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TARPノート 2022/11/13(霜田哲也)

ここでは絵のzine TARPに参加する人たちがなにか書いたり写真や絵をUPしたりします。

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今回のTARPノートは霜田哲也さんです (Twitter Instagram)

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僕のギターで、天使よりかわいいきみへ

普段使っているギターはYAMAHAでもギブソンでもレスポールでもなく、鈴木バイオリンというバイオリン会社が昔作っていたガットギター「拾号」に、今はフォークギターに用いる鉄の弦を張って使っている。私のギターは良い具合に艶があり、弦の響きは恐らく他のギターよりは良くないけれど、独特な響きがありとても気に入っている。ガットギターなのだから本来はナイロンで出来たガット弦を張るべきなのだが、私はどうもまろやかな音で耳を澄まして弾いていると眠たくなってしまって、一度弾きながら眠ってしまったことがある。

鉄の弦の響きは煌びやかで、夜空にまぶした星屑の輝きのようで美しい。

京都に住んでいた頃から趣味で曲を作り続けている。どうも夜や夢を題材にしたものが多く、そうした世界観にもやはり鉄の弦のキラッとした音はよく似合う。

ed askewと言うSSWがいる。ウェールズ大学出身のヒッピーでジャンキー、そして芸術家。60年代、バイクに跨り旅をしながら、のっそりと縦に細長い体に、全く不釣り合いなほど小さいマーティンティプレを片手に、背中を丸めて歌を歌う。今はもう薬の後遺症で楽器こそ弾けなくなったが、現役の存在である。
彼のおもちゃのように小さなティプレには、またギターと違った響きを持ったメタリックな弦が張られており、星屑がこぼれ落ちるような煌びやかな音が飛び出す。そしてその一つ一つがedの生活や哲学そのものに根ざした温かみや、優しさに溢れており、私は初めて音楽で涙を流した。
そして驚いたことに、彼のティプレにはペグが12個付いているものの、弦こそはたったの3本しか張られておらず、3本の弦から広がる夜の闇に瞬く星のような世界は、私はこの世ではedの奏でる「hitchhiking」以外に体験したことはない。

まだ学生だった私は、真冬に個展をした。真冬の京都は恐ろしく寒く、積雪がひどい。雪の降る中、パフォーマンスとして弾き語りをすることにしたが、生憎私はギターを持っておらず、友達から借りることにした。ヤイリの小さなアコースティックギター。弦は切れていたので、手元にあったエレキギターの弦を張って弾いていた。
初めて人前で歌を歌った。友達ばかりだったが、良いといってくれた。そのギターはヘロヘロとした鋭い音がして私は好きだった。ハラハラと降る雪が星屑みたいで良かった。その後、ギターはアメリカ人にあげてしまった。

関西から関東へ出て1週間後、新しいギターを手に入れた。今も使っている鈴木バイオリンのガットギター。千円で譲ってもらった。
それを手に何回か弾き語りをした。1番酷かったのはライブ喫茶のオープンマイク。私の作る曲はあまりにも短いし、訳がわからないのでお客は戸惑い、拍手は殆ど無かった。それでいい。私は歌いたいこと、生活や私の哲学に根付いた、絵を描くように私は私の歌いたい歌を作るだけである。edがそうあるように、かどうかは分からないけれど、私にできることはこれが精一杯。

先日新しいギターを買った。手軽にギターを持ち出して歌いたいと思った。ギターとウクレレの合体したような、その名もギタレレ。YAMAHAから出ているミニギターである。弾けばギターのコードだけれどまるでウクレレのような響き。不思議な楽器である。抱えてみると、なるほど、写真でみたed askewよろしく一丁前な私がいた。弦はなんとナイロン弦。私はとっても眠たくなってしまった。

むぅちゃんに新しく曲を作った。それはなんと眠たいサウンドがとびっきり似合うのだ。タイトルは「天使よりかわいい」。正にむぅちゃんのことである。
実は録音に躓いていてなかなか満足な音が撮れない難しい曲なのである。出来るとことならブラス隊を入れて、GeorgeのAll things must passのように、豪華な讃美歌のような曲に仕上げたい。あるいはGeoffの歌うBrazilのようなヘロヘロラッパもいいな、心地よく音に包まれて眠るような。
詞はたったの三行

まるで死んだようにぐっすり眠る
きみは天使よりもかわいいから
天使たちがきみにいたずらしちゃうかもね

むぅちゃん、まっててね。


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