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いまさらながら『人生の勝算』を読んでみた

おそらく著者の前田氏は私と反対の人生を歩んできた人だ。私は『メモの魔力』でも多くのことを学んだし、その人生観に驚き、感心した。『メモの魔力』と同じく、本書にも今を生きる人たちへの愛が詰まっているように思う。

論理的な精神論

本書を読んでまず思ったことは、精神論を論理的に解説している内容だということだ。本書の内容をひとことで言うのであれば「やりたいことを見つけて突き進め」だろう。

やりたいこと——心の底から進みたいと思う方向・理想像とでも言えばいいだろうか。そういった人生の指針を設定し、それに情熱を持ってひたむきに進む。それが著者の言う“人生の勝算”である。

『メモの魔力』でも著者は情熱・モチベーションといったものが何よりも大切だと述べていた。結局は強い情熱を持って取り組めることを見つけ、努力できる人が幸せなのだと。

やる気・努力といったいわゆる精神論について、私はどうしても嫌悪感を抱いてしまうのだが、本書を読むことには苦痛を感じなかった。おそらく読者を諭す・読者に教えるといったスタンスではなく、著者の体験談を語っている形をとっているからだろう。

斜に構えず、全力で生きている様や生きることへの愛情を感じられるから自然に受け入れられたのかもしれない。

”人を好きになる”とは?

本書の中で私にとって一番必要な要素は「人を好きになる」という点だと感じた。全ての人を好きになるとはどういう状況なのだろう? 私は私は素直に疑問に思った。

人に限らず何かを好きになることは、好きになる要素が何かしらあってその物事全体を好きになるという流れが自然だろう。けれども、著者の言う“無条件で人を好きになること”とはどういう意味なのか、具体的にはどんな状況なのかがあまり理解できなかった

相手の性格をよく知らない状況で好きになるとはどういった心理状況なのだろうか? もしかしたら悪意を持って他人を傷つける人かもしれない、自分が言ったことで相手を不愉快にさせるかもしれない、そういった恐怖はないのだろうか。コミュニケーションが上手く行かず、何かしらの不具合が生じてしまうかもしれないと考えることはないのだろうか?

読みながらそこまで考えたとき、いくつかの仮説を思いついた。
1.自分に自信がある
自分のコミュニケーション能力に自信があり、相手がどんな人間だろうと上手く立ち回れると自負している。話をすることで相手に何かしらの利益を与えられる自信がある。

2.相手がどんな人間か関心がない
自分と相性が悪かろうが、自分が傷つけられようが構わない。上手くコミュニケーションが取れなくても、何か失敗してしまっても気にしない。そういった心持ちだから、積極的に人に関われるのではないかと感じた。

著者が“人を好きになる天才”と賞賛する宇田川さんは相手の良いところや感謝できる点を見つけるのが上手いという。
私は昔から人を褒めたり長所を見つけることが苦手だ。初対面の相手でも欠点を見つけるのはすぐできるのに、長所に気がつくのがなかなかできない。
私が誰かの長所を知るのは、一定期間コミュニケーションを取った後だ。相手の性格をある程度把握し、相手の人格を認識してからでないと長所が見つからない。

おそらく宇田川さんは初対面の相手でも、その人の美点を見出せるのだろう。それか格段に人の情報を手に入れるのが早いのかもしれない。相手の言葉・仕草・表情などをよく観察して、情報として処理するのが人より早いのかもしれない。その多くの情報の中から、相手の長所をすばやくピックアップできるのだろう。

もちろん元々持っている力による違いはあるだろうが、情報を処理する力は話している相手への興味の度合いによるところが大きいように思う。様子を注意深く観察するのは興味のある人間にしかできないだろうから。

全方位に興味を持つということ

となると、無条件に人を好きになるということは、無条件に相手に興味を持つということではないだろうか。相手が話す内容だけでなく、相手の存在そのものに興味を持つこと。好奇心を全開にしてコミュニケーションをすること。それが無条件に人を好きになることではないだろうか。

相手に興味を持つこと”であれば、私も比較的イメージしやすい。未知の物事に対して「知りたい」と欲する姿勢と同じだからだ。

相手のことを知りたいと思うからこそ多くの情報を手に入れられ、人脈を獲得するのかもしれない。私は人脈を広げたいとは思わないが、もっと様々なことを知りたいとは思う。スキルや知識を手に入れたいとは思う。まずは目の前の相手とのコミュニケーションを大切にする姿勢が大切なのだろう

この姿勢は特別な訓練が必要なわけではないが、決して一朝一夕で手に入るものではないだろう。他人に関心を持つ心を塞いでいた私にとっては、人生観が変わるといっても過言ではない。

それでも私に足りないものであり、今の停滞感を抜け出すには必要なものかもしれない。

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