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診察

※この日記は実体験と想像が入り混じっています
今回の割合は8:2です

私は生まれてからずっと目が悪い

これまで一度も視力が上がったことはなく、ただただ歳を重ねる度、緩やかに視界がぼやけてきている

一応、度の低いメガネをかけてはいるが、手元の文字が見えやすくなるくらいで、そこまで効果はない

あまりにも度の高い眼鏡をかけると、自分にとっての第二の寿命が急激に縮みそうになると感じるからである

最近、かかりつけの眼科で視力測定を行ってもらう機会があった

やはり、霧は晴れることはなかった

ただ毎日、ひたすらに携帯やパソコンをいじり、一切何も努力をしていなかったのだから当たり前である

その努力を怠ったくせに悔しそうに残念がるのはやめろ、ともうひとりの自分が諭す

それだけならまだ、いつものことだというふうに割り切れるのだが、今回はそこに追い討ちをかけるかの如く濃霧がかかった

スマホ老眼である

たしかに時々、手元のピントが合いにくい時があるとは感じていたが、まさかこれほどまで深刻な問題になっていたとは

愚かだな、俺はそんな気がしていたぞともうひとりの自分がやけに得意げになって嘲笑する

極端に動揺した私の中に、あの時気にしていればというそれでも軽い後悔した私が診察室の丸椅子に座っていた

いつも処方される目薬とは違った物が処方された

目薬如きに頼ってばかりはいられない

何かしら私の方で手を打てないか

しかし、プライベートや仕事の関係上、スクリーンと自分の目の関係は避けようがない

こんな時にだけ限って「彼」が現れて、こんな時にだけ限って無駄な努力をと揶揄してくる

そんな奴(というか誰?)の言葉は気にも留めず、無い頭でとりあえずの方法を会計までの間考えていた

薬で目に対策ができるなら、スマホの画面に対策すれば良いのでは?

そんな長考した割に簡単な理論で、ブルーライトをカットできるスマホ用のフィルム的な物を買おうと待合室で即決した

向かいの薬局で今一番信頼できるものを受け取った後、そのままの足で近くの家電量販店へ向かった(私は衝動的な行動は容易にできる)

新型の機種たちを奥に抜け、アクセサリーコーナーにずらりと並んでいる保護フィルムの前に立った

予備知識などなかったが、条件に合う商品は自ずと数種類にまで絞ることができた

正直、どれほどの効果があるか見当もつかなかったため、とりあえずこれでいいかと一番安い物にした

それを手に取った私は何故か意気揚々でレジへ向かった

あいつ(多分裏の人格)が何を一喜一憂しているんだと呆れ果ててこちらを眺めている

そんなことに気付くはずのない私は財布から下ろしたての千円札を数枚取り出し、キャッシュトレイに置いていた(未だに私は現金主義である)

早く帰って貼りたいな、などという本末が爆発しかかっていることを考えていた瞬間、そんな自分を正気に戻すかの如くレジスターが警告音を鳴り響かせた

どうやらお札の読み取りエラーらしく、ベテランそうに見える女性店員も悪戦苦闘していた

機械のことならお任せあれと言わんばかりの若い男性店員が助っ人にきて、器用にネジを外して内部を修理していた

こういう時にカード等で支払っていればとほんの少しだけ思う(それでも私は現金主義)

新札だったんでエラーになっちゃったみたいですと女性店員と軽く話しながら修理を興味深く眺めながら待った

程なくして、ことを聞きつけた店長が出てきて、私に向かってお待たせしてしまい申し訳ございませんと謝罪した

私はこういうトラブルには寛容なので、全然大丈夫ですよと気遣ったが、店長はずっと平謝り

マニュアルどおりなのか長年の経験からなのかは定かではないが、入り口にいる新製品紹介ロボットと何か共通する部分があるなと勝手に思った

元はと言えばお前の新札が引き起こしたトラブルだろうと影から囁いてくる

修理が終わり、無事に会計を済ませた際にその店長はもう一度深々と頭を下げて、大変お待たせしてしまい誠に申し訳ございませんと今一度謝罪した

流石の私も何故そこまで謝るのかと思いながら店を出た

フィルムを買った目的を完全に忘れていたが、見慣れない青いキャップのおかげでなんとか思い出せた

家に帰り、なんとなくで貼ったが、この日記を書いている今もあまり効果は感じていない

目薬を舐めるなよ

フィクション:2 ノンフィクション:8

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