局所最適を避けるため、マネージャーはどうふるまうべきか

私が働いている企業は、まだ50人程度の組織ではあるが、業務の部署毎の区分が明確になりつつある。
結果として、小さい組織規模ではあるものの、現在の社内の業務全体にかかわる人間は非常に限られ、業務全体を把握することは不可能に近くなっている。

前提として、弊社の事業はバリューチェーンを長く抱え込んでいるので、組織の分化は自然の成り行きであると考えている。業務効率向上のために、適切な単位に業務を分割することは、言わずもがな必要であるからだ。
ちなみに、業務の分割が効率化に寄与するのは、人間はマルチタスクで効率が落ちることと、業務を分割することで早く業務に習熟するためであると考えている。

しかし、上記のメリットはあるもの、業務が部署ごとに区分されることで、横断的に業務を捉えられる人間がいなくなり(もしくは減り)、局所最適に陥りやすくなるというデメリットは生じうるだろう。
本稿では、この局所最適をどのように避けるか、ということを考えたい。

局所最適を攻略する第一の方法は、組織を横ぐしで全体最適の戦略を描ける部隊を設置することだろう。

但し、私は成長期のベンチャーにおいて、この方法は限界があると考える。
特に、日常業務の改善となると、常に日々改善が繰り返されるので、実際に業務を行っている人間以外が状況をキャッチアップし続けるのは至難の業である。その中で、横ぐし組織が解像度の高い戦略を描くのは困難を極めるだろう。

従って、基本的には各組織のマネージャー層でコミュニケーションをとり、全体最適な戦略を立案・実行していく方が望ましいのではないかと思う。

では、全体最適な戦略立案・実行において、各組織のマネージャーにはどのような資質・スタンスが求められるのだろうか。

元々私は、マネージャーに求められる資質・スタンスとして、お互いの部署への理解が深く、バランスの取れた戦略を提案できることが重要だと考えていた。

しかし、最近は、異なった(もしkはより解像度の高いだろう)考えを持っている。
というのも、本当の意味でバランスの取れた戦略を打ち続けるのは人間の能力的に不可能であり、また、バランスをとろうとする結果、卓越した成果を目指すための要求が、相手の部署にしにくくなるのではないかと考え直したからである。

現在は「身勝手にも思える高い要求を相手部署に行いつつ、戦略立案の段階では全体最適の視点で、自分も辛酸をなめながら、高い要求達成のための戦略を描く」ことが重要ではないかと考えている。

スタート地点としては、目標達成のための、遠慮のない厳しい要求をぶつけることが必要である。この段階では、あくまで目標ファーストであり、自他部署のキャパ・現状にとらわれるべきではない。
そうしないと、お互い甘えのある目標設定の中での戦略しか立案されないリスクがあるからである。
とはいえ、解決策を考える段階では双方の事情を双方が鑑みるべきだろう
例えば、パワーバランスが強いマネージャーが在籍する部署がリソースを割くことを嫌い、パワーが弱いマネージャーの部署が、土台無理な要求を突き付けられ続け、全社での高い目標達成のための最適な戦略が描けなくなることは、良くあるのではないか。

そのような状況避けるためにも、全てのマネージャーが同等のパワーで要求を戦わせ続けることが求められるし、戦略立案の段階では歩み寄る姿勢が求められると思う。

例えば、短納期案件により顧客ニーズに訴求することで受注額を拡大したい営業と、品質不良を避けるため納期はバッファを見たい生産管理の間で、営業が、全社KPIである売上達成の為に、厳しい納期短縮を生産管理に要求するようなケースを考えてみる。
その場合、営業から生産管理への要求自体は、顧客のニーズをベースに十分に厳しいハードルで投げかけるべきである。
ここで、品質管理のマネージャーのパワーが弱く、営業が売上達成を盾に要求し続けるだけで歩み寄らない場合、納期短縮は生産管理の独力に頼ることになり、戦略の幅は狭まってしまう。
例えば、納期達成のためには、細かい製品仕様を営業が事前に握っておくことが必要であったり、受注前に受注確度が高い製品を生産管理に伝え、生産準備を進めておくなど、営業側がとり得る戦略も十分にあるだろう。
従って、戦略立案の段階では品質管理のマネージャーは、コミュニケーション上ちゃんとパワーを持ち、営業への協力を要請すべきだし、営業のマネージャーも自身のリソースを割くことも戦略の内に入れるべきなのである。

尚、パワーを持つことが重要なのは、マネージャー間という同ランクに対してだけでなく、経営陣-マネージャー間のような、ランクに差がある場合でも同様であろう。
特に、経験上、自分のチームのマネージャーが、よりシニアな社員(例えば経営層)に対して、ちゃんとパワーを持って交渉し、時折降りかかる無理な要求に対して、「それは無理だ」とはねのけてくれると大きな安心を覚える。部下としても、そのような上司の期待に応えたいと、モチベーションも沸く。

ここで述べたようなことは、文字にすれば単純なことだと思うが、リアルタイムに進んでいくビジネスの中で実現することはそれ程容易ではないと思う。だからこそ、意識して自分の状態を見つめるようにしたい。

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