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#14【漫画に始まり、漫画に終わる/フリー脚本(男性1人)】

【漫画に始まり、漫画に終わる/ボイスドラマ】
今日も電車に揺られながら、俺はスマホで漫画を読んでいた。
毎週更新される連載漫画。
曜日ごとに異なる漫画が更新されるので、毎日の楽しみだ。
ラッシュに揉まれて会社へ向かう憂鬱な朝も、
この漫画のおかげで楽しいひと時となっていた。
これがあるから頑張れる、と言っても過言ではない。
 

小さな画面上で漫画を読み、スワイプしてページをめくる。
時々視線を感じて、そちらを振り返ることはしないが、
誰かがちらちと覗き見しているような気がする。
それでも俺は気にせずに、気に入ったタイトルを読み進める。


毎日はおなじことの繰り返し。
更新された漫画を読んで、会社へ到着。
いつもと変わらぬルーチン作業に追われ、帰りの電車でも漫画を読んで、
読む漫画が無い時はゲームで時間を潰して、帰宅したらそのまま布団へ直行する。
夕飯は会社を出てすぐに牛丼屋で済ます。

そして翌朝シャワーを浴びて電車に飛び乗り、また漫画を読むのだ。

まさに漫画で始まり、漫画で終わる日々。
 
そんな俺が、小学校の同級生の家へ行くことになった。
ニートで引きこもっているという噂を聞いていたが、本人はきちんと働いていると言う。
同窓会があるが連絡がつかない、と幹事に言われて俺が連絡を取ることになり、そいつの家へ行くことになったのだ。
 
アパートのワンルームに招かれて入ると、畳の上に大量の漫画雑誌が積まれていた。
点けっぱなしのパソコンからは光が漏れていて、食べた後のカップラーメンのカップがそのまま置かれていた。
 
「すまん。仕事が忙しくて片付けられなかった。」
 
そのひと言で、仕事はしているのか、と思い少しほっとした。
久しぶりに会うアイツは、思いのほか元気そうだ。
 
すげー漫画の数だろ。ちょっと読んで待ってて。俺、仕事片付けるから。
と、アイツは俺に告げた。

パソコンに向かってカタカタとキーボードを叩く奴を覗き込むと、漫画の書評を書いていた。話によると、どうやらライターの仕事をしているらしい。
 
何気なく漫画雑誌に手を伸ばした。
小学生のころよく読んでいた漫画雑誌を拾い上げ広げた瞬間、
吸い込んだ息に懐かしい匂いが混ざる。突然小学生の頃の記憶が蘇ってきた。
 
学校帰りに漫画雑誌を買い、わくわくしながら帰宅

ジュースをコップに注ぎ、ワンコインで買えるスナック菓子を袋のまま部屋に持ち込む。
一枚ずつソッと雑誌を広げる瞬間。
そう、これぞまさに、至福の瞬間。
雑誌特有の再生紙の匂いと、ページをめくる手の感触。
見開きページに描かれる大迫力のシーン。
 
懐かしいはずなのに、どこか新鮮に感じる。
俺は夢中になって漫画雑誌を読み進めた。
 
これこれ、このかんじ。
 
俺が求めていたものは、これだったのかもしれない。
退屈な日常の気怠さは一気に吹き飛ぶ。
ワンタップで進む現代的な読書もいいが、
やっぱり俺には“古臭い“のが性に合う。
 
「お前、全然変わらないな。」

お?嫌味かぁ?(笑いながら)
とアイツはそう笑った。

「褒め言葉だよ。」
それが嘘偽りのない、本心だった。
一仕事終えたアイツに俺は告げた。


「さぁ、今日はこれから、どこへ繰り出してやろうか!(ワクワク)」

 

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