ていたらくマガジンズ__44_

碧空戦士アマガサ 第3話「マーベラス・スピリッツ」 エピローグ

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前回までのあらすじ
 天気雨を浴びた者の感情を強制的に共有する能力を持つ雨狐、<つたう>。その怪人は<カミサマの欠片>なるモノを噛み砕き、黒き大蛇へと姿を変える。
 増幅したその能力に追い詰められたアマガサと晴香はであったが、ブチキレたタキが事態を打開。大蛇<つたう>を見事撃破した!

エピローグ

「湊斗、醤油とってくれ」

「はーい」

『サッパリテレビ! 本日のゲストはー!?』

 ずんちゃんずんちゃん。

 朝の情報番組の賑やかな音声がダイニングを満たし、湊斗たちはそれを聞き流しながら朝食を口に運ぶ。そうこうしているうちにタキが味噌汁を啜ってムセて、晴香が「お前マジやめろ汚ねぇな!?」とキレている。

 そんな、穏やかで平和な団欒のひと時がしばし続き──

 バンっ!

「ぐっっっもーにんえぶりわん! 今日も一日頑ブゴアッ!?」

 ダイニングに現れたその男──マーベラス河本は、晴香がフリスビーの如く投げ放ったお盆を眉間に喰らい、撃沈した。

「痛っててて……ちょっと、晴香? マイスイート晴香ちゃん?」

「軽々しく名前を呼ぶな」

 頭を押さえながらヨロヨロと立ち上がった河本を睨み、晴香は言葉を続ける。

「だいたいお前なんで当たり前のようにここにいるんだ。家に帰れ」

「仕方ないじゃーん! 君らが採石場で竜巻に巻き込まれたとか言われてさ!? そんで丸一日寝ててさ!? それは心配しちゃうって! パパだもの!」

「今更父親ヅラすんな。殺すぞ」

 晴香は冷たく言い放ち、味噌汁をひと啜る──

 湊斗はそんな様子を呆れた表情で眺めつつ、隣にいるタキに小声で話しかけた。

「やっぱまだ、仲直りはできないっぽいね」

「そうだねぇ。ああでもほら、あれ」

 言いながらタキが指さす先には、伏せたままの茶碗と箸、そして湯気のたった味噌汁。先ほどタキがよそったものだ。

「ったく……」

 湊斗がそちらを見たとき、ちょうど晴香は口論をやめ──その茶碗の方を指さして。

「とりあえず食うならさっさと食え。味噌汁が冷めるだろ」

 ぶっきらぼうに、そう言った。

 その瞬間、マーベラス河本は花が咲いたような笑顔になる。

「い、いいの!? 食べてっていいの!? 追い出さないの!?」

「あん? 追い出してほしいなら追い出すぞオラ」

「ごごごごめんそんなことない!」

 ギャーギャーと喚く親子の様子を見て、タキと湊斗は顔を見合わせて笑いあった。

「ね? ほんのちょっとだけど、前進」

「確かに。大きな一歩かも」

 などと言っている間に、マーベラス河本は食卓につき──

「やったー!」

 唐突に叫んだ。

「喧しいぞ元春。飯くらい静かに食え」

 今度は光晴がオシボリを投げつけるが、当の本人には効果なしだ。

「だって父ちゃん! 晴香が! 晴香がご飯一緒に!」

「だから声がデカいと言うとるんだ!」

「いちいち騒ぐなクソ親父!」

 そうして親子三代でギャーギャーと騒ぐ様子を見ながら湊斗は笑い──そしてぽそりと、呟いた。

「……家族、か」

 ──あんたは逃げなさい!

 ──お兄ちゃんは、私が守るよ

 ──お前はまだ間に合う! 行けェッ!

「ん、湊斗くんなんか言った?」

「ん、いや、なんでもないよ」

 頭に過ぎったそれをかき消して、タキは湊斗に微笑みかける。首を傾げたタキに向かって、マーベラス河本が叫んだ。

「おかわりィーッ!」

「あ、はいはい今すぐ」

「お前米粒飛ばすなバカ! タキ! こんなやつの分よそってやる必要ねーぞ!」

 そんなやり取りに、湊斗はカラカサと一瞬目を合わせ──ふっと笑って、呟いた。

「家族、か」

『悪くないもんだねぇ』

「そうだね」

 カラカサの言葉に、湊斗は小さく頷いた。

 河崎道場の朝食は、賑やかに続く。湊斗は茶碗を空にして、「俺もお代わり!」と声をあげるのだった。

 …………その後、河本が熱々のお茶を零して、浴びたカラカサが悲鳴をあげるのだが──それはまた、別の話。

碧空戦士アマガサ
第3話『マーベラス・スピリッツ』 おわり

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