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大杉泉『ベンチャー企業・中小企業のための監査役・監査等委員の教科書』


監査役ニュース」というアカウント名でTwitterをやられている著者による、ベンチャー企業・中小企業の監査役・監査等委員の実務に関する教科書。

まず、教科書としては、網羅的でありつつ、ページ数が少ない点が魅力的です。

また、ベンチャー企業の特殊性に配慮した記載が随所に散りばめられている点が有益です。例えば、監査役からみた大企業とベンチャー企業・中小企業とのギャップとして、

・意思決定スピードが最優先
・情報は向こうからは来ない
・社内の階層が少ない
・特定人物に依存していることが多い
・役員・従業員の「当たり前」がそれぞれ違う
・前例がない、ルールが存在しないことを行うことがある

等の点を挙げて、監査役としての留意点や考え方について言及されています。

従来、監査役・監査等委員の教科書というと、どうしても大企業の制度設計を前提とした説明をしたうえで、例外的な位置づけでベンチャー・中小企業の監査役・監査等委員についても解説がなされることが一般的でした。

しかし、本書はベンチャー・中小企業の監査役・監査等委員の実務にフォーカスされている点で、ベンチャー・中小企業の監査役・監査等委員として抑えておくべき点が過不足なく記載されている印象です(もちろん、IPOを目指す以上、上場企業の監査実務についても抑えておくべきではあります)。

情報収集手段として「SNSの活用」や「仲の良い従業員を沢山作る」といった記述も、Twitterを活用されている著者ならではの身近さを感じさせるアドバイスで、従来のこの手の本になかった情報と言えるでしょう。

監査役や監査等委員に関する本はそこまで多くありませんが、個人的には、導入として本書を、より詳細を調べたい場合には、日比谷パーク法律事務所の先生方が書かれている『ガイダンス 監査役・監査役会の実務』があれば十分かなという気がしています。




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