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たった1本の恋愛映画


わたしは映画、海外ドラマ好きで、年間100作品以上は観てると思う


わたしに、好きな映画のジャンルは?と聞いてくれる人がいる どんなジャンルでも観るけれど、恋愛映画とSFファンタジーだけは苦手。と答える 深い説明はしないが、現実味のない情景であったり、感動を押し付けられるような作品は、無意識のうちに避けているからかもしれない


ヒューマンドラマや例えサスペンスであっても感動は生まれるし、考えさせられることがある そんな瞬間を迎えられるから、映画やドラマが自分の生活になくてはならないものとして長く君臨している事由なのだと思う

ほとんど恋愛映画を観ないわたしが、たった1本だけ、大事にしている映画がある

それは、『マディソン郡の橋』


監督 クリント・イーストウッド
主演 メリル・ストリープ
   クリント・イーストウッド



夫と二人の子供に囲まれて幸せに暮らす田舎者のフランチェスカの元に、突然現れた魅惑的な男性、ロバートとのたった4日間の不倫愛 喉から手が出るくらい彼を欲しいと思うと同時に同じくらい家庭を捨てられない女の葛藤を、見事に描写し、演じ切った


この作品は後に彼が言っていたように、長らく温めてきた物語で、恋多き男であるイーストウッドにしか描けない、男女の心の機微が随所に散りばめられている


「経験がなければこんな作品は描けない」


その言葉の重みは、彼の言葉なしでも十分に観る者に与える


フランチェスカは夫のことは柔らかな気持ちで愛している けれど、夫のガサツなところや、自分が情熱的に夫を愛してはいないことには気付いていた


こんなシーンがあった


夫はキッチンの勝手口から出て行く時、ドアのノブを掴んで勢いよく開き、その反動でドアをバタンと閉める フランチェスカは、その夫の大きな音を立てるドアの閉め方に、毎度顔をしかめるのだった


一方、ロバートは、ドアを閉める時にノブに手を添えて、音を立てないようにそっと静かに閉める



少し気を抜いたら見逃してしまうような短いシーンに、彼女が夫と彼との所作の違いを見つけて、彼に惹かれてゆくキッカケとなっている心の動きが見て取れる


多くを語らずして、感情的に描くことをせずに視聴する者に語りかける作品に惹かれ、ここで泣いてね?ここ泣くとこだよ?という風に、お涙頂戴の作品には、その監督の意図が見え透いて反対に冷めてしまう…


泣いてもいいし、泣かなくてもいい
どこで泣いてもいいし、それはあなたの感性に任せるよ、という作品が好き過ぎて、あなたの一番好きな映画は?と聞かれると、そのような作品を挙げる


他には、トム・ハンクス主演の『フィラデルフィア』 ゲイで弁護士の男が、恋人がいるのにも関わらずほんの気の迷いから別の男性と関係を持って、HIVに掛かってしまう 別の監督が撮れば全然違う作品になったろうと思う 本当に淡々とし過ぎている中で、彼と周りの人々の想いがじわじわと伝わってくる素晴らしい作品


勿論、『ショーシャンクの空に』はベタと思われるかもしれないけれど、どちらの作品も、淡々と主人公の感情を露わにせずに粛々とストーリーを進めていくところに惹き込まれる


無実の罪で無期懲役の量刑を課せられたアンディが、親友のレッドに言う


『ここでは、一生懸命に生きるか?
それとも、一生懸命に死ぬか?』


感情を乗せずに言い放った彼の言葉は、聴く者の心を打つ


邦画では、『そして父になる』

福山さん演じるこの作品は、子供が生まれた時に取り違えられるという大きな人生の誤差の選択を迫られながらも、親として成長していく様をまた、淡々と描く


どの作品も、基盤として見逃せない社会問題があり、それは大きな案件であるのに、そこを淡々とという言葉では表せないくらいの、無感情で表現しながらも、何かを気付かせようと、観る者に委ねるこの撮り方があるのたとしたらその名前を教えて欲しい


フランチェスカは一緒に来て欲しいと縋りながら訴えたロバートに言ったの


『あなたを選んであなたについて行けば、残して行った家族に罪悪感を感じて、あなたを恨み続ける

でも、あなたを選ばずに家族を選んだら、純粋な気持ちであなたを永遠に愛し続けることが出来る』


経験してない人には言えないセリフ


だから、イーストウッドは偉大な恋の歌唄いなんだって


何十回観ても新しい発見がある


フランチェスカの表情の変化、恋をした女のしなやかな動き、その乙女心

そして、夫を裏切れない良心…


たった4日間の愛なのに、人生の最後を迎えたふたりが選んだ決断は…?


この作品を超える恋愛映画はないと分かっているから、他の作品を観ようとしないのかもしれない


もしも、この作品を観て貰えたら、わたしはここで泣いたよ!わたし僕はここで泣いたよ!と、自分の感性を擦り合わせて感想を言い合えたら嬉しい


イーストウッドの狙いはそこにあると、わたしは思っている


本当に大好きな作品…










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