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先週から、10万円の特別定額給付金や、フリーランス向けの最大100万円の持続化給付金の申請がスタートしました。「やったぜ!」「助かる!」という人もれば、一部では「余裕がある人は辞退しろ」という声も聞かれます。私は、しっかり受け取ろうと思っています。

こんにちは。舘澤史岳です。フリーランスのライターをしています。WOWOWでドラマ化したこともあるのですが、このコロナ危機の影響もあり、シナリオとコピーは休業状態です。これを機に周囲と適度な社会的距離を取りつつ、その上で「自分はこういう人間です」とアピールする活動に取り組んでいます。面白かったら、ぽちっとしてください。

今日は、タイミングがいいので「お金」の話をします。

経済は、お金の選挙

みなさん、給付金を受け取ったら、どんな使い方をしますか? 『給付金 使い道』で検索して調べたら、「貯蓄・ローン返済」が大多数で、余裕があれば「消費」に回すのが一般的のようです。「どうせ使うなら、好きなお店にお金を落としたい」という声もあちこちに見られました。

私も似たような感じです。定期的に通っていたあの本屋さん、担々麺のお店、蕎麦屋、肉屋、理容室、米屋、緊急事態宣言が出てから全然行けてないけど、大丈夫かな。心配です。

突然ですけど、最近、経済って「お金の選挙だ」と思うようになりました。

私達の世の中は、政治=民主主義、経済=資本主義の二つをベースにしています。民主主義では選挙をしますよね。一人一票ずつ。そして、より多くの得票を得た人が勝つ。資本主義は、それがお金に変わっただけだと思うんです。

「この人いいな」「この人好き」「応援したい」そう思える人に一票を投じて、政治を自分に身近なより良いものにするのと同じように、「この店いいな」「この商品好き」「応援したい」そう思える企業・商品・サービスにお金を投じることで、経済をより良くしていくんです。

何が言いたいかと言うと、投票や消費は私達の意思を表明するための重要な場だということ。何気なくやっている行動でも、それが大きなうねりになって、世の中を形作っているんです。

一極集中は危険・つまらない

何でもそうなんですけど、過度に支持が集まるのって、良くないと思うんです。バランスが悪いというか。「これどう思う?」って聞いた時に、意見・評価が分かれるのが当たり前で。その中で、「私はこう思う」「僕はこうだな」って、みんなでわいわいやるのが楽しいわけで。それを「お前は黙ってろ」「あっち行ってろ」的に、マジョリティがマイノリティを駆逐していくのって、見ていて気持ちいいものじゃありません。

でも、残念なことに、政治でも経済でも、今、そういう状況が続いています。政治は圧倒的な投票率の低さと、もともとの強固な支持基盤に支えられて、選挙のたびに、安倍政権が連戦連勝を繰り返してきました。政治家にとって一番恐ろしいはずの政権交代や落選のリスクがほとんどないわけですから、まあ、好き勝手やります。ぶっちゃけ安倍政権でなくても、ゆるみが出て当たり前だと思います。

経済もそれと同じです。お金を使う時、どういう基準でお金を使うかというと、今、多くの人が「コストパフォーマンス(コスパ)」を念頭に置いています。たとえば、「安さ」「品質」「早さ」などです。逆に、「それ以外に何があるの?」と言う人もいるかもしれません。

でも、好きなものを買う時は、たぶん、コスパなんか意識してないと思うんですよね。最小限の努力で、最大限の成果を得る、それがコスパなんですけど、むしろ好きなものに対しては、その逆をいってると思うんです。私で言いうと、妻に「そんなものに、そんなに時間とお金使ってバカじゃないの」って言われながら、NBAグッズを買ったりしてるわけです。

採算度外視で、存在してくれるだけでありがたい。本当は、そう思えるものがこの世にあること自体が既に幸せなんですけど、好きなもの以外に関すると、途端に「この店よりあっちの店の方が安いな」「あっちよりも、こっちの方が早いな」とか、コスパしか考えなくなっちゃう。いかに自分が損をしないか。それが今のスタンダードな基準です。

その結果、どのようなことが起こっているか? 答えが知りたかったら、国道を延々走らせて、地方に向かってみるといいと思います。北でも、南でも、東でも、西でも。どこへ行っても風景はほとんど一緒です。コンビニも、飲食店も、アパレルショップも、本屋も、リサイクルショップも、名前の知れた巨大な資本を持つチェーン店ばかりです。

おそらく10年、20年前は全然違った風景だったと思います。でも、「コスパ」だけを追い求めた結果、それに応えられない酒屋、本屋、雑貨屋、肉屋、魚屋…個人店・小さなお店は軒並み淘汰されたのです。スケールメリットで、いつでもどこでもコスパを提供できるチェーン店だけが残ったのです。

「それの何が悪いんだ」「それだって立派な経済活動だろ」「弱肉強食なんだからしょうがない」と言う方もいるかもしれません。私も別に争い自体を否定するつもりはありません。チェーン店だって、あればあったでいいですよ。ただ、その結果、残されるものが全部同じというのはまずいと思います。

実際、地方でこういう話をよく聞きます。ある時、大型のショッピングモールができた。そのせいで、地元の商店街が全部潰れた。その、数年後、ショッピングモールが不採算になって撤退した。結局、何も残らなかった。これ、まずいですよね。それで本当にコスパがいいと言えるのか? 今はいいかもしれないけど、長期間で見たら、えらい損をしてるんじゃないのか? 何より、つまらないじゃないですか。どこへ行っても同じ景色しかない世の中なんて。

推しメン、推しテン

もちろん、だからと言って「巨大資本を利用するな」とか乱暴なことは言えません。選挙ですから。そんなのナンセンスです。結局のところ、一人ひとり、お金を落とすなら、どこのお店に落としたいかって話だと思うんです。

みなさんもやってますよね。好きなブランドを買う。好きなアミューズメントパークに行く。好きなミュージシャンのライブに行く。採算度外視で。AKBの総選挙で言うところの「押しメンを買い支える」みたいな感じの「推しテン」。今、私が言っているのは、そういう趣味・嗜好に限らず、食料品や日用品も「買い支え」の対象に含まれるというだけのことです。

私の場合、一番大切にしているのは本です。便利なAmazonは最後の手段にして、できるだけ本屋で買うようにしています。本屋が好きなんですよね。緊急事態宣言下で色んなお店が閉まってしまいましたが、そんな中、本屋だけ開いてるのを見つけて、とても勇気づけられました。だから本屋なら、店がどんな店であれ無条件で消費。

「安い」「上手い」「早い」はあまり問いません。大事にしてるのは「小さい」「近い」「感じがいい」など。本当は欲しいものがあれば、文房具は文房具屋、お菓子はお菓子屋、お肉はお肉屋、魚は魚屋、惣菜は惣菜屋…なんて感じで、本当はもっと積極的に個人店や小さいお店を支持していきたいのですが、なかなかその対象が見つかりません。最近って、個人店って本当に、ないんです。

せめて、消極的でもいいから何かできることはないかと考え、3年くらい前から、「巨大資本を避ける」という意味で、コンビニの利用をやめました。ファストフードは、子供達の関係でやむを得ず利用することはありますが、それでもできるだけ利用しないようにしています。

特にコンビニに関しては、後付けで調べたところ、色々問題が多いみたいです。高齢化のため24時間営業を辞めたいというフランチャイズを「違約金取るぞ」と脅しつけたり、限られたエリア内にわざと同じフランチャイズをいくつも出店させて、売上を競わせたり……。私にとって消費は「支援する」という意思表示なので、とても買い物する気になれません。

昨年、私が常駐する日本橋近くのコンビニで、オーナーが失踪騒ぎを起こして、店が潰れるという事件がありました。便利さだけを追求してきたけれど、その見えない部分で苦しんでいる人がいる。店跡に無数の花が飾られているのを見た時は、色々と考えさせられるものがありました。

もちろん、すべてのコンビニがそうだとは言いません。フランチャイズを大切にしているところもあるとは思います。中には、場所柄、コンビニという位置づけを超えて、地域に欠かせないお店って言うのもあると思います。私だってむしろ、そういうコンビニだったら、がんがん買い物行きたいです。

お金には名前が書いてある

そうは言っても、「やっぱりコスパでしょ」という人もいると思います。否定はしません。私だって、偉そうなことを言ってる割に、消費の大部分を占める日用品に関しては少しでも安いスーパーに行っちゃいます。しょうがない部分はあります。でも、価格だけじゃなくて、できるだけ、「これはお金を使うに値するかどうか」頭の片隅に置くようにしています。

選挙もそうなんですけど、消費をする上で「自分ごときが、何をどう意思表示しようが、何の影響もない」というのは考えないようにしましょう。そういう方は、お金には、自分の名前が書いてある。一回、それぐらいの自覚を持って、お金を使ってみてください。その上で、本当にそこにお金出しちゃっていいのかなとか、ケチっていいのかって考えるんです。

お金を使うと、その店・商品・サービスについてあなたは「いいね」することになります。SNSと同じように、その店はそれに勇気付けられます。もしくは、承認されたと思います。他の人達はあなたの「いいね」を見て、つられて「いいね」をしたりします。その店の実態とは別に、そうやってイメージは形作られています。

お金は自分だけのCLOSEなものではなくて、地域・社会を含めた、もっとOPENなものです。それで動くものもあれば、その裏側で止まるもの、消えるものがあります。

あなたが住む街角に、小さなフレンチレストランがあります。今月できたばかりのお店です。若い夫婦が始めました。旦那さんは少し寡黙ですが、シェフとしての腕前は確かです。奥さんはとても愛想が良く、夫婦はいいコンビです。期待に胸を膨らませての出店でしたが、あいにくのコロナ危機の真っただ中、逆風の船出となってしまいました。あなたは、テイクアウトのお弁当を一つ買います。その時、あなたが支払うお金は、きっと額面以上の価値があります。「ありがとう」とか「がんばって」とか、そういうメッセージも込められているはずです。

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