弱さはきっと “愛らしさ”
column vol.955
と、悩むことはありませんか…?
人生上手くいかないことや、キラキラ人間に対してコンプレックスを抱くことは往々にしてあるかと思います。
しかし、そんな落ち込む瞬間こそ「チャンスタイム」かもしれません。
「弱さ(ダメさ)」は “愛されポイント” でもあると考えているからです。
それを証明するいくつかの事例がありますので、本日は「弱さはきっと “愛らしさ” 」というテーマで話を進めていきたいと思います。
オナラをするロボットが生まれたワケ
まずは最先端テクノロジーの現場から事例をご紹介いたします。
パナソニックは、特に何もしないけど、思わず笑顔にしてくれる不思議なロボットを開発いたしました。
〈Forbes JAPAN / 2023年3月11日〉
名前は「NICOBO(ニコボ)」。
とにかく何もせず、基本的にぼーっと一人で過ごす、そんなロボット。
このようなロボットをなぜパナソニックは生み出したのでしょうか…?
それは同社が、豊橋技術大学でコミュニケーションの認知科学や社会的ロボティクスなどの研究をしている岡田美智男博士の「弱いロボット」という考え方に共感したからです。
弱いロボットとは「周囲を味方にしながら、一定の目的を遂行していく関係論的な行為方略を備えた」ロボットのこと。
例えば、自分でゴミを拾うことはできないのですが、拾いたそうな素振りを人に見せて手助けを上手に引き出し、ゴミを集めるロボットだったり。
モジモジしながら相手が近づくのを待ちティッシュを手渡そうとするティッシュ配りロボットがそうです。
つまり、人間と同じように不完全で、周囲の助けを求めながら特定の仕事を行う「弱さを力にした」ロボットなのです。
それが人とロボットとのコミュニケーションを生み、互いに助け合い学び合える関係を築く。
そんなコンセプトを実現するために開発されたわけです。
人間の本質を見つめ直させる、まさに最先端ロボットなのではないでしょうか?
「不憫さ」が強いシンパシーを生む
続いてはクリエイティブな世界から事例を1つ。
最近、SNSでバズりまくりの人気キャラクターをご存知でしょうか?
その名は「おぱんちゅうさぎ」です。
若者を中心に「不憫で愛らしい」「報われなくてかわいい」などと話題になっているのです。
そんな、おぱんちゅうさぎの作品展示会が今月10日から池袋PARCOでスタートしているのですが、前売り完売の大盛況のようです。
〈日テレNEWS / 2023年3月11日〉
おぱんちゅうさぎは、「なかなか恵まれない。今にも泣きそうだが、ひたむきに健気に生きていく。」がコンセプトで、泣き出しそうなうるうるの瞳に、分厚いくちびる、白いパンツが特徴的なキャラクター。
クリエーターの可哀想に!さんが生みの親なのですが、おぱんちゅうさぎのTwitterのフォロワーは56万以上を誇ります。
展示会の来場者は、キャラクターの魅力をこのように語ります。
そのシーンがこちらです。
…確かに…、愛くるしい…
…思わず好きになっちゃいます。
こうした人気について、作者・可哀想に!さんを担当するキャラクターレーベルの編集者さんは
と語っております。
さらにSNS時代はクリエイター(キャラクター)とユーザーの距離が近いので、友達感覚で応援したいという気持ちが芽生えやすいということでしょう。
この事例からも「応援したい」需要の高さを感じることができるのではないでしょうか?
完成度“30点”を目指し人気TickTokerに
SNSといえば、最近「応援したいおじさんたち」として大人気になっている方々をご存知でしょうか?
警備会社の大京警備保障のおじさん社員さんたちです。
〈日刊SPA! / 2023年3月16日〉
アカウント開設から約3年でフォロワーは290万人超…(驚)
(2023年3月18日時点)
基本的にはTikTokで流行っているダンスなど、既存の人気コンテンツをアレンジして配信しているのですが、なぜここまで人気を博しているのでしょうか?
世代を超えて愛される秘訣を同社代表の櫻井大輔さんは
と語ります。
実際、必死には表現する。
しかし、良い意味で所詮は素人のおじさんたちです。
完成度が高くなるはずがない(笑)
でも、その必死さだったり、ドジっちゃったり、恥じらったり。
それでも、楽しく仲良く遊んだりするおじさんの程よい脱力感が、若者には “かわいい” と映っているのです。
TikTokアカウントの投稿を観ましたが、確かにクセになるほどの「ダメかわいさ」を感じます。
同じおじさんとして、とても勇気をもらえる内容ですので、ぜひ一度観ていただけると幸いです。
〈大京警備保障 / TikTok〉
というように、皆「応援したい」願望を抱えている。
最近の推し活を見ていてもそれは感じますね。
応援の余白をどれだけつくれるのか?
アイドル一つとっても、昔は「完璧さ」「手の届かない存在」でしたが、AKBが「会いに行けるアイドル」を確立し、応援需要の結晶とも呼べる「総選挙」をつくったわけです。
その応援熱を盛り上げる仕組みは、現在のNiziUを始めとするオーディション番組からメジャーデビューするアイドルに引き継がれています。
何でもない普通の子が汗と涙の努力を経てスターになっていく。
その姿にファン心理がどんどん高まっていくわけです。
つまり、「自分ってダメだな…」と落ち込んだ時ほど、周りのみんなは誰も「完璧な自分」を愛したいわけではないと考えてみる。
もちろん、仕事においては30点では済まされないとは思いますが(笑)、完璧を求めて頑張る自分に皆が信頼し、ダメな自分も素直にさらけ出せて愛されていく、というメカニズムは知っておいて損はないでしょう。
そもそも完璧な人間なんていませんし、完璧な人がいたら、私は尊敬はするかもしれませんが、ちょっと怖くて愛せません…(汗)
ということで、人間は良い所も悪い所も、良い瞬間も悪い瞬間も含めて、その人の魅力なのだと思います。
商品づくりにおいても同じです。
昨日ご紹介したドン・キホーテの「ダメ出しの殿堂」もクレームと見ず、「応援」「共創」と見ることでファン心理を高めることができている。
ファンマーケティングの代表格である「よなよなエール(クラフトビール)」の「ヤッホーブルーイング」も、「超宴」という一大イベントを通じて、戦略的にファンが商品に「物申す機会」をつくっている。
ダメな部分を起点としてファンを巻き込み、ファン心理を高めているというわけです。
いかに「応援の余白」を生み出せるのか?
人も、商品も、そこができそうできないキーポイントであるような気がしています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?