようなテーマではなかったからかな。

Repro 平田さんだけ予定あわず事前顔合わせに来られませんでした。が、役回り的に全く問題ありませんでした。
平田さんは、空気読まず反論や極論をブッコんでもらうというポジションだったからです。後半15-20分で投入するスーパーサブ的な。

もし来られないのが他の方だったら、ちょっと状況違ったかもしれません。
(打ち解けられず上手く話せない、となっていた可能性がある)

スライド等のロジまわり

どんなスライドを作ったのか
まずは登壇者紹介として、企業名、名前、顔写真だけドーンと載せただけのもの。こんなかんじです。ドーン

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そうした理由
 1. 今回の登壇者は必ずしも全員が「顔と名前が広く知られた、業界の有名人」というわけではない (もしそうだったら紹介さえ不要だった)
2. 代理店なのか、広告主なのか、その他なのか、っていう立場を明らかにしないと、発言のニュアンスが正確に伝わらない

盲目的に「自己紹介スライド作ろう」じゃないのです。目的があって、オーディエンスがいて、伝えるべき内容があって、それによって「どんなスライドを作るべきか」もっというと「そもそもスライドが要るかどうか」が決まるのです。

企業ロゴが入ったパネル
同じく登壇者の "立場" を観客に分かりやすくするという目的で、企業ロゴが入ったパネルを作って全員首から下げてもらいました。

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これは凸版印刷 亀掛川さんが以前のアドテックでやられたとのことで、まんまパクらせていただきました。

亀掛川さんとは、登壇者向けの勉強会&パーティでたまたま隣の席になって初めてお会いしました。(来年登壇される方、これ行ったほうが良いですよ)
そこで以前パネルを作ったという話を伺って、その場でダメ元で「うちもやりたいです、パネル制作してください」ってお願いしたら快諾いただきました。器が大きすぎる。笑

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やったのは、ロゴファイル (画像データ) を送るだけ。ファイルは、アドテック事務局が全部持ってたので (各登壇者が事前に提出している)、取りまとめて送ってもらったものを横流ししただけ。それだけでセッションにパネルが出来上がっており、当日の朝に会場で受け取り。すごく楽で助かりました。

どうやってご恩を返そうかと思案中。笑

観客の期待値を形成

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唯一オリジナルで作ったスライドが上のものです。

事前飲み会でみんなで合意したのは「正解は1つじゃないから、それを知ろうって期待値でセッション聞かれると困るよね」ということ。
なので「ヒントを持ち帰って、何をやるか自分で考えてもらう」というのをこのセッションのゴールだと決め、スライドで明示し、セッションの最初に僕から発表しました。

最初にモデレータからこれ言ってね、ってのも登壇者の総意でした。

セッションの進行

爆速自己紹介
自己紹介は1人30-60秒だけにしてね、って徹底しました。
前述の通り、広告主・代理店・その他 という立場は最初に明確にしたほうが良いものの、逆にそれだけ言えば冒頭のイントロとしてはOKだからです。

あと単純に人数が多いので。笑

なので例えば、スペックとしてはおそらく自己紹介だけで20-30分 (もっと?) は余裕で話せるであろう福吉さんは「サッポロビールの福吉です。美大出身のgeekです。よろしくお願いします」で自己紹介を終えてくださいました。

多分オーディエンスは「?」だったはずですw が、真実の姿は物語が進むについて徐々に明らかになるのです。冒頭でダラダラするよりも、そのほうがよいのです。

序盤で少しでもいいので全員に話してもらう
なるべく早い段階で「全員に一言ずつ喋ってもらう」を達成できるよう、序盤だけ僕から指名して話を振っていきました。

サッカーでいう、いったん全員にパス回してボール触らせると落ち着けるよね、っていうやつ。
最初に一言マイク持って喋るまでの間って、ずーーーーっと緊張してないといけないんですよね登壇者って。

自己紹介が長かったり、最初に1人10分ずつプレゼンさせたり、といったパネルは、その間に心身が冷えてしまってゲームに入っていけない、みたいになるんじゃないかって思ってます。

原則「誰に何を聞くか」は決めない。が例外はある
前述の通り、ライブ感を大事にするために、大まかなトピックだけは決めたものの、誰にどんな質問を振るか・どういう順番で進めるか、などは決めませんでした。

ただし今回のセッションでJeffさんだけは別でした。

彼はアメリカ生まれ育ちで、日本語での日常会話は問題なく出来るものの「専門的な話題で、ガンガン進んでいくパネルディスカッションだと、ついていけるか不安がある」とのことだったのです。

なので、事前に相談した上で、「このへんのトピックで、こんな質問を振るから、なんとなく回答準備しておいてね」「日本語で答えるの不安だったら英語で答えてね、ぼくが通訳するから」という作戦会議をしておきました。

明らかにパネルディスカッションに慣れていない、または向いていない人がいる場合は、こういった特別対応をしたほうが全員にとって良い場合があるでしょう。

なお、4つぐらい用意していた質問のうち、本番では2つだけ聞きました。案の定、ぼくが日本語で質問し (観客用)、英語で質問し (Jeffさん用)、Jeffさんが英語で回答し、僕が観客のために回答を英語に訳す、という "質問も回答も、日本語と英語で2回ずつ" というフォーマットになったので、正直テンポは遅くなってしまったんですよね。

「用意してもらったんだから全部聞かないと悪いな」と気を使ってしまうと、逆に全体の流れを悪くするなと思って、全部は聞きませんでした。

本番前にJeffさん自身も、少し不安そうに笑いながら「1回か2回ぐらい話せれば十分だから、気を使わないでね」って言ってたので。

フットサルやってて、正直あんま上手くないおじさんが1人チームに入ったとき、接待プレイしすぎるとおじさんの側も恐縮しちゃう現象あるじゃないですか。あれは良くないなと。

質疑応答

質疑応答やると決めたのは、本番中の終了10分前
やるかどうか直前まで迷ったのだけど、議論が良い感じで盛り上がった (たぶん観客も聞きたいことあるんじゃないかと思った) のと、時間がちょうど10分残ったあたりで議論が落ち着いてきたので、やることにしました。

「質問ありますか?」ってやって手が挙がらないとけっこう辛いので、モデレータやりながら、前列のほうに座っていた IREP社CMOの北爪さん (丸山さんの勇姿を見に来たのでしょう、素敵な上司だ) に「これから質疑応答やるから、質問してください!」ってメッセ送りました。

残念ながら北爪さん壇上に集中しすぎていて、気づいてもらえなかったですw あとから「気づかなくてゴメンナサイ💦」って返事がきました。サクラの用意はセッションが始まる前にやっておきましょう。

幸い2つほど質問が出て、回答も複数の登壇者から出て、上手くまとまりました。質問された方も満足された旨tweetしていました。良かった良かった。

観客にも参加機会が無いよりはあったほうが満足度が高くなる、つまり、質問機会があったほうがセッションの評価 (点数) が少し高くなる傾向があるので、可能であれば質疑はやったほうが良いです。ウヒョ!打算的。

オンラインで質問募るのもアリなのですが、条件付きで
観客のこと事前に分かっていたら、もしくは観客が100名以上とかN数が保証されていたら、Sli.do などのオンライン質問ツール使ってもよかったんですけどね。全く質問が投稿されない可能性がゼロでは無かったので、今回は使わないことにしました。

他のモデレータさんのノウハウも知りたい

モデレータとしてセッション準備でやったことは、こんなかんじです。

このやり方が全てではないし、他のモデレータの方にも違ったスタイルやテクニックがあると思うので、ぜひ聞いてみたいところです。僕ほかの人の「脳の中を覗く」のすごい好きなんですよね。なので今回は先に自分の脳内を言語化してさらけ出してみました。

モデレータをよくやられる方は是非「自分はこんな準備をしている!」という一言コメントを添えて、Twitter等で記事シェアいただけると嬉しいです。モデレータではなくスピーカ側の方は「こんなモデレータはやりやすい・やりにくい」、オーディエンスの立場からも「こんなセッションは満足度が高い・低い」みたいな意見をぜひ伺いたいですね。

登壇依頼お待ちしてます
そしてこの記事を書いた理由のもう1つは、「こんなにちゃんと準備してくれるんだったら、自分のイベントでもモデレータをやってもらおうかな」となって登壇依頼が増えるんじゃないかってこと。ご依頼いつでもお待ちしてます!

自分の会社 Smartly.io 日本のマーケ界隈ではまだまだ知名度低いので、会社ロゴ入りのTシャツを着て出れるとこには全部出たい。スピーカのほうが楽なのだけど、イベントによっては会社や個人の知名度が高くないと呼んでもらえなかったり、スタートアップ系イベントだと創業社長じゃないとスピーカになれないことも多いんですよね。自分の努力だけで登壇のチャンスを掴めるのはモデレータかな、って思ってます。

来年のアドテック東京でも (東京以外でも) 登壇するチャンスあるといいなぁ。モデレータでもスピーカでも。(特定の数名を意識しながらチラッ)

ちなみに Smartly.io 自体、海外では Facebook・Instagram 広告運用ソリューションとしては最もメジャーなものの1つで、社員も350人以上いるし、つい最近もフィンランド大統領から表彰されるぐらい注目されてるスタートアップです。マーケテック、SaaS、みたいな文脈で登壇したこと殆んどないので、2020年には認知度上げてそういう機会もゲットしたいな。

もちろん登壇依頼だけでなく、Smartly.ioの話もっと聞きたいってお問い合わせも大歓迎です。Twitter, Facebookのほか、こちらのサイトからもお問い合わせ可能です!

以上です!Twitterで下書きしてたものの、けっこう書き足したから疲れた!これからモデレータやる方の役に、少しでも立ってるといいな!

Q

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