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ミラクルミッション #13ディスカウントプリーズ


 5月にS商事から土地の賃貸借使用料について打診を受けた際に、筆者は取得金額である4000万円に行政財産使用料の基準3%を乗した120万が、一つの目安になる旨を回答していた。
 ところが、9月の補正予算成立後に土地賃貸借の窓口となる公有資産課がS商事に示した額は400万を超えていたとのことでである。

「筆者さん、以前確認した金額が、非公式の試算ということは承知していますが、3倍以上になるというのはあまりに違いすぎて、社内で説明できないです。事業が御破算になるかもです」
という、S商事からのクレームに近い問い合わせを受け、筆者は公有資産課にかけつけた。

「俺も高くしたいわけじゃないけど、資産税課に評価額を照会したら、田原の宅地は平米単価6000円という回答だったのさ。そこから計算すると全体で1億五千万円の評価になるから、その3%をいただかないと、しょうがないのよ」
「ちょっと待ってください。5分後にもう1回来ます」
 公有資産課を出て、まっすぐ資産税課に行き、土地評価の担当者と話をする。
「固定資産税の評価は、登記地目が宅地でも、荒地であれば価値が下がるよね。多分、その基準表みたいなのもあると思うのだけど、今すぐコピーを2枚ください。大丈夫、外部には出さないから」
そして、そのまま、公有資産課に戻る。
「筆者が申し上げるのも何ですが、平米6000円というのは、田原地区の造成済みの綺麗な宅地の評価です。この基準表のとおり、大規模造成が必要な場合は、その3割評価です。取得金額も4000万円ですし、担当者さんも、実際に、あの秘境を見たでしょう。再計算してください」
「上司にも相手にも、この金額で説明しているから、今更、再計算なんてできないです」
「相手は安くなる分には問題にしないです。何でしたら、S商事には私から説明します。逆に「高すぎる」という疑問が出され、直接市長に評価額の確認が入ったら、それこそ答えに窮して、説明できなくなりますよ。
前の数字をA案、基準表に基づくB案のような併記でも良いですから、資料を修正して再度、上に説明した方が無難じゃないですか。ただ、誤解しないで欲しいのですが、筆者は賃借料を安くして欲しいという話をしているのではないのです。
(ここからが、ペテン師と言われる筆者の真骨頂)
適正な価格を示さないことで、後でトラブルになることを心配しています。
担当者さんが間違えたわけないことは、十分に理解しています。
資産税課の土地評価が雑で、不適切な回答があった。一度はその金額を採用したものの、担当者さんは現場を見たことがあるので、価格に疑問を感じ、詳細を確認したら、この基準表を入手することができて、価格を修正すべきと考えた、という展開でいかがですか」
 担当者に責めが及ばず、むしろ手柄にしてしまう策を一瞬のうちに紡ぎだす。

 その後、公有資産課からの報告は無かったが、S商事からは
「筆者さん、何をしたのですか。賃借料が年間120万円に下がりました」
との電話をいただいた。


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