文具王の矜持が凝縮された一冊『文房具語辞典』(誠文堂新光社)


 文房具について少しでも深く関心を持とうとした場合には、文具王の名を必ず目にすることになるはずだ。

 それは端的に言えば、OKB総選挙であり、「ブング・ジャム」での活動とイベントであり、あるいは各種文具イベントでの登壇におけるトークとパフォーマンスだ。筆者も一度、新宿高島屋でのそれを拝聴したことがある。

 そのほか、文具王手帳や文具王バッグ、あるいはAccessNotebookといったもろもろのプロダクトもあり、書いていて実に驚くべき事を為されているのだなとあらためて感心するしだいではある。開発や販売、マーケティングなどもメーカーとして経験し、さらに今も上述の各種イベントの先頭に立つ。

 その文具王が文房具関連のキーワードについて一冊にまとめた本を書いた。『文房具語辞典』(誠文堂新光社)だ。その名の通り文字通り、文房具に関連する各種のキーワードを一冊にまとめた書籍で、とりたてて派手なところはない。一番派手な表紙のイメージも、実は文房具のカテゴリーに含まれる各種アイテムが過不足なくちりばめられており、きちんと中身が表現されている。
 で、この『文房具語辞典』、一言で言えば恐るべき本だ。ぱっと見は、各種文房具の知識を手軽に読むことのできる楽しい本である。そのことも間違いではないが、その裏にほの見えるのは、文具王の王たる矜持、ノブレスオブリージュではないか。
 文具の世界をあらゆる角度から見てきた著者が、文房具の各種アイテムはもちろん、関連するキーワードやものの作られ方の工夫の俗称やその由来などが最大数百字程度で簡潔にまとめられている。
 で、項目一つ一つをずっと読んでいくと、文具王本人の中にある、文房具というツールのジャンルに関する膨大な知識が感じられるのだ。それは、巻末にあげられたおびただしい参考書籍のタイトルがあるからだけではない。
 キーワードのそれぞれが、俗説や通説に触れつつも本当はなにかということを基本的なスタンスとして書かれていることが伝わってくる。
 これこそが、王の王たるゆえんであり、一種のノブレスオブリージュではないだろうか。

 個人的な事を付け加えさせてもらえれば、『手帳術ってなんだ』(BUN2)という電子書籍(正続合計3巻)では、納富康邦氏も挟んで、3回鼎談をやった。また、9名のISOT文具PR委員の一員として、委員長たる文具王と一緒にやらせていただいている。『文房具語辞典』にも一項目として登場している。P109、「立つペンケース」と「田中経人」の間だ。お手元に同書がある方は暇なときにでも確認してみてください。

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本文の一部。こんな遊び(「ノンブル」という項目を見開きの右下にきちんとくるように、項目を調整)がそこここにあり、またそれを成立させるための編集者の努力を思うと頭が下がる。遊びと書いたが、実用でもある。

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