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「低賃金労働」からの卒業 Part 1

column vol.520

毎年この時期になると発表される国税庁「長者番付」

残念ながら私はランクインしませんでしたが、ユニクロ柳井社長のファミリーが上位を独占したことが話題になりましたね。

〈マネーポストWeb / 2021年12月26日〉

1位ソフトバンク孫正義さんで4.9兆円2位柳井正さんで2.4兆円3位はキーエンス名誉会長の滝崎武光さんで8,958億円

我々庶民からすると天文学的な数値です…(汗)

日本全体では30年も賃金が上がらない国と言われ、低賃金労働が問題になっています。

経営を司る人間からすると、当然給与体系の底上げをしたい。今日はその糸口を探っていきたいと思います。

「勤勉さの維持」と「積極な財政政策」がカギ

安倍内閣・内閣官房参与も務めたことのある京都大学大学院藤井聡教授は、日本の労働生産性を向上を図る上で重要なのは、積極的な財政政策だと語ります。

〈bizSPA!フレッシュ / 2021年12月26日〉

(1)プライマリーバランスの黒字化目標を凍結し自由に国債を発行
(2)消費税を減税、ないしは凍結を行う
(3)今コロナで大きく所得を減らしている国民に補償する
(4)日本の未来に必要な政府投資を徹底的に推進する

プライマリーバランス(税収入で国民の生活に必要な支出がまかなえている状態)の黒字化は2018年に2025年度に実現することを目標設定しましたが、コロナの影響で断念

とはいえ、未だ緊縮財政です。

まずは積極な財政政策を展開し、デフレ脱却を実現する。

あとは日本の勤勉さマジメさがあれば、自ずと生産性はうなぎ登りになるというのが藤井さんの理屈です。

つまり、政府主導で「成長」を促す。

一方、成長と聞くと眉をひそめる方は少なくないと思います…。今を「成熟時代」と位置づけ、「脱成長」を支持する考えは当然あります。

もっと言えば、『投資拡大=環境問題の悪化』という方程式を思い浮かべる方も多いでしょう。

それに対しても、藤井教授は

「その積極的な投資を環境問題解消のために使えば良い」

と指摘します。

確かに世界的に見るとグリーンエコノミーは一つの成長戦略として期待されています。

今後は自社の利益社会の利益を重ねたステークホルダー資本主義経済に移り変わると期待されていることに鑑みると、なるほど納得いたします。

政府支出を増やし財政の健全化を図る

この考え方は、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソンさんも同様の見解を示しています。

〈東洋経済オンライン / 2021年10月20日〉

プライマリーバランスの黒字化目標を当面は凍結する。その上で現状と今後の政策のポイントを、以下のようにまとめています。

(1) 社会保障費の増加によって、政府の先行投資が著しく不足している
(2) 生産的政府支出の対GDP比は先進国平均24.4%。日本は10%以下
(3) 生産的政府支出の不足によって、GDPの成長率が低迷している
(4) 結果、財政が悪化している
(5) この状況を正すには、生産的政府支出を大幅に増やすべき
(6) 金額は、最終的に年間数十兆円の規模まで増やすべき
(7) 当面はプライマリーバランスの黒字化の目標は凍結すべき
(8) 新規財政出動は乗数が1以上の元が取れる支出に集中
(9) 財政出動の配分は雇用の量と質を基準にして決定するべき

現状の政府支出は社会保障費などがメインで、「人口減少」と、研究開発、設備投資、人材投資という「3大基礎投資の不足が要因となり、賃金が上昇せず、経済が成長しない状態に陥っています。

この状況から脱却するには3大基礎投資を喚起し、経済を成長させ、その成果で賃金を上昇させるための経済政策に繋げることが必要になるのです。

高齢化の進展で社会保障費の負担が増える中でも、あえて政府支出を増やして投資を喚起し、財政の健全性を示す「借金/GDP」(借金÷GDP)の分母であるGDPを大きくするのは、国益にかなっています。

ただし、積極的とは言っても貴重な財源をどこに投下するかは、考察が必要です。

「雇用の量」+「雇用の質」そして「乗数効果」

その基準として、アトキンソンさんは

(1)雇用の質(賃金水準)
(2)雇用の量

の2つを基軸に挙げています。

日本は2065年までに生産年齢人口が約3,000万人も減少すると予測。

GDPを縮小させることなく、ますます貴重になる人材を、どの業種のどういった企業を中心に配分するかも重要なポイントになります。

労働参加率を低下させることなく、賃金を引き上げる政策が求められるというわけです。

かつてアベノミクスにより労働参加率は史上最高になりましたが、増えた雇用のほとんどは、賃金水準が低いという課題がありました…(汗)

次は「雇用の質」を高めることに焦点を合わせていかなければならないということですね。

財政出動を増やすのであれば、「元が取れる」支出に狙いを定めるケインズ経済学に基づけば、乗数が1以上の支出が条件になります。

1億円の支出の乗数が1.2だった場合、GDPは1億2,000万円に増加。

これなら「政府の借金/GDP」の分子以上に分母が増えることになるので、現在の低い金利を考えれば、政府の借金の対GDP比率は改善します。

あとは、財政支出の狙い先を定めた時に、そこから外れた人たち(分野・企業)は当然生まれてしまうので、イノベーションリスキリングに対するサポートを見える化することが重要です。

要するに「情報の流通(リテラシーの向上)」です。

もちろん、これは民間も含めて社会全体で行わないといけないことです。

今後どのような分野に光があってどのようなスキルを身につけていけば良いかという情報をしっかりと流布していく努力です。

「お金」だけではなく「情報」の流通も大事

既存分野でも、例えば、自動車製造業のトヨタモビリティ会社に変身したり、集英社が単なる出版ではなく『ジャンプ+』を通してクリエイターズプラットフォームを構築したり。

私たちのマーケティング業界も、大手広告代理店シンクタンク化しています。

それぞれの分野のリード企業は、新たな時代に向けて変革を進めているわけですが、中小企業ギリギリの人数ギリギリの予算で経営をまわしているので、改革に向けてのリソースが割けず、このままだと淘汰されていく可能性が高くなります。

本来ならリード企業は業界全体に共生の輪を広げることが理想です。言わばそのような取り組み自体も、“誰一人取り残さない”世界を実現するSDGsの活動になるからです。

それをマスコミも巻き込みながら政府が主導する。

WEF(世界経済フォーラム)の2021年の年次総会でも「政府主導のステークホルダー経済の実現」が謳われていましたが、まさに取引先の企業業界全体に波及した業界革新をデザインしていくことが重要です。

それ無しには、経済成長のための財政政策も多くの人たちにとっての不安・不満に繋がるような気がしてなりません…。

SDGs自体も認知はされているものの、“誰一人取り残さない”世界をなぜつくらなければならないかまでを語れる人はそんなに多くはありません。

次世代へのリテラシーを社会全体で高めていくだけでも、多くの人が前向きに経済活動を継続できるのではないかと感じています。

「お金」だけではなく、希望を示唆する「情報」の流通も大切という話でした。

次に「自助」手段を考える

…とは言うものの…、「公助」「共助」だけを期待していても…ということもありますので、個人(民間)レベルでも「低賃金脱出」の糸口になるような知恵を探ってみたいと思います。

しかし、すでに3,000字に到達してしまいます…。

ということで、続きは明日に回させていただきます。

…長話になって申し訳ございませんが…、ぜひぜひ明日もご覧くださいませ。

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