“代替可能” が成長のカギ??
column vol.976
と思われる方もいるでしょう。
確かに「代替不能」であることは良しとされていますが、ここで確認しておきたいのは、代替不能な人材には2つのタイプがいるかと思います。
1つは個性を発揮した唯一無二の人材。
そしてもう1つは業務や人脈を自分だけのものにして、その業務を自分しかできない仕事(聖域)にしてしまうタイプです。
後者の場合、仕事が属人化されることで組織のリスクになりますし、本人も組織も成長できません。
特に今日は変化の激しいVUCA時代。
先ほども述べた通り、囲っている仕事それ自体がなくなるかもしれません。
そうなると…、成長できない、だけでは済まされなくなります…(汗)
ライフハッカーの【「チームに不可欠な存在」が昇進できない理由。代替が利く人間になれ】でも「昇進できない」可能性を指摘しています。
〈Lifehacker / 2023年4月5日〉
「代替が利く」から次に行ける
それはこのような言葉で語られております。
まず、今まで自分がやっていた役割を後輩が担ってくれなければ、自分は次のステージに進めません。
さらに人事面での評価でも、会社は後釜が育っていないのを見ると、「人を育てるのが苦手な社員」と判断してしまいます。
逆に自分の築き上げてきたスキルやノウハウをどんどん後輩に伝えて成長させていけば、「上司に最適な人である」と認識され、昇進のチャンスに恵まれるようになるのです。
よく「1つ上の役職を意識して仕事をしなさい」という教えがありますが、私も若い頃から副社長になるまで、常にそのことを意識してステップアップしてきました。
同じ役職の間でも、前半と後半に分けて、まずは前半でその役職の仕事において成果を出し、後半はどんどん自分のできたことは後輩に回していく。
そうして、空いた時間で次の役職の勉強を始めるわけです。
また、出世のみならず、最近は変化の激しい時代ですので、スキルやノウハウがどんどん変わってしまいます。
アップデートするための学習はもちろんのこと、仕事自体が変容しているので、業務内容に合わせたリスキリングも必要になるわけです。
最近ではジョブ型雇用においてもリスキリングは重要視されるようになっています。
再学習で「自立型キャリアデザイン」へ
リスキリングでポイントになってきているのが、自律型のキャリアデザインです。
22年度にジョブ型の適用範囲を一般社員にも広げた富士通は、会社主導だった人材育成を社員の自主性に任せる方針に転換。
集団研修をやめ、自分でキャリアプランを描きやすくなるよう社員同士が仕事や将来について話し合える場を設けました。
〈noppon.com / 2023年4月5日〉
目標を定めて必要な資格をはっきりさせるのが狙いで、スマホなどで手軽に受けられる講座も提供しているのです。
他にも、全ての正社員のジョブ型移行を進める日立製作所は昨秋、学び直しの支援システムを導入。
社員が登録したスキルや学びたい内容に合わせ、AIが約2万コースの中から最適なプログラムを選んでくれるそうですよ…(驚)
こうして主体的にキャリアデザインを描きながら、必要なスキルやノウハウを身につけていく。
そして、それを周りの社員にも共有していくことで、スキルやノウハウは深度化されます。
なぜなら、勉強において人は教えることで知見が整理でき、より見える化され、より使いこなせるようになるからです。
さらに、他の人も自分と同じことができるようになれば、業務内容を分担できるので、また次の挑戦に進めます。
そうして変化に対応していく。
VUCA時代は、いかに自分の中に「流動性」をつくるかがカギを握るのです。
「次の自分の明確化」を組織が支援
一方で、自律型のキャリアデザインは理想的ではあるものの、それを皆ができるわけではないと感じます。
AIの台頭もあり、キャリア迷子になる人も多く生まれるでしょう。
キャリア迷子になると人はどうなるのか?
そのように主張して、今の仕事に固執してしまいます…
当然、自分の積み上げてきた業務内容や人脈を自分だけのものにしてしまいます。
そうなると、本人も成長できないですし、会社も成長できない…(涙)
ですから、経営陣としてはいかにキャリア迷子を救い、長らく組織で活躍できるステージを社員一人一人に用意できるかがポイントです。
先日、日本の人事部「HRカンファレンス2022-秋-」開催レポート「ミドルシニアが活躍する企業は何が違うのか? NTTコミュニケーションズ、日本マクドナルドのアプローチ」を読んだのですが、2社の中高年社員へのサポートに大きなヒントが詰まっていると思いました。
〈日本の人事部 / 2023年1月13日〉
NTTコミュニケーションズの事例をご紹介すると、同社は50歳になる社員全員にキャリアデザイン研修を行っています。
その上で、研修の1ヵ月後にキャリア面談を行っているのです。
ここで
ということを確認します。
するとおおよそ3つの意思に分かれるとのこと。
①はもはや大丈夫な人たちなので置いておいて、何と②の人たちについては9割の人が「変われている」そうです。
まずは「職場で挨拶をするようにする」という小さな行動変容を求めるなど、それぞれの人のできることを上手く引き出していますし、さらには、その社員の上司に対して理解を促進できています。
面談の後、数ヵ月後に上司にヒアリングをすることによって、変化の経過を観察させるようにしているのですが、結局、本人ががんばっていても周りが気づかなければ意味がありません。
「どう変わろうとしているか」をちゃんと上司が把握し、評価することで、本人も前向きに変化していけるのです。
そして変化のサイクルが生まれれば、その人の意識と行動は好転する。
そして次なる成長に向かっていけるのです。
重要なのは、社員を1つの業務や役割に固執させないようにすること。
次のステージを目指して、抱え込んでいる業務を少しずつ手放し、成長させていくことが大事なのです。
結局のところは会社とは一人一人の社員の総和。
イノベーションを起こせる企業とは、そういった各社員の自発性の積み重ねなのだと思います。
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