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木の温もりをいかした“家具”をつくる仕事

岐阜カリモク(株)で働く澤さんを、もとまるが訪問!

岐阜カリモク(株)は、木材をいかした家具をつくっている会社です。デスクやベッドなど幅広い家具をつくり、日本国内でトップクラスの生産量を誇るカリモクグループの中で、主に食事をする際に使われるダイニングテーブルやイスの製造を行っています。今回は、木製のテーブルやイスを設計している澤英和さんの仕事を見学しました。

岐阜カリモク(株)では、1年で約10万脚のイス、1万5000台のテーブルを製造

知識や技術をいかして家具を完成まで導く仕事

イスやテーブルの設計を担当している澤英和さん

澤さんは、学生時代に建築を学んでいた中で、建築家は建物だけでなく、その中で使われる家具などを含めた空間全体をデザインしていることを知り、家具づくりに興味を持ちました。また家具の中でも、木製のイスをつくる職人になりたいと思うようになり、木製家具のトップメーカーであるカリモクグループへ入社することを決めました。
 
入社後、澤さんは1年間、家具をつくる工場で使われる機械のメンテナンスなどを担当し、家具づくりの技術を勉強。生産技術を学んだ経験をいかして、2年目から設計の仕事に就き、3次元CADというソフトを使って、デザイナーが考えたイスやテーブルのデザインから図面を描く仕事をしています。

3次元CADを使ってパソコン上で家具を図面化

カリモクグループは、木材の調達から家具のデザイン、製造、販売までを一貫して行っていることが一番の特徴。澤さんは、まずデザイナーが考えたコンセプトやデザインから、色や木目の美しさ、強度などを考慮して最適な木材を選び、部品の正確な寸法や組み立て方など考えながら、設計図を作成します。その後、試作品をつくって形状や使用感を確認し、修正や改良を行います。
 
設計を考える際は、工場でのつくりやすさも重要なポイントです。木材から部品を削り出すところから、組み立てや仕上げなどの工程を決め、最適な工具や機械を選ぶのも大切な役割です。澤さんは「どの機械でどんな加工ができるかを把握することが必要なので、生産技術を学んだ経験が役立っています。自分で考えた工程で効率的に生産ができた時は、とてもうれしいですね」と、専門的な知識や技術をいかせる設計の仕事にやりがいを感じています。

部品づくりや組み立てなど、さまざまな工程を効率よくできるよう計画
表面処理や布張り、塗装などの仕上げも大切な作業
機械が行う自動作業をプログラムするのも設計の仕事

自分がつくった家具が世の中へ出る喜び


グッドデザイン賞を受賞した「sphere(スフィア)」

澤さんがこれまで設計してきた家具の中でも、気に入っているのが「sphere(スフィア)」というイス。スフィアは「球体」を意味し、丸みのある美しい曲線が特徴です。この形を実現するため、澤さんは木材を曲げるのではなく、太い木材を削り出して部品をつくる方法を選択。その結果、スフィアはその美しさが評価され、グッドデザイン賞にも輝きました。
 
「アイディアや創造力をいかして、美しく機能的な家具をつくり上げ、人の生活を豊かにできるのが、この仕事の魅力。もちろん製品化には、さまざまな試験をクリアしたり、納期を守ったりと大変なことも多いですが、その分、完成して世の中に出た時は、やってよかったと、大きな達成感を感じます」と、澤さんは自分がつくった家具への思いを語ります。

澤さんが設計した家具が精密なカプセルトイに

また最近では、澤さんが3次元CADで設計したイスが、カプセルトイとなって発売。デザインはそのままに、16分の1サイズのミニチュアになったイスは、澤さんも驚くほど精巧につくられています。
 
澤さんは「背面に付いている“カリモク60”というプレートまで、忠実に再現されています。実際に座ってもらうだけでなく、こうした形でも多くの人に家具を楽しんでもらえるのはうれしいですね」と、実際の製品を手に、仕上がりの高さを説明してくれました。

澤さんが設計したイスを含む「カリモク60ミニチュアファニチャー」

本巣市の木材をいかしたイスを設計

「自然を身近に感じられ、いい環境で働くことができている」と、本巣市の良さを実感している澤さんは、休日に淡墨桜に出かけたり、ちょうど工場の目の前で花火が打ち上がる根尾川花火大会で、迫力満点の花火を楽しんだりと、本巣市を満喫しています。
 
そんな澤さんが手がけたのが、本巣市役所の新庁舎に置かれたイス。本巣市の森林で伐採されたブナの木が用いられた、オリジナルのイスです。「家具にはできるだけ節がない木材を使うのが一般的ですが、この地域で育った木の特色を知ってもらいたいと、節や変色のある部分もそのまま個性として楽しんでもらえるようにしました。1階のロビーに置いてあるので、ぜひ地産地消材の特徴やカリモク家具の座り心地を体感してもらいたいです」と、澤さんは今回の新たな試みに自信を見せます。

本巣市役所新庁舎の1階ロビーに置かれた地産地消材の家具
家具づくりで出た端材を活用した記念プレート

「木と共生する幸せな暮らし」の実現へ

これまで使われていなかった木材も積極的に活用

実は、日本は国土の約3分の2を森林が占めているにもかかわらず、安価な外国産の木材が多く使われ、国産の使用率は4割に留まっています。そこで、70年以上にわたって木製家具をつくり続けてきたカリモクグループでは、これまで家具づくりに向いていないとされてきた幹の細い木や、軽くて強度の弱い針葉樹などを積極的に活用する取り組みを進めています。
 
たとえば、短い木材をつなぎ合わせ、薄い木材で挟むことでテーブルの天板として活用したり、針葉樹の木材を強度のある広葉樹と組み合わせたりと、工夫を凝らしています。澤さんは、「地域の木を地産地消材として使うのも、その取り組みの1つです。地域の木を使うことは、その土地の森林を定期的にケアし、荒廃を防ぐことにもつながります」と話し、家具づくりを通して森林と共生し、森林の循環を促す暮らしづくりを目指しています。

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