装震拳士グラライザー_設定集_16_

ウェイクアップ・クロノス Part9 #刻命クロノ

刻命部隊クロノソルジャー
第1話「ウェイクアップ・クロノス」

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前回のあらすじ
 ここは常夜の呪いがかけられた日本。クロノレッドこと鳥居夏彦が命を賭して守った少年・暁 一希(イッキ)の目の前で、刻命戦隊クロノソルジャーと怪人ヤミヨの総力戦がはじまった。
 ヤミヨの行使する数百体の雑兵・暗鬼たちを前に臆すことなく正面突破する一同。しかし、怪人幹部の圧倒的な力を前に、次第に追い込まれてゆく。そんな時、凄まじいエンジン音と共に現れたのは──?

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 その瞬間、ヘッドライトの猛烈な光が僕らを照らす。

「こ、今度はなに……!?」

 僕の呟きは、キュルキュルキュルというタイヤの音で掻き消された。

 姿を現したのは車だった。それも、とてつもなく大きな。それは付近の暗鬼たちを轢き潰しながら、炎の軌跡を残してドリフトスピン。ベゼルとクロノグリーンが跳んで逃げる中、僕らの眼前で停止した。

 月明かりを浴びて、鮮烈な赤色に輝くスーパーカー。通常の4倍ほどはある威容が、戦場を威圧する。

「おやおやおやぁ? これはこれは! クロノレッドの車じゃあないか!」

 リューズが楽しそうな声をあげる中、スーパーカーのボンネット、その一部がどんでん返しのように回転する。

「あっ!?」

 その光景を見て真っ先に声をあげたのは、僕の隣にいるモヨコちゃんだった。彼女は僕とユーリの襟首を引っ張りつつ、クロノソルジャーのメンバーに指示を飛ばす。

「やばい、総員伏せろ!」

 その言葉が終わるのと、ほぼ同時に。

 どんでん返しして現れた二丁のガトリング銃が、火を吹いた。

『ぶっ飛べッスーーーーッッッ!!!」

 スピーカー越しの怒声とともに、ガトリング銃が弾丸をばら撒く! でたらめに首を振りながら掃射される弾丸に、暗鬼たちはなす術もなく消滅。ヤミヨの幹部もまた防御と回避を迫られ、引き下がる。

 その最中、スーパーカーの屋根が、ガポリと音を立てて開いた。

 そして中から鋼鉄のロボットアームが何本か生えたかと思えば、僕を、ユーリを、モヨコちゃんを、そしてクロノソルジャーのメンバーを摘み上げ、出てきた穴に引き込んでいく。

「うおっ!?」「わっ!?」「ちょっ」「どあーっ!?」

 ゴミを放り投げるかの如く、クロノソルジャーの面々とモヨコちゃんはぽいっと穴に放り込まれてゆく。一方、僕とユーリを掴むアームだけは僕らを保持したまま、ゆっくりと屋根内に戻っていった。

『ピックアップおしまい! 撤退ッス!』

 外部スピーカーから声がして、同時に加速度が僕らを襲った。撤退の言葉の通り、スーパーカーがタイヤを空転させながら、全速力で走り始めたのだ。

 揺れを感じながら、ロボットアームが僕らを下ろす。あたりの様子を見て、ユーリが歓声を上げた。

「わー!」

「こ、これは……」

 そこは、コクピットのようだった。

 広さは畳2畳ほどか。正面にある三面鏡のような配置の大型モニターには、周囲の様子が映し出されている(今は街中を走り去る真っ最中だ)

 その手前にはたくさんのボタンや計器な並んだコンソールがあり、さらにその前には大きな椅子。

 そこには白衣を着た女の人が座っている。そしてその周りには、クロノソルジャーの4人が壁に押し付けられるようにぎゅむっと収まっていた。ちなみに変身は解除されている。

「せ……狭い……」

「おい、もう少し丁寧にだな……」

「文句を言わない! まったくもう……!」

 抗議の声を上げるハルさんとメガネさんを、コクピットの女性はピシャリと切って捨てた。その声は、先程スピーカーから聞こえたのと同じだ。

 そんな彼女の真上にいるモヨコちゃん(そう、真上だ。椅子の背もたれに猫みたいに座っている)が声をあげた。

「こらミカ! 我々に撤退の文字はないと言ってるだろうか!」

「それは博士の辞書が不良品なだけッスよ!」

「しのごの言うな! 我々が退けば、それだけ被害が広がるんだぞ!?」

「クロノソルジャーが死んだらもっと被害が広がります! 幹部勢揃いしてて勝てるわけないでしょ!」

「勝てる! いや、勝つのだ!」

「なんでそんな脳筋なんスかもーー!!」

「え、ええと……?」

「あ、イッキくん。怪我はない?」

 ギャンギャンと言い合いをする二人を見て立ち尽くす僕に、ノゾミさんが声をかけてくれた。

「あ、はい。大丈夫です……けど。なにがなにやら……」

「あはは。まず彼女は、三日星弥生さん。モヨコちゃんの助手。それで、ここは……夏彦くんのクロノモービルの、コクピットだね」

「夏彦さんの……」

「メンテナンス中のを引っ張り出して、無理矢理動かしたんスよ」

 口を挟んだのは件の助手・ミカさんだ。さらにその横から、モヨコちゃんが声をあげる。

「本来はその認証機能ゆえに夏彦しか動かせないのだが、メンテの間は認証オフになってるからな! セキュリティホールをついた見事なハッキングだ! 訴えるぞ!」

「ンなめちゃくちゃな──」

 ミカさんが言い返そうとした、その時だった。

 ディスプレイに大きく[caution]の文字が浮かぶ。そして三面鏡のうち一部が、車両後方のカメラ映像に切り替わった。

「「げっ……」」

 ミカさんとモヨコちゃんの声が、ハモった。

 そこに映っていたのは、ギリシャ彫刻の如き怪人・テーカクの姿。

 そいつは10階建てのビルに比肩するほど巨大化し、僕らを追いかけてきていた。

(つづく)


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