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雑記短編|電車に乗る話|7

偶然が三っつ重なれば必然だと思うようにしている。
例えば

「でもよぉ
なんどでもなんどでも
おいらに言ってくれよ
世界が破滅するなんてウソだろ?
ウソだろ?」
 RCサクセション 明日なき世界より

都内のマイバスケットは時給1650〜1300円もする。4車線の道路の目先が少し開ける。目に入るお店の明かりの眩しさが減る。地下鉄西早稲田駅の入り口に着いた。少し広くとられた道路の白いガードレールにもたれて姿勢が悪くて口呼吸になっている半開きの口を閉じてみる。
口を閉じて鼻から息をすると胸が上下する。左に何かぶら下がっている。水天宮の御守り。
戸山公園には箱根山があるらしい。
22:49は夜だから怖いから行けない。昼にはきっと今時は桜が咲いて花見ごろだろう。

大丈夫だ。私はいつもギリギリだ。そしてなぜか、なぜかなんとなく間に合ってきた。ようなきがしないでもない。
大事なのは乗れるかじゃない。行ったかどうかだ。行けばまた何かそこから始まるのだ。
エレベーターホールまで小走りに駆け昔を思い出す。私はいつもギリギリだ。昨日がウソのように自転車を飛ばす。
対面に若い男子が2人待っているのに押しボタン式の信号が変わらない。ボタンを見たら押してない。すぐに変わる。たまにあるのだ。渡った信号から左折して直線を飛ばす。歩道には誰もいない。夜だからだ。
おじさんがいない駐輪場に自転車を止める。金がかからない。夜だからだ。20時5分駅着。やった。間に合った。てかぜんぜんやん。20時台の電車に乗り込む。
マスクをしている人は車内でももうほぼ居ない。カバンを整理して咳をする。対面のマスクのお兄さんが、次の駅で降りていった。
おじさんが開いてるのに隣に座ってきて右肩がきゅっとする。いや、スマホを打ってるからだ。また空いてるのに左肩がきゅっとする。イラっとする。なぜ空いてるのに挟む⁇席が埋まる。この何駅かほど。おそらく混んでくるのを知っていて空いてるうちからチビの隣に座る。できればやめてくれ。その入れ替わりに他の席だって空いてるじゃないか。俺はずっと挟まれている。狙われる限り。俺はずっと挟まれている。
おじさんが立つ。同じ駅である。
なんでここに来たと思ったが落ちた大学だ。構内地図を見てみたまま校章を思い出す。
夏目漱石と嘉納治五郎と平塚らいてうが途中迎えてくれた。

桜が気持ちだけ咲いていて玉ねぎの月が光っている。
この道を歩いたことがある。夜。あれはライブの帰りだ。追いかけられる月を見ながら大手町まで歩いた。
図書館のあるビルに入り来たことあるなあと思い出した。いつだろう。久米正雄を通り過ぎトイレに向かう途中に思い出す。森茉莉だ。森茉莉の何かを読んだ。若い男が誰かに出会う。タクシーが出てきた本。上の食堂が閉まっていた気がする。今と似たようなことをしていたのかもしれない。

竹橋に向かう途中で内堀通り沿いに曲を見た。

「先生。馬鹿の問題点は、学ばない所と来ない所です」

閉館前に乗り込んだエレベーターを男性が押していた。後ろの車椅子用も押してくれていた。皆お辞儀して降りてくれて、私は嬉しかった。

立ち上がる。竹橋駅へ行く。

結局、大手町まで歩いた。

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