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感情と向き合う

仕事をする上で、大小様々な意思決定が、日々リアルタイムで繰り返されていく。自分にとって感情と向き合うことは、仕事上の意思決定の質を高めるために最も重視していることの一つである。本稿では、”自身の感情に向き合う”ことに関する思考を整理したい。(あくまで、個人的な考え方なので、明らかに間違っている箇所があれば、ご指摘頂きたいです)

意思決定力と感情の関係性

ビジネスにおける意思決定の質に影響を与える事柄として、例えばロジカルシンキングやデータ分析などの思考力が想起されることが多いだろう。私は、それら思考力(や経験からくる直観など)によって、当人の基礎的な意思決定力は決定されると考えている。が、その基礎的な意思決定力が、どのくらいの精度で発揮されるのかは、当人の”感情の状態”によって大きな影響を受けると考えている。つまり、どれだけ思考力や直感に優れた人であっても、感情の状態によっては、意思決定力が極めて低下してしまうと思っている。

少なくとも、私は感情の状態によって意思決定力の低下を感じることがしばしばある。例えば、高いプレッシャーを感じている状況下において、課題解決に向けた判断をできなくなり、課題を先延ばしにするような意思決定の誘惑にかられたり、何らかの理由で自信を喪失している状況において、ハイリスクハイリターンな意思決定をしにくくなり、より保守的な意思決定を選びがちになる。

スポーツをやっていた人で、試合中犯してしまった一度のミスを引きずってしまい(≒過度なプレッシャーを自らに課してしまい)、どんどんと視野が狭くなり、判断力(≒意思決定力)が鈍り、ミスを重ねてしまうような経験を持っている人は多いのではないかと思う。スポーツほどリアルタイムで展開されないので目立ちにくいが、それと同じ状況はビジネスでも起きることは、何ら不思議ではないと考えている。

そのような訳で、私は自分の感情と向き合い、状態を把握し、特に負の感情に支配されている場合には、その状態を改善することに強い注意を払っている。具体的には、下記のようなことを意識・実践している

(尚、下記に書いている内容は、基本的にデビッド・D・バーンズ著「いやな気分よさようなら」を参考にしている)

①現実世界と感情の関係性を理解する

まず、現実世界と感情の関係を認識しなおす。感情を決めるものは現実そのものではなく、その現実に対しての自身の考え方・認知・解釈が感情を決めているという認識を持つ。

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感情に対してアプローチしようとしたときに、現実世界に変化を及ぼそうと考える人は多いと思う(私も人生のほとんどの期間でそうだった)が、必ずしもそれが唯一の方法ではない。

特に、ベンチャー企業のような環境で仕事をしている人にとって、現実世界は極めて不確実性が高く、コントロールしきれないことが殆どであろう。売上が思うように伸びなかったり、思うようにサービスの質が上がらなかったとしても、それをサクッと解決して負の感情を消すことは難しい。

そのような場合、むしろ自分の考え方・解釈・認知の癖に対してアプローチすることが有効な解決方法となり得る。

②認知の歪みを見つめる

上述のように、感情は必ず考え方・解釈・認知(以下、認知に統一)を通じて発生する。従って、認知の仕方に負の歪みがあることで、過度に悲観的な感情が自動的に引き起こされてしまう。

そのように自動的な感情が起きることは仕方がないものの、そこで一歩立ち止まり、認知の負の歪みをとらえることが非常に重要となる。例えば、認知の歪みには以下のようなものがある(詳しくは、ぜひ「いやな気分よさようなら」を一読いただきたい)

1. 全か無か思考:白黒でしか物事をとらず少しのミスを完全な失敗とみなす
2. 一般化のし過ぎ:1つのよくないことを、世の中全てそれだとみなす
3. 心のフィルター:1つのよくないことが、全体を暗くする
4. マイナス化思考:良い出来事をすべて無視する
5. 結論の飛躍:悲観的な結論に早合点する
6. 拡大解釈と過小評価:マイナスを過大に、プラスを過少に評価する
7. 感情の決めつけ:自分の憂鬱さを現実と思いこむ
8. すべき思考:何かを義務のようにとらえる
9. レッテル貼り:極端な自分に対する一般化。”落伍者”などと思いこむ
10. 個人化:よくないことを自分のせいにする

例えば、仕事上ミスを犯し、上司から注意を受けたとしよう。その時に、「なんてダメなやつなんだと、上司は自分に呆れているだろう。これから仕事を任せられないと考えているはずだ」と思い込んでしまったとしたら、”結論の飛躍”の認知の歪みが強いかもしれない。もしくは、「自分はこんな仕事もミスをするようじゃ、他の仕事も上手くいかないに決まっている」と考えてしまった場合、”一般化のし過ぎ”の可能性がある。

このように、まずは負の感情が自動的に起こってしまった場合に、どのような認知の歪みがあり得たのか、見つめてみることを重要である。

③合理的な反応を促す

認知の歪みを認識出来たら、次は、認知の歪みがなかった場合の合理的な反応を考えることが可能になる。

例えば、上記の例で言えば、上司の注意をアドバイスととらえ、そのミスを繰り返さないように新たなマニュアルを作成したり、その場で改善点の議論を上司と行うような判断が、合理的な反応となり得る。

そして、この合理的な反応こそが、自分の本来の意思決定力が発揮されている状態における判断だと、私は考えている。

本来持っている思考力や経験をフル動員し、常に自分の最大のパフォーマンスを発揮するには、認知の歪みは大きな障害となる(少なくとも私の場合は)。逆に、自分の認知の歪みのパターン(例えば、リスクを過大評価し変化を恐れたり、全か無か思考により委縮してしまったり)を飼いならすことができれば、大きくパフォーマンスは安定するのではないだろうか

まとめ

仕事をしていく上で意思決定は避けられないし、不確実性が高い中で事業を進めていくのはベンチャーの醍醐味であろう。その瞬間瞬間で自分の実力を遺憾なく発揮し、思う存分楽しむためにも、自分の認知・感情と向き合い続けたいと思う。

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