【雑記】均一化される街並み
消えた壁画
地元の開発が進んでいる。
それにともない古い建物の取り壊しや改修も行われている。
その開発の波に飲まれて、一枚の壁画が消えた。
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私には好きな壁画があった。
思い入れのある建物に描かれた壁画だ。
その建物はレンタルビデオ店だった。
はるか昔。
まだTSUTAYAが台頭する前の話。
小さな町のレンタルビデオ店。
アルバイトも雇わず、店主一人で営業していた。
私が入り浸っていたのは小学校低学年の頃。
母に連れられてよく行った。
母は新作映画コーナーへ。
私はアニメ・キッズコーナーへ。
週に一度の楽しみだった。
そんな店の側面にその壁画はあった。
そのお店はとある告発で警察沙汰になり閉店してしまった。
20年以上前の話だ。
レンタルビデオ店の閉店後、その建物には様々なお店が入った。
喫茶店、アパレルショップ、フィットネス。
どれも長続きはしなかった。
でも、壁画だけは手つかずで残っていた。
きっと責任者が誰か分からなかったのだろう。
その壁画が今年、ついに消されてしまった。
真っ白な壁を見て思う。
「つまらない」
白壁は確かに美しい。
それに引き換え、
あの壁画は古くかすれてみすぼらしかった。
それでも20年、25年、いや、下手すると30年、街に溶け込んでいた壁画だ。
私はその地域のシンボルのように思っていた。
どうにか残して欲しかった。
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その建物のそばを通るたび、
少し寂しく、懐かしくあの壁画を思い出す。
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