21XX年プロポーズの旅 (1)

 ──付き合って2年の記念日に、ちょっと良いところに旅行に行こう。

 そんな提案をきっかけに、僕らは月への小旅行に出ることになった。
 この旅で、僕はプロポーズする。最高のタイミングで晴れの日を迎えられるよう、念入りに準備した。

「…はずだったのになぁ」
「あぁ? なに言ってんだおま゛ッ!?」
「逃げるよ、リカコ!」
 僕は目の前にいた黒服を殴り倒し、彼女の手を取って走り出した。

「おい逃げたぞ!」「殺せ!」
 黒服達の怒号を置き去りに、星間ターミナルを走る。

「ちょっとテツ、またなにかやったの!?」
「なんにもしてない! 立ってただけ!」

 僕は必死で誤魔化した。
 彼らは、プロポーズ用の指輪の元の持ち主というか…まぁそういう感じだ。でもそれを彼女に悟られちゃダメ。
 指輪の存在は絶対に秘密! なんてったってサプライズなんだから!

「大丈夫、君は僕が守るから!」

 彼女を両手でお姫様抱っこして、僕は残った6本の足で全力疾走を始めた。

(つづく)

🍑 2018.11.19連載開始 🍑


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