春の地
地面の下
2021年4月4日、二十四節気が「春分」→「清明」になりました。この日、中国大陸やその風習をつぐ沖縄では、人々が墓掃除や墓参りをして先祖をかえりみ、野山で遊ぶと言います。
沖縄では「シーミー(清明)」と言いますね。お墓に親族一同集まって、酒やお重を広げ、先祖と共食共宴し一日を過ごすんだそうです。
暖かな春風が吹いて空気が入れ替わって新鮮になり、天地明るく清らかになるから「清明」。あわせて恵みの雨が降り始めて地へ浸み込み、いよいよ生命が増殖し始めます。
「シーミー」を通して、墓の下、地の下にいるだろう、またこの地を耕してきた先祖を思い浮かべながら、私たちの新しい豊かな年を約束してもらうのは、至極当然のことだったのかもしれません。
春を呼ぶ
今年は東北でもすでに桜満開。以前はゴールデンウィーク前後が花見頃で、並行して各集落の鎮守の祭りが開かれている印象でした。
去年のこの頃にはもう新型コロナの脅威が全国響き渡っていましたから、祭りの中止報が続出、それから一年いまだに再開の目処が立っていないところがほとんどです。
”東北のもの”たちは、冷たい銀世界の下に籠り、この生命の爆発する春を確実につかむための準備を重ね、その五感に触れ始めた瞬間を狙って、踊り、音楽を奏でて”春”を呼び込んできたのだと、春の芸能や祭りのなんともいえない伸びやかさ、ハレバレさを見ると、思うのです。
桜の木の下、剣舞(けんばい)の足踏みの音。
浜におり、暖かな海に浸かる神輿。
新緑につつまれた神社で、長寿やこれから始まる農作業がうまくいくようにと願う延年(えんねん)の舞(写真:小迫の延年 宮城県栗原市金成町白山神社 4月第1日曜)。
元気で汗を流してかせぐぞ、山の恵み海の恵みを頂戴して生きていくぞという決心を感じる、芸能の春です。(しかし、東北では10年経った今でも、山菜や獣を頂くことが規制され、無用の処分がなされていることも忘れないでください)
いつしかシシの日
4月4日が #シシの日 といつしか呼ばれるようになりました。「シシ」「獅子」もようやくメジャーになったんだなあと、この20年近くまがりなりにも郷土芸能界に身を置いてきたものとして、感慨深く感じています。
十数年前、どんなにシシを踊ろうとも、周りには同年代も、面白がってくれそうな人もいませんでした。他団体との交流や情報交換・発信の術もなし。とても孤独だった(と勝手に思い込んでいた)のを覚えています。
今日のSNSなどで #シシの日 の文字やコメント、全国各地のシシの写真が飛び交って、語り合おう、知ろう、知ってもらおう、と盛り上がっているのを見て、ああシシの春だなあとしみじみ思いました。
それぞれの地で、歴史や意義や異なりますが、そのシシの芸を生み出し伝えてきた人がいて、私たちは今その繋ぎ目で、解釈して次に伝える、これは共通の思いであってほしいものです。地の下の人たちが、自分と繋がっていること、その人たちの思いや芸や技の上に私たちがいること、忘れないよう。
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このnoteではなるべく、月や太陽の動きで刻々と変化する自然や人のくらしを感じ忘れがちな私たちを、かえりみるための”暦”の補助になるよう、書いていけたらなと思っています。
昨年の縦糸横糸合同会社の暦、なぜか365日ありませんでした。現代のスピードに呑まれすぎず月・太陽を感じながら過ごせるよう、新年度もどうぞよろしくお願いいたします。
縦糸横糸合同会社