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散骨

詩人は
最後の詩を書いたあと
何かを悟ったように
微笑んで死んだ
 
墓標には
こう書いてあった
 
海辺に並ぶ
白い屋根
青に生える
崖の向こう
言葉遊びが過ぎて
溺れる
そうでもない
伸びしろ
 
命が尽きるように
凡庸な
凡庸な……??
──文字が擦り減って
──解読不能
…………
書くためには
ずれることが
必要だが
生きるためには
そうでもない
 
ずれが終わると同時に
長い夢も終わる
 
それが
私のすべてだった
 
……
いつか
この石碑も
朽ちていくだろう
この詩人が
生きた証も
砂となって
風に乗って
海にばらまかれていく
 
遅すぎた
散骨のように

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