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「革新」を生むチームのつくり方

column vol.956

昨日は「弱さ」を受け入れることが魅力的な自分づくりを行う上でいかに重要かということをお話しいたしましたが

それはチームづくりにおいても同様だと感じています。

今日は予測不能なVUCA時代

変化の激しい世の中において、トレンドが半年も持たないとも言われています。

誰もが皆、成功体験に囚われず常に革新していかなければならないと感じているでしょう。

しかし、個人できることには限界があります。

一方、仲間同士で力を合わせれば、組み合わせ次第で無限の可能性を秘めている。

もしも、お互いの弱さを補い、お互いの強みを活かし合えたとしら、イーロン・マスクのような一人の天才をも凌駕するかもしれないのです。

ということで本日は、そんなチーム論についてお話ししたいと思います。

大切なのは「無知の知」に至ること

今回、そんなチーム論を進めていく前に、お知恵を拝借したい賢者がいらっしゃいますのでご紹介したいと思います。

『異能の掛け算 新規事業のサイエンス』の著者で、「株式会社Sun Asterisk Business」でディベロップメント・セクション・マネージャーを務める、井上一鷹さんです。

〈lifehacker / 2023年3月15日〉

集中力を可視化するメガネ型ウェアラブルデバイス「JINS MEME(ジンズミーム)」、深い集中を促す会員制ソロワーキングスペース「Think Lab(シンクラボ)」などの新規事業を手がけてきた方。

新規事業といえば「才能溢れる天才だからこそできる」というイメージがありますが、それを普通の人でも「チームビルディング」によって成し遂げる

そんなお考えと方法論をお持ちなのです。

では、普通の人でもチームを組んで天才を凌駕するためには、どうすれば良いのか?

まず大切なのが「無知の知」に至ることだと井上さんは指摘されています。

つまり、「知らないこと」を知るということです。

井上さんは新規事業について語られていらっしゃいますが、これはVUCA時代は既存の仕事においても同じで、常に自分が手がけている商品やサービスが時代に取り残されていないかという疑いの目を向けなければなりません。

ただ、個人で考えるだけですとリスクが生じます。

それは一人一人にバイアスがあるからです。

つまり、一人で見た世の中とは、その個人だけの「偏った世界」

人間は性格経験から、自分だけの物差しを持っているので当然です。

一方で、自分の見方、考え方が世の中のど真ん中に感じてしまうのも人間でしょう。

主観はそれはそれで大切な個性ですが、普通の人を自認するなら、やはり客観的な目を加えたいところです。

他人の見方、考え方を確認した上で、自分の見方、考え方を冷静にジャッジしていく。

仲間の力を借りることで、もしかしたら「無知の知」に至るかもしれません。

これが革新の種になるのです。

「仲間の脳」を使って考えることが大事

ここで重要なのは自分と他のメンバーを意識で分けないということです。

しばしば、チームで話を進めると、「どっちが良いこと言うか合戦」が始まってしまいます。

ろくに他のメンバーの話を聞かず、常に「自分が何を言うか」を思案しているムードです。

これだと、チームで協力し合っている意味がありません

チームワークのメリットは「自分の脳を拡張できること」です。

つまり、自分というたった一人の脳だけに頼らず、メンバーみんなの脳を活かし、「個人脳」から「チーム脳」にしていくことで、自身では思いつかなかったようなアイデアや見方ができることに魅力があります。

仲間の脳を使ってバイアスを外し、仲間の脳を使って考えていく

そういう意識が大切なのです。

以前、京都で450年以上の歴史を誇る、懐石料理屋「瓢亭」の15代当主、髙橋義弘さんを取材した際、理想的な「チーム脳」に触れることができました。

老舗の名店であったとしても、伝統を守りながら、時代に合わせて革新していかねば、淘汰されていってしまうわけですが、新しい挑戦が行き過ぎてしまうと、お店の本質から外れ、ファンが離れていってしまう

そうならないように当主は必ず新しい一手を施した際は、お客さまに出す前にお店の仲間に試食してもらい、意見を集約しているそうです。

そうしてたくさんの目(舌)を通して、お店のスタイルに馴染ませていく

お話を伺っていると、お店のメンバー全員で伝統を守っているという気概を感じることができます。

瓢亭という一つの個体(人格)という意識があるからこそ、450年以上もの間、愛され続けてきたということでしょう。

“異能の掛け算” をいかに生み出すか

まずは、「一人でできることはたかが知れている」という個人の弱さを認識し、その上でチームで協力し合う

井上さんはキーワードに「異能の掛け算」という言葉を挙げています。

つまり、さまざまな職種、能力を持った人たちが集まり、自身を強みを活かしあっていくということです。

その際、2つのポイントがあります。

まず1つ目「自分には何ができて(強み)、何を苦手(弱み)とするか」を認識しておくことです。

リーダー(企画の発案者)であれば、そこを起点に最適なチームを築き上げていく

既存のチームであれば、改めてメンバー同士の長短を再認識し合うことが大切です。

スポーツ明確なポジションがあるのは、人は役割がはっきりするとやることに集中できるので、パフォーマンスを発揮しやすくなるからです。

しかし、意外とビジネスシーンにおいては、その役割が曖昧な場合があります。

そこを見直すだけで、チーム力は格段に上がります

そして、次にメンバーの大切にしたいこと得たい成果理解し合います

井上さんは

メディア運営のような事業では、コンテンツを読者に届けたい編集部(Creative)と、売上のKPIを追う営業(Business)ぶつかりがち

と分かりやすい例を挙げてくださっていますが、広告業界でもあるあるです(笑)

スポーツの世界でも、例えばサッカーでは点を取りたいFWDFに対して攻撃に多く参加して欲しいと思うでしょうし、点を失いたくないDFFWに点を取ることばかりを考えずに守備にも力を割いて欲しいと思うわけです。

FWが点を取ったとしても、DFが良い守備をしたから、相手の守備陣形が整う前に、カウンターを仕掛けることができ、MFが精度のパスを出したからこそ、FWが余裕を持ってシュートを打てたという、それはチームプレイの結晶なのです。

それぞれの役割、成果を理解&評価し合うことが、チーム力を高める上で非常に大切

異能の掛け算は、自分と他者をシームレスに捉えて、「I」ではなく「We」で考えることで成り立つのです。

「チームへの貢献」の実感を皆が持てるか

詰まるところ、強いチームをつくる上で一番大切なことが、メンバーそれぞれが「自分はチームに貢献できている」という実感です。

チーム内で競争意識が生まれることは決して悪いことではないですが、個人間の競争に勝つことが主になってしまうと、せっかくチームなのに掛け算にはなりませんし、時に引き算(潰し合い)になってしまう可能性は高い…

「For the team」の精神を持つには、それぞれの活躍どころをはっきりさせることが肝要なのです。

お互いが「役に立っている」という実感があれば、心に余裕が生まれ、相手のことも評価できるようになります。

そうなると尊敬と尊重の良きキャッチボールが生まれるわけです。

ローマ帝国最大のライバルと呼ばれたカルタゴの英雄「ハンニバル」は、歴史学者が理想のリーダー像に挙げる一人ですが、とにかく部下に「この人(組織)は私がいなかったらダメになってしまう」と思わせる天才だったそうです。

もしも、ハンニバルが「オレは凄いんだ〜〜」と自分の能力の高さを部下にアピールしていたら、皆やる気を失っていたかもしれません。

チームは本来メンバー同士の優劣をつけるものではありません

競争心も「自分が一番チームに貢献するぞ〜」のような前向きな競争が最適なのです。

日常生活でもマウンティングしてくる人には批判的な評価をしてしまいますし、自分のことを認めてくれる人にはこちらも評価したくなるもの。

こうした当たり前の真理をチームプレイに反映するためにも、個人の限界を認め合い、お互いの長短を理解し合いながら、活躍どころをはっきりさせて、尊敬・尊重し合う

特にリーダーやリーダーを目指す人は、メンバー同士のそういった意識を上手くリードすることが、革新を生み出すチームづくりの重要なポイントになるはずです。

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