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21XX年プロポーズの旅 (7)

(承前)

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 ──警告。機体温度が上昇。お客様の体調に異常をきたす場合があります。警告。気体温度が上昇……

 コクピットにはアラートが鳴り続けている。僕らの乗る星間バスは、ついさっき第三宇宙速度の1.5倍速で火星大気圏を飛び出した。そのままスピードを落とすことなく、月へと向かって一直線に向かっていく。

「ローラ。このままできるだけ速度を落とさず、月まで最短距離で向かってくれ」
『承知しました』
「ローラちゃん。この警報オフにできる?」
『可能です』

 星間バスの制御AI"ローラ"は僕の指示とリカコの指示を忠実に守ってくれる。ハッキングや不正制御の対策をしっかり固めていたはずのAIも、僕の手にかかればこんなものだ。

「さて、と……あと半日くらいかな」
「なんとか間に合いそうね」

 星間バスターミナルのセキュリティはかなり厳重で、破るのに1日掛かってしまった。コンピュータに負荷を掛けすぎて火を噴いたときはマジで焦ったけれど、なんとかなったので結果オーライだ。

 紅茶でも淹れようと、僕が立ち上がったそのときだった。

 ガグオンッ

「のわっ!?」「なに!?」
 船体が大きく揺れた。なにかが衝突したようだ。続いてドカドカと足音が響き、コクピットの扉が荒々しく開く。

「動くな!」

 雪崩込んできた兵士たちの先頭、いかつい白髪の男が、左腕のガトリング義手を僕らに突きつけた。
「……これまたえらい大物が出てきたなぁ」

 僕は冷や汗を垂らし、軽口を叩く。兵士たちの中心にいる彼は、"王国"の司令官──アーサーと並び宇宙にその名を轟かす地球人、ガラハッド!
 どうやら宇宙船ごと星間バスに突っ込んで、そのまま乗り込んできたらしい。なんてメチャクチャな。

 僕らは両手を挙げておとなしくする。
「それにしても……なんで警報鳴らなかったんだろ」
「あー……さっきミュートしちゃったから?」
「あー……」

「必要以上に口を開くな。撃ち殺すぞ」

 ガラハッドが僕にガトリング義手を向けた。それは宇宙船の外壁すら余裕で破壊してみせるという。彼の後ろには6名の"王国"兵がおり、僕とリカコに照準を合わせている。

「貴様らを月に行かせるわけにはいかん。まずはムーンフォース──」
「あ! あー! あー!」
「なんだ?」
 指輪の存在を誤魔化すために叫んだ僕を見て、ガラハッドが首を傾げた時、僕の作戦は始まった。

 ──彼らは気づいていなかった。僕が7本足になっていたことに!

(つづく)

続き


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