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小売りは「売る」から「体験」へ 【後編】

column vol.29

前回は、「RaaS(ラース / Retail as a Service)」について、その代表例であるアメリカ・サンフランシスコ発の「b8ta(ベータ)」について紹介させていただきました。

後編は「b8ta(ベータ)」以外のアメリカ小売業の事例を紹介させていただきます。

テキサス発「Neighborhood Goods」

まず1つ目がD2Cブランドのデパート「ネイバーフッド・グッズ」です。「b8ta(ベータ)」同様、商品をセンス良く展示。店舗スタッフもいるのですが、販売員ではなく「ストーリーテラー」と呼ばれており、商品を売ることが主目的ではなく、「新しいライフスタイル」を提案することが最大のミッションとなります。

普通、販売員は売上に対して歩合制をとることが多いですが、ここでは固定給。しかも、比較的高給を支払っているそうです。ですから、「ストーリーテラー」は「売る」プレッシャーから解放されており、価値を伝えることに専念できます。

一方、顧客も「売るぞ!」という圧を感じないので、店員とフレンドリーな関係が築けます。顧客との対話から仕入れたニーズを、ブランド側にフィードバックすることで、店舗スタッフはコンサルタントとしての役割も担います。あくまでも短期的な利益ではなく、長期的な関係づくりを行うという視点が新しいですね。

また、コミュニティーステージという考え方で、地域住民のつながりの場として館が機能しています。エクササイズ教室、クッキング教室といったレッスンから、カンファレンスやブランドの製品発表会の開催まで多岐にわたって展開。週2〜3回のペースで実施されており、多様なコミュニティーが育まれています。

以前、顧客との関係をシームレスにすることが熱烈なファンづくりに必要と書いたことがありますが、「売る」ことから解放されているからこそ、それができるようになり、コミュニティーのファシリテーター役も、気楽に務めることが可能となっています。

自称“世界一面白いお店”「SHOWFIELDS」

これはビジュアルで見ないと良さが分からないので、「プチ・ニューヨーク」の記事をご覧ください。

〈プチ・ニューヨーク / 2019年3月30日〉

ニューヨーク発の店舗で、館内がおとぎ話の世界のようです。「HOUSE OF SHOWFIELDS」と呼ばれる、現役の俳優らが演技を交えてブランド商品を紹介するユニークな取り組みで話題になりました。

新型コロナウィルスが拡大してからは、「ライブコマース」に力を入れ、インフルエンサーが商品を紹介。その場でスムーズに商品ページへ移動することや、購入できる仕組みを整えています。

またライブ視聴者が一人増えるごとに、飢餓で戦う人々に食事を提供する非営利組織「Feeding America」に1ドルを寄付する取り組みを行っており、社会貢献にも意欲的です。

このようにアメリカではRaaSがとても一般的になっています。コロナで加速したオンラインとオフラインの融合(OMO)は、今後は小売の現場で一層求められていきます。

リアルの現場(館)として価値とは何なのか?その上で、オンラインでどんな新しい価値を付加してくのか?この辺の取り組みにいち早く着手し、カタチにしていく小売店舗が今後生き残っていくのでしょう。ぜひ参考にしてみてください。

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