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AI時代こそ “僧侶” に学ぶ

column vol.949

最近、AIに関するニュースを見ない日はないほど、最新のトピックスが目白押しとなっています。

それと併せて、「人間ならではの役割」「人間の得意な能力」など、AIと協力していく上での指南記事も多く見られます。

それだけ、自分の仕事(業務内容)がAIと被っていないか気になる人が多いことの表れでしょう。

ということで、そんな不安を吹き飛ばすヒントになるかもしれない話を、今回は取り上げたいと思います。

大ヒットした『リデザイン・ワーク 新しい働き方』の著者、リンダ・グラットンさんによると、人間の持つ「集中力」に希望があるらしいのです。

人間が持つ「未来を想像する力」

リンダさんは、「集中力を発揮して人間ならではの仕事に取り組むことが、ビジネスパーソンにこれから必要だ」と指摘していらっしゃいます。

〈東洋経済オンライン / 2023年3月10日〉

では、何に意識(思考)を集中するべきなのか?

それは、「未来の可能性を想像すること」のようです。

リンダさんは、この能力はAIにはない「人間が得意とする能力」であると考えていらっしゃいます。

出所:リンダ・グラットン『リデザイン・ワーク』

横軸「時間」

1秒から始まり、1日、1カ月、1年、10年までの幅があります。

そして、縦軸「認知的課題で要求される集中力の類型」

①相関関係
…複数の既知のものごとの間の関連性の強さを明らかにする。
②因果関係
…ある既知の行動がある既知の結果をもたらすという関連性を把握する。
③想像
…新しいものごとを思い描く。
④因果関係の想像
…さまざまな出来事やプロセス、状態がどのように他の出来事に寄与するかを想像する。

というように4つに分類されます。

AI過去のデータや現在を含む短期間のデータ(例:チェスゲーム)の処理は得意。

しかし、「ひょっとすると、こんな未来がやって来るのではないか」と、まだ存在していない物事を考慮できるのは人間ならではというわけです。

AI…既知の情報を処理
人間…未知の情報や可能性に対処できる

例えば、市場アナリストの仕事では、AIによる業界データの精巧な分析結果に基づいて、人間が未来に関する仮説を立て意思決定をする。

リンダさんは「未来への想像」に対しての能力に磨きをかけるとともに、集中して考えられる環境づくりを整えていくことが必要だと指摘しています。

なぜなら、現代の生活はあまりにも多くのタスクを同時進行でこなさないといけなく、集中して1つのことに取り組むことができないからです。

世界的企業が推進する「モンクモード」

実はこの指摘はリンダさんだけではなく、世界の名だたる企業経営者生産性を高めるための方策として重要視してきています。

キーワードは「モンクモード」です。

〈BUSINESS INSIDER JAPAN / 2023年2月19日〉

「モンク(monk)」は「修道士・僧侶」という意味。

集中力を高めるために「マインドフルネス(瞑想)」している状態を思い浮かべていただくと分かりやすいかと思います。

気を散らすことなく、目の前の仕事に集中することで生産性を高める。

ちなみに、このモンクモードは20年前に一度ブレイクしたのですが、2020年に発刊されたジェイ・シェティさんの著書『モンク思考:自分に集中する技術』がきっかけで、再び注目を集めています。

コロナそして、世界経済の停滞など、未来への不安からブームが再燃していることもあるでしょう。

なぜなら、先ほどのマルチタスク以外にも、不安が頭の中を占めれば当然、未来を想像する集中力は削がれるからです。

ちなみに、ジェイさんによると、モンクマインドを持っている状態とは次のような状態となります。

ものごとの根っこの部分を見据えている
意図と自覚をもって生きている
優しくて、思いやりがあり、協力的
分析する、明確に説明できる
整然としている
先々の利益を考える
熱心、決心が固い、根気がある
使命感、ビジョン、目標をもって取り組む
ネガティブな感情や恐怖を分析する
他者の役に立つために自分を大事にする
シングルタスキング(一度に1つのタスクに専念する)
エネルギーをコントロールし、賢く使う
自制心を働かせようとする
意味を求める
根本的な解決策を探す

〈東洋経済オンライン / 2021年9月25日〉

つまり、エゴ、嫉妬、欲望、不安、怒り、不満、悩みから自由になった状態であるということです。

「今」に集中するからこそ「未来」が見える

ではでは、ここでリンダさんの「未来を想像する力」ということと、「モンクモード」を、1つの「問い」で結び付けたいと思います。

「理想の未来は何ですか?」

こういった問いを出されると、一瞬たじろぎませんか…?(汗)

お金持ちになることなのか?

それとも、とてつもない名声を手に入れることなのか?

だとしたら、どれぐらい手に入れることが理想なのか?

はこの問いを昨年12月に禅宗の高僧に問われて、見事にたじろぎました…(笑)

では、この問いはいかがでしょうか?

「今日が最後の一日だったら何をしますか?」

この日の連続した未来が、自分自身の「理想の未来」であるということでした。

例えば、それが「家族を大事にする」一日だとします。

普段なら

「仕事と私、どっちが大事?」

とパートナーに問われたとするならば、「いや、仕事を大事にしてこそ、あなたを大事にできるじゃん…」と思うかもしれません。

(…例えが、昭和的ですみません…)

しかし、モンクモードで「最後の一日」を想像したら、仕事をサボって一日をパートナーと過ごすかもしれない。

もちろん、毎日仕事をサボっていたら流石に生きていけませんが(笑)

それでも、パートナーの心の中で「自分は大切にされている」という毎日の実感の連続がないと、もしかしたらしたら5年後、10年後、離れ離れになっているかもしれない…

つまり、その人の「理想とする未来」は得られないというわけです。

ビジネスも同じで、AI時代が本格的に到来して、共存に向けてどのように舵取りをすれば良いか、外的環境ばかりに目を向けがちになってしまい、自分の心をおざなりになっては元も子もありません。

今日が最後の一日だったら、どんな自分(自社)でありたいと思うのか?

そこを明らかにしておかないと、本来の自分の理想から遠ざかる可能性が生まれてしまいます。

そもそも、どんな未来が来るかは正確に予想することはできません

例えば、40年前の私「2023年後の世界ではストリーミングによって音楽が聴ける時代になっている」と教えたら、「じゃあ、レコードは無くなるんだろうな」と思うはずです。

しかし、今の時代でもレコードは残っている

それは、カセットテープやCD、MD、ストリーミングと、さまざまな外的環境の変化にあっても、「レコードが好きで好きでたまらないんだ〜」という人たちがいたからこそ。

人間の未来は機能性(テクノロジーの進化)だけでは決まらないということです。

ということで、まずは「自分の理想」今の自分に聞いてみる

そして、その連続する未来を想像して叶える算段をつけていく。

しかし、今の自分は明日変わるかもしれない。

だからこそ、毎日のモンクモードが必要であるというわけです。

ジェイさんは一日5分でも「全集中」する時間をつくることを推奨しています。

一日5分なら…、

もちろん、信じるか信じないかはあなた次第です(笑)

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