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「小さなニーズ」は大きなチャンス

column vol.436

「そもそもマスマーケティングなんて存在しない

Hatena Blogを見ていたら、そんな記事に出会いました。

〈Hatena Blog / 2021年9月25日〉

逆にニッチと思われている一つ一つの一見レアな多様性は、世界的に見ればそもそもマスであり、大きなセグメントと言える。

ほほう…、なかなか面白い論調にどんどん興味津々になっていきます。

この記事は筆者の方が視覚聴覚など多様な障がいを抱える方々に向けて、一過性の国や自治体などの公的な資金ではなく、ちゃんとビジネスとしてお金が回るようになるかについての考えを示したもの。

確かにこの記事を読み進めていくとマスの概念が揺らいできます。

マスが存在しない理由

毎日街で見かけ広告宣伝を大量に目にする乗用車についてもそうです。

国内に12,500万人もいるのに対し、年間430万台しか新車が売れていません。これを数百以上の車種が分け合っている。

そして、缶コーヒーのような兆円規模の飲料セグメントでも、5%ぐらいの人口で市場の8割を占めています。

さらに、家庭用プリンター市場を支えるプリンターのインク消費(出力量)は1%以下の人市場の大半と聞けば、そもそもマスとは何だろう?と思えてきます。

まず、マスマーケティングの幻想は、大量投下の広告宣伝にあるというわけです。

みんな知っている。だからといってみんなが買っているわけではない

ちなみにCM好感度ランキング乗用車唯一トップ10入りしたスズキソリオ(8位)ですが、1月〜6月の新車販売台数が27,251台

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保有台数38万5888台(2019年度)なので、人口対比で考えると、私の記事を読んでいるほとんどの方が、ソリオを買って乗っていないことが予想されます。

突き詰めて考えると、確かにマスって何だろう…?と思ってしまいますね。

disability(障がい)とはリードモデル

一方、disability(障がい)というのはニッチなのか?

例えば、年齢を重ねていくと、四十肩五十肩になって腕が自由に動かなくなるのは日常茶飯事。40歳も過ぎると私の同世代の多くは老眼となり、血管障害を体験する人も少なくはありません。

シニアになると随分の割合の人が白内障を患い、4人に1人は認知症に。いわゆる精神病床の6割シニア層が占めているそうです。

このように、何かしら身体的にか、精神的にか障がいを持つ方のための商品は生み出されるわけで、その特徴的なロールモデルと考えると、マーケティング的にはリードユーザーと定義してもおかしくはありません。

非常に先鋭化された課題(ある種のdisability)を持つニッチ市場向けの開発が大きなマス市場を生み出した典型例として「Dr. Grip」があります。

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「書痙」と呼ばれる速記者代書人文筆家などに見られる職業性痙攣症の一種の方に向けて作られたボールペンですが、その使い心地の良さが一般的にもウケて、1991年に発売されると年間100万本も売れ、大きな反響を呼びました。

つまり、障がいを持っている方に優しい商品は、みんなに優しい商品である可能性が高い。

ダイバーシティ対応は宝の山だ。

という筆者の方のお言葉になるほど納得いたしました。

ニッチな視点から生まれる「複業」

ニッチということで、もう1つ興味深い記事があったので共有いたします。

『出世しなくても、幸せに働けます。 複数の仕事で自分を満たす生き方』の著者であり、複業のエバンジェリスト(伝道者)でもある中村龍太さんは、「価値がない」と思っていたことが、実はビジネスに繋がることもあると語っております。

〈東洋経済オンライン / 2021年8月28日〉

例えば、動画制作について。もともと撮影は好きだけど編集は好きじゃないから複業になるとは思っていなかったそうです。

しかし、自宅周辺をドローンで撮影した動画SNSでアップしたところ、動画を見た知り合いの農家さんが、自分の畑を撮影して欲しいと依頼があり複業に。

週4日は正社員として働いているのと、編集が好きではないというハンデキャップがあるものの、ご本人曰く「ズボラ動画」を求めるニッチな人がいて仕事として成り立っているとのこと。

また、パエリアづくりのワークショップを行っているそうなのですが、回を重ねる度にアウトドアグッズが増えていく状況に気がついた時のこと。

普通に考えれば、余計なコストが増えているとも見られます。

そこで、何か活用できないと考えた結果「〝アウトドア〞全部貸し出しサービス」を思いついたそうです。

中村のお住まいは千葉ののどかな場所。この土地の方々には当たり前の風景ですが、東京の人たちからすれば、家の前に広い敷地がある上に、キャンプグッズもあることは羨ましい限り。

「即席キャンプ場になるのでは?」とひらめき、SNSで告知したところ、依頼がきたため、実際にサービスを始めることに。

自宅の空いている土地私物が、宝に変わった瞬間でした。

私の「無価値」が、誰かの「価値」に

動画の話も即席キャンプも、今まで自分にとっては価値ではないと思っていたことです。

しかし世の中、多様な価値観があります。自分の無価値が、意外と他の人からすると「宝」になることは往々にしてあるということですね。

そういった自分でも気づかなかったビジネスのタネを見つけるためには、中村さんは4つの問いを勧めています。

(1)自分が何に時間を使っているか?
(2)なぜ、自分はそれを続けられるのか?
(3)自分がそれを続けられる環境は、誰もが手にしている環境か?
(4)その環境を求めている人はいるか?

最後の「その環境を求めている人はいるか?」は、自分で考えてもわからない可能性が高いため、SNSなどで発信してみると良いとのこと。

世の中にはさまざまな人がいる。だからこそ、自分の足下にある何の変哲もないものが「青い鳥」になる

これは、まさに先ほどのdisabilityの事例と同じですね。

ダイバーシティ対応は宝の山だ。

SNS時代はよりシームレスに世界中の人たちと繋がることができます。

つまりは、自分ではニッチだと思っていたニーズが大きなマーケットを形成する可能性が高いということです。

自分と異なる価値観多様性を愛することが自らの可能性を広げるチャンスに繋がる

逆に言えば、自分ではニッチだと思っている大好きなことが、実は大きな共感の輪をつくる可能性もある。

つまり、全てのことに宝のタネはあり光をどう当てていくかという視点が大切だということですね。

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