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第20章 第一の課題 8

ロンがすぐ横で早口にまくし立てた。

「君が最高だったさ。だれもかなわない。
セドリックはへんてこなことをやったんだ。グラウンドにあった岩を変身させた……犬に……ドラゴンが自分の代わりに犬を追いかけるようにしようとした。
うん、変身としてはなかなかかっこよかったし、うまくいったともいえるな。だって、セドリックは卵を取ったからね。でも火傷しちゃった__ドラゴンが途中で気が変わって、ラブラドールよりセドリックのほうを捕まえようって思ったんだな。セドリックは辛うじて逃れたけど。
それから、あのフラーって子は、魅惑呪文みたいなのをかけた。
恍惚状態にしようとしたんだろうな__うん、それもまあ、うまくいった。
ドラゴンがすっかり眠くなって。だけど、いびきをかいたら、鼻から炎が噴き出して、スカートに火がついてさ__フラは杖から水を出して消したんだ。
それから、クラム__君、信じられないと思うよ。
クラムったら、飛ぶことを考えもしなかった!
だけど、クラムが君の次によかったかもしれない。なんだか知らないけど呪文をかけて、目を直撃したんだ。ただ、ドラゴンが苦しんでのた打ち回ったんで、本物の卵の半数は潰れっちまった__審査員はそれで減点したんだ。
卵にダメージを与えちゃいけなかったんだよ」

二人が囲い地の端までやってきたとき、ロンはやっと息をついた。
ホーンテールはもう連れ去られていたので、ハリーは五人の審査員が座っているのを見ることができた__囲い地のむこう正面に設けられた、金色のドレープがかかった一段と高い席に座っている。

「10点満点で各審査員が採点するんだ」
ロンが言った。

ハリーが目を凝らしてグラウンドのむこうを見ると、最初の審査員__マダム・マクシーム__が杖を宙に上げていた。
長い、銀色のリボンのようなものが杖先から噴き出し、捻じれて大きな8の字を描いた。
「よし、悪くないぜ!」
ロンが言った。
観衆が拍手している。
「君の肩のことで減点したんだと思うな……」

クラウチ氏の番だ。
「9」の数字を高く上げた。
「いけるぞ!」
ハリーの背中をバシンと叩いて、ロンが叫んだ。
次はダンブルドアだ。
やはり「9」を上げた。
観衆がいっそう大きく歓声をあげた。

ルード・バグマン__10点
「10点?」
ハリーは信じられない気持だった。
「だって……僕、怪我したし……なんの冗談だろう?」
「文句言うなよ、ハリー」
ロンが興奮して叫んだ。

そして、今度はカルカロフが杖を上げた。
一瞬間を置いて、やがて杖から数字が飛び出した__。
「4」
なんだって?
ロンが怒って喚いた。
4点?卑怯者、依怙贔屓えこひいきのクソッタレ。クラムには10点やったくせに!」
ハリーは気にしなかった。
たとえカルカロフが0点しかくれなくても気にしなかったろう。
ロンがハリーの代わりに憤慨してくれたことのほうが、ハリーにとっては百点の勝ちがあった。
もちろんハリーはロンにそうは言わなかったが、囲い地を去るときのハリーの気分は、空気よりも軽やかだった。

それに、ロンだけではなかった……観衆の声援もグリフィンドールからだけではなかった。
その場に臨んで、ハリーが立ち向かったものがなんなのかを見たとき、全校生の大部分が、セドリックばかりでなく、ハリーの味方にもなった……スリザリンなんかどうでもよかった。
ハリーはもう、スリザリン生になんと言われようが我慢できる。

「ハリー、同点で一位だ!君とクラムだ!」
学校に戻りかけたとき、チャーリー・ウィーズリーが急いでやってきて言った。
「おい、僕、急いで行かなくちゃ。行って、ママにふくろうを送るんだ。
結果を知らせるって約束したからな__しかし、信じられないよ!__あ、そうだ__君に伝えてくれって言われたんだけど、もうちょっと残っていてくれってさ……バグマンが、代表選手のテントで、話があるんだそうだ」

ロンが待っていると言ったので、ハリーは再びテントに入った。
テントが、いまはまったく違ったものに見えた。
親しみがこもり、歓迎しているようだ。
ハリーは、ホーンテールを掻いくぐっていたときの気持ちを思い浮かべ、対決に出ていくまでの、長い待ち時間の気持ちと比べてみた……比べるまでもない。
待っていたときのほうが、測り知れないほどひどい気持ちだった。

フラー、セドリック、クラムが一緒に入ってきた。

セドリックは顔の半分をオレンジ色の軟膏がべったりと覆っていた。
それが火傷を治しているのだろう。
セドリックはハリーを見てニッコリした。
「よくやったな、ハリー」
「君も」
ハリーもニッコリ笑い返した。
全員、よくやった!」
ルード・バグマンが弾む足取りでテントに入ってきた。
まるで自分がたったいまドラゴンを出し抜いたかのようにうれしそうだ。

「さて、手短に話そう。第二の課題まで、十分に長い休みがある。
第二の課題は、2月24日の午前九時半に開始される__しかし、それまでの間、諸君に考える材料を与える!
諸君が持っている金の卵を見てもらうと、開くようになっているのがわかると思う……蝶番ちょうつがいが見えるかな?
その卵の中にあるヒントを解くんだ__それが第二の課題が何かを教えてくれるし、諸君に準備ができるようにしてくれる!
わかったかな?大丈夫かな?では、解散!」

ハリーはテントを出て、ロンと一緒に、禁じられた森の端の沿って帰り道を辿った。
二人は夢中で話した。
ハリーは他の選手がどうやったか、もっと詳しく聞きたかった。
ハリーが木陰に隠れて最初にドラゴンが吼えるのを聞いたその木立を回りこんだとき、木陰から魔女が一人飛び出した。

リータ・スキーターだった。
今日は派手な黄緑色のローブを着ていて、手に持った自動速記羽根ペンが、ローブの色に完全に隠されていた。
「おめでとう、ハリー!」
リータはハリーに向かってニッコリした。
「一言いただけないかな?ドラゴンに向かったときの感想は?点数の公平性について、いま現在、どういう気持?」
「ああ、一言あげるよ」
ハリーは邪険に言った。
バイバイ
そして、ハリーは、ロンと連れ立って城への道を歩いた。

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