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8月3日のアルクトゥルス

 通学路に宇宙飛行士がいた。第一発見者は僕とハモ爺と、その愛犬ヒューゴだった。

 彼の宇宙服は破れてないのが不思議なくらい汚れていた。ところどころ苔むしているし、身体中に謎の鉱石が張り付いている。それは日光を反射して、ミラーボールのような光を道路に落としていた。

 宇宙飛行士は木の枝で指揮者のマネをしていたけれど、ヒューゴがひと吠えしたら電柱の陰に隠れてしまった。背中の鞄(?)から、ピピピピピピと音が出ていた。ヒューゴがまた吠えた。彼は電柱の上に逃げて、降りてこなくなった。

 翌日、宇宙飛行士はまた通学路にいた。周りに牛がたくさんいて、彼はそれらを撫でたりエサをやったりしていた。

 僕が声をかけると、彼はふわっと浮いて近づいてきて、ピ、ピ、ピと音を発した。その音に続いて、彼のヘッドライトがバッと輝いた。次の瞬間、牛たちが消えていた。メットのせいで顔は見えないけど、彼はなんだか得意げに見えた。

 その次の日、宇宙飛行士は公園のベンチに居た。僕が隣に座ると、彼はピピーと音を発した。「月に兎は居るの?」「ピピピピ」「じゃあ怪獣は?」「ピピピピ」「ロケット作れる?」「ピピピー」気づけば何時間も話し込んでいた。

 宇宙飛行士のことがママにバレたのは、その翌日のことだった。ママはホウキを振り回しながら、ピビピビピと音を上げる彼を追い回した。「こいつか!」と叫ぶ姿が怖くって、僕はひたすら震えていた。

 宇宙飛行士禁止令が出た。隠しごとの罰として、僕は部屋に閉じ込められた。頬が痛い。次の日もその次の日も、僕は部屋を出られなかった。ドアには鍵がかかっていた。

 さらに翌日。「ピピ」という音が聞こえて、僕は窓の外を見た。

 家の前で、宇宙飛行士がたくさんの牛と共にフォークダンスを踊っていた。BGMが1周するたび、牛が増えていく。なんて自由で、楽しそうなんだろう。僕が眠るまで、彼らは踊っていた。

 翌日、僕は部屋を抜け出すことを決めた。

(つづく/800字)

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