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クリスタルパレスがチケット2次流通仲介業者と提携。クラブにとってのシーチケ再流通のメリットとは?【チケット】

※この記事は2017年8月27日執筆記事を再掲したものとなります

イングランドプレミアリーグに所属するクリスタルパレスが、チケット2次流通仲介業者「Twickets」とパートナーシップ契約を締結した。

チケット価格の法外な高騰が問題となっているプレミアリーグ。各クラブも頭を抱えているが、その解決策の意も込めて、クリスタルパレスがプレミアリーグのクラブとしては初めて「Twickets」と提携したことになった。(2部のイングランドチャンピオンシップでは、すでにQPRが提携済み)

このパートナーシップ契約により、クリスタルパレスのシーズンチケットホルダーは、Twicketsが提供するプラットフォーム上で、行けなくなった試合のチケットを他のファンに売ることができる。Twicketsの特徴は、売買されるチケット価格が額面よりも高額にならないことであり、適正価格のチケットがBtoBの2次市場に流通する。そのため、法外な価格のチケットは淘汰され、チケット価格の高騰を是正する効果がある。また、同社がチケット売買の仲介となるため、売り手側・買い手側ともに安心した取引が可能となる。

同プラットフォームでチケットを売却できるのは、シーズンチケットの保有者のみ。また、購入できるのはクラブ会員のみであり、ともにイギリス国内の携帯電話番号を登録しなければ利用できないようだ。限られたユーザーにしか活用できないサービスではあるが、もともとのコンセプトが、「試合に行けなくなったシーズンチケットホルダーの損失をなくしてあげよう」というものであり、決して不特定多数のユーザーがチケット転売によって利益を得ることが意図されているわけではないため、閉じられたユーザーでも目的は果たせるというわけだ。

本サービスは、対象をシーズンチケット保有者のみとしており、クラブ側としてみれば、このチケットが売れようが売れまいが、一見収益は変わらないように思える。それではなぜ、クリスタルパレスはTwicketsと提携などしたのだろうか。

クラブ側のメリットとして考えられるのは、主に3点。

1点目は、転売チケットの価格抑制により、その他スタジアム収益の増加が見込まれること。チケット代金をクラブが望む適正価格に抑えることができるため、買い手側は飲食やグッズなど、スタジアムで消費する余裕が保たれる。ファンをスタジアムに呼び込み、チケット以外の収入で稼ごうというわけだ。もし高騰した価格のチケットを買っていれば、ファンはスタジアムでそれ以外の出費を控えるはずだろう。

2点目は、シーズンチケット保有者が一般より先行して確保している良い席を、他のファンに回せること。臨場感溢れる席で観戦したファンは、自分もシーズンチケットを購入しようかと検討するかもしれない。行けなくなった場合、転売すれば損はしないのであればなおさらだろう。シーズンチケットホルダーの拡大によりスタジアムの入場者数が安定してくると、中長期的にはスポンサー収入など、クラブの重要な財源確保にもつながる。

3点目は、収容率を可能な限り100%へ近づけることで、選手を満員に近いスタジアムでプレーさせられること。スタジアムの雰囲気がパフォーマンスを左右するのは、すでに多くのプロ選手が言及している周知の事実だ。

無駄になりそうなチケットをTwicketsのプラットフォームを通じて市場に再流通させ、観戦者をスタジアムに戻す。チケット以外の飲食やグッズ収入の機会を獲得し、同時に、シーズンチケット購入者を増やし、中長期的なスポンサー収入増加にもつなげる。そして、満員のスタジアムを作り出し、選手のプレーの質やモチベーションを高める。シーズンチケットホルダーのチケットを他のファンに回し、入場者数を維持・増加させることで、このような正のサイクルを回すことが可能となる。

Jリーグでも、セレッソ大阪やFC東京が、チケット2次仲介の世界最大手である「スタブハブ」と提携している。特に、セレッソ大阪は、クリスタルパレスのように、シーズンチケットの転売を公式制度化した。

プロ野球では、前述のスタブハブと北海道日本ハムファイターズや西武ライオンズが提携するなど徐々に浸透してきたが、日本では、まだまだスポーツクラブとチケット2次流通仲介業者との協業には伸びしろがある。

法外な転売を許していれば、得をするのは売り手側だけ。買い手側は余計な出費を強いられ、クラブ側はスタジアム収益の機会損失を被る。一方、クラブとチケット2次仲介事業者が提携して適正価格のチケットを市場に流通させれば、売り手、買い手、クラブの「三方よし」な環境が構築されるのである。

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